演劇部の俺様ルーキーと期限付きで付き合うことになりまして

 「……これでほんとにいいのかな」


 7月25日。
 締め切り日の6日前。


 俺は、机で完成した台本とにらめっこしていた。


 演劇部の見学に行ったあの日から早1ヶ月。
 紆余曲折ありながらもなんとか台本は完成した。


 陸上部に入った男女が、ひと夏を通して成長していく青春物語。
 
 部活。

 友情。

 努力。

 挫折。

 恋愛。  

 ちゃんと全部いいバランスで入れたし、話の流れだって悪くない。
 面白いとは、思う。
 ……思うのだが。


 「なんか違うんだよなぁ……」


 椅子に深くもたれかかり、天井を見上げる。

 
 (とはいえ、もう時間もないしな……)


 締め切りは目前。

 
 今から大きく書き直す時間なんてない。

 
 そもそも、どこが違うのか自分でも分からないのだから、直しようもない。


 「うーん……」

 
 俺が唸りながら再び原稿へ視線を落とした、その時だった。


 ブーッ、ブーッ、ブーッ


 机の上のスマホが突然震える。


 「うわっ!?」


 静かな部屋に響いた着信音に思わず肩が跳ねた。


 画面を見る。


 そこには、『如月』の文字が表示されていた。


 (夏休み中も引く手あまたでお忙しい彼氏サマが、急になんの用だよ……)


 夏休みに入る直前に聞いた話だと、演劇部の練習が本格的に始まる8月上旬まではほぼ毎日予定が入っているらしい。


 友達に誘われたり、部活の先輩に呼ばれたり。他校の人と遊ぶ予定まであるらしい。


 あれだけの完璧イケメンであれば、そりゃ忙しくもなるだろう。

 
 (俺は何も誘われなかったけどな~……)


 いや、別にいい。
 別にいいのだ。


 俺たちはあくまで期間限定の偽カップルなわけで、夏休み中に一緒にお出かけ♡なんて恋人らしいことをする必要なんて全くない。


 ……ないのだが。


 「もしも~し。なんだよ。お前、夏休み中は忙しいんじゃなかった?」


 思ったより刺々しい声が出てしまい、言った直後に少し焦る。


 しまった。


 なんかこれ、めちゃくちゃ拗ねてる奴みたいじゃないか?


 しかし、時すでに遅し。


 電話の向こうから、くすりと笑う声が聞こえた。


 『そんなに拗ねるなよ。今日はあんたを誘おうと思ってかけたんだ』


 「はぁ!?いや、拗ねてねぇよ!」

 
 如月は再び笑って告げた。


 『そうかよ。それよりお前、今日暇か?』


 そして、まるで「コンビニ行く?」くらいの軽さで、さらっと口にした。


 
 『一緒にデートしようぜ』