相変わらず別館は広い。入りきらない本は天井に届くほどに積み上げられており、本棚はその量に耐え切れず歪んでいた。崩れかけた本の塔が行く手を阻む。一人で所有していい量じゃない。殆どの歴史が詰まってると先生は言っていた。多分、冗談ではない。でも、私物も積まれていることが多いのが、玉に瑕だと、僕は思う。
「壁側の……下から三段目……。あ、これか」
二冊とも、表紙が擦り切れてボロボロになっている。本を取った拍子に、何かがパタリと落ちた。冊子かと思って開いたソレは、アルバムだった。
「あれ、こんなのあったっけ……?」
ふと、目に入った一枚の写真。先生が仕舞い忘れたのか、この一枚だけ、ポケットから出ていた。そこには、鮮やかな青い空の下で、街を歩く五人の男女が写っていた。
なんだ、この青は。海ならまだしも、空が本当にこんな色だったなんて……。思わず外を見る。空は激しい雨で白んでいた。
何度も見返されたのだろうか、端はボロボロになり、日に焼けて色褪せていた。写っている町の建築様式からして、統一戦争前の物なのかもしれない。資料集で見たものとよく似ていた。写っていたのは、豪快に笑う背の高い男性に、その男をからかう茶髪の女性。眼鏡をかけた女性と赤毛の男性。でも、何よりも目を引いたのは、ブロンドの髪をした女性だった。どこか物憂げな瞳に、釘付けになった。なんとなく裏返してみる。そこには、"フィアラ"という文字があった。
……待て。落ち着け、僕。見間違いかもしれない。こんなものがあるとしたら、世紀の大発見だ。でも、文字は変わらずそこにあった。
フィアラ。学者の間で、彼女のことを知らない者はいない。僕の専攻している古代史にも、その名はある。今から五百年前に忽然とその名を消した。彼女を追い続けるためにと、頭に叩き込んだことが懐かしい。
それにしても、なんでこれが先生の所にあるんだ……。少し固まりかけた思考を動かす。……戻らないと。いや、でも。あのフィアラに関連する資料が何で……。考えても今はどうしようもないのに。足早に先生の作業場へと戻った。
「壁側の……下から三段目……。あ、これか」
二冊とも、表紙が擦り切れてボロボロになっている。本を取った拍子に、何かがパタリと落ちた。冊子かと思って開いたソレは、アルバムだった。
「あれ、こんなのあったっけ……?」
ふと、目に入った一枚の写真。先生が仕舞い忘れたのか、この一枚だけ、ポケットから出ていた。そこには、鮮やかな青い空の下で、街を歩く五人の男女が写っていた。
なんだ、この青は。海ならまだしも、空が本当にこんな色だったなんて……。思わず外を見る。空は激しい雨で白んでいた。
何度も見返されたのだろうか、端はボロボロになり、日に焼けて色褪せていた。写っている町の建築様式からして、統一戦争前の物なのかもしれない。資料集で見たものとよく似ていた。写っていたのは、豪快に笑う背の高い男性に、その男をからかう茶髪の女性。眼鏡をかけた女性と赤毛の男性。でも、何よりも目を引いたのは、ブロンドの髪をした女性だった。どこか物憂げな瞳に、釘付けになった。なんとなく裏返してみる。そこには、"フィアラ"という文字があった。
……待て。落ち着け、僕。見間違いかもしれない。こんなものがあるとしたら、世紀の大発見だ。でも、文字は変わらずそこにあった。
フィアラ。学者の間で、彼女のことを知らない者はいない。僕の専攻している古代史にも、その名はある。今から五百年前に忽然とその名を消した。彼女を追い続けるためにと、頭に叩き込んだことが懐かしい。
それにしても、なんでこれが先生の所にあるんだ……。少し固まりかけた思考を動かす。……戻らないと。いや、でも。あのフィアラに関連する資料が何で……。考えても今はどうしようもないのに。足早に先生の作業場へと戻った。

