つがいがなんだってんだ!

 ***
 
「聞いた!? 生徒会長と篠宮さん、番紋が出たんだって!」
「うっそ!? めっちゃお似合いじゃん!」
「ほら、あそこ!」
「本当だ……やっぱり番って運命なんだねぇ」
 
 廊下の向こう——並んで歩く東雲と青葉へ、羨望の視線が注がれていた。秋の風に揺れる制服の袖からは、以前よりも鮮やかに色づいた番紋が覗いている。
 
「やっぱ、見られてるね。なんか変な感じ」

 あちこちから向けられる視線に、青葉は苦笑した。
 
「そうだな。……でも青葉、本当に良かったの? 卒業までなら隠し通すこともできたと思うけど」

 東雲のその問いに、青葉はそっと自分の左腕に視線を落とす。
 かつては激しく憎み、拒絶したその紋様。姉の人生を奪った呪い。そう、思っていたもの。
 でも今は——。
 青葉はゆっくり首を縦に振る。
 
「うん。もう良いの」
 
 背後から、誰かが「番っていいなぁ」と呟く声が聞こえてくる。
 その声を聞いて、青葉は小さく笑った。
 
(……違うよ。番だからじゃない)
 
 青葉はちらりと東雲の右腕を見る。
 そこには自分と同じ番紋が、鮮やかに刻まれている。
 けれどもう、その紋様に答えを求めることはない。
 答えは、もう知っているから。

「お、いた。おーい、青葉! 東雲!」
「早く早くー! お昼食べたら遊びの計画立てるよー!」
「玲司、おせーよ! 早く行かねーと日替わり売り切れるぞ!」

 颯人と伊織、成瀬の呼ぶ声に、二人は顔を見合わせた。
 目が合った瞬間、同時に笑みが溢れる。
 
「涼真のやつ……日替わり、今日なんだっけ」
「確か、エビフライ」
「あー。じゃあ急がないとな」
「ふふっ。行こう」

 二人は肩を並べて、仲間たちのもとへ歩き出した。


《END》