つがいがなんだってんだ!

 (つがい)なんて、大嫌いだ。

 『神様からの祝福』だとか、『魂の伴侶(はんりょ)』だとか。世間の人々は、その言葉をさも美しい奇跡であるかのように口にする。
 そんな綺麗事を聞くたび、腹が立って仕方がなかった。

 私は知っている。
 番が必ずしも人を幸せにしないことを。
 幸せな人間が、あんなふうに声を殺して夜に一人で泣くものか。

 そして残酷なことに、その悲劇が決して他人事ではないことも、分かっている。
 我が家系——篠宮(しのみや)家は、強い霊力を有するがゆえに番紋(つがいもん)が出やすい血筋だという。

 いつか私の夢も、私の人生も、全部あの忌々しい紋様に奪われるのではないかと、ずっと恐怖を抱えて生きてきた。
 私は姉のようになりたくなかった。姉のように、自分で選んだ人生を、たかが紋様一つで失いたくなかった。
 だから番なんてものは、自分にとっては人間の自由意志を奪い去る、最悪で不条理な呪いにしか聞こえない。

 けれど家族も親戚も、皆みんな、口を揃えて同じことを言う。

青葉(あおば)もきっと、素敵な番に出会えるよ』

 その言葉が吐き気がするほど嫌だった。
 私は番なんか欲しくない。
 欲しいのは、自分で選んだ未来だ。
 自分で決めた夢だ。
 誰かに与えられるのではなく、自分の足で立って踏み締めてゆく道だ。

 ——番が、なんだってんだ。

 国立霊術学院高等部(こくりつれいじゅつがくいんこうとうぶ)の図書館——放課後の静寂の中、篠宮青葉は手元のページをめくりながら、心の中で吐き捨てた。