番なんて、大嫌いだ。
『神様からの祝福』だとか、『魂の伴侶』だとか。世間の人々は、その言葉をさも美しい奇跡であるかのように口にする。
そんな綺麗事を聞くたび、腹が立って仕方がなかった。
私は知っている。
番が必ずしも、人を幸せにしないことを。
幸せな人間が、あんなふうに声を殺して夜に一人で泣くものか。
そしてこの悲劇は、決して他人事ではない。
我が篠宮家は、強い霊力を有するがゆえに、番紋が出やすい血筋だという。
いつか私の夢も、私の人生も、全部あの忌々しい紋様に奪われるのではないかと、ずっと恐怖を抱えて生きてきた。
私は姉のようになりたくなかった。姉のように、自分で選んだ人生を、たかが紋様一つで失いたくなかった。
けれど家族も親戚も、みんな口を揃えて同じことを言う。
『青葉もきっと、素敵な番に出会えるよ』
その言葉が、吐き気がするほど嫌だった。
私は番なんか欲しくない。欲しいのは、自分で選んだ未来だ。自分で決めた夢だ。誰かに与えられるのではなく、自分の足で立って踏み締めてゆく道だ。
——番が、なんだってんだ。
國立霊術学院高等部の図書館の一角。放課後の静寂の中で一人、返却本の整理をしながら、篠宮青葉は心の中で吐き捨てた。
『神様からの祝福』だとか、『魂の伴侶』だとか。世間の人々は、その言葉をさも美しい奇跡であるかのように口にする。
そんな綺麗事を聞くたび、腹が立って仕方がなかった。
私は知っている。
番が必ずしも、人を幸せにしないことを。
幸せな人間が、あんなふうに声を殺して夜に一人で泣くものか。
そしてこの悲劇は、決して他人事ではない。
我が篠宮家は、強い霊力を有するがゆえに、番紋が出やすい血筋だという。
いつか私の夢も、私の人生も、全部あの忌々しい紋様に奪われるのではないかと、ずっと恐怖を抱えて生きてきた。
私は姉のようになりたくなかった。姉のように、自分で選んだ人生を、たかが紋様一つで失いたくなかった。
けれど家族も親戚も、みんな口を揃えて同じことを言う。
『青葉もきっと、素敵な番に出会えるよ』
その言葉が、吐き気がするほど嫌だった。
私は番なんか欲しくない。欲しいのは、自分で選んだ未来だ。自分で決めた夢だ。誰かに与えられるのではなく、自分の足で立って踏み締めてゆく道だ。
——番が、なんだってんだ。
國立霊術学院高等部の図書館の一角。放課後の静寂の中で一人、返却本の整理をしながら、篠宮青葉は心の中で吐き捨てた。


