祟り姫と変態王子の怪異録

 しとしとと雨の音が降り注ぐある日晩、織姫は闇の中にいた。
 一寸先すらも見えない真っ暗な闇だった。
 ふと、誰かの視線を感じた。紅い双眸が、じっとこちらを見つめている。
「……シロ太?」
 目を凝らして見ると、ぼんやりと白いシルエットが浮かんできた。白い影はゆっくりと近付いてくる。
「シロ太なの?」
 つるりとした肌の細長い肢体に紅い瞳。良かった。シロ太だ。
 ほっと胸を撫で下ろしかけた、その瞬間だった。
 シャーッ!!
 激しい威嚇音と共にシロ太の姿は巨大な大蛇に変化した。
 嘘でしょ?!
 大蛇の鋭い牙が織姫を頭から飲み込もうとした寸前、
「っ――!」
 そこで織姫の目が覚めた。薄暗い天井が視界に映る。クーラーのない蒸し暑い部屋に、ひんやりとした嫌な汗が背中を伝った。
「……夢かぁ」
 織姫はゆっくりと身体を起こした。心臓がまだ速い。ずっとバクバクしてる。夢の中のシロ太は無言だった。何かを伝えたそうに。何かを訴えたそうに。
 ただじっとこちらを見ていた。