ボクらを乗せた戦闘機は、アジトに到着した。
機体を降りると、大勢の公安の隊員に取り囲まれる。ボクと珠美さんは手錠をかけられたまま、公安のリーダーらしき隊員の前へと連行された。
「ほう、こいつらか。もう、無駄な抵抗はやめろ。どんなに逆らっても国家権力には勝てないのだ」
このリーダーらしき隊員は、腹の出た中年の男で、ボクらを睨んで威圧してくる。
「よし、キッコ、小川、吉馬、ミホ。ご苦労であった!」
「はい、伊東大佐!」
グルの4人は、敬礼をする。この男は、伊東というらしい。
「参ったねえ。ヤタガラスのメンバー全員とここで最後の宴をするって約束したんだけど、どうしてくれるんだい」
珠美さんは、こんな緊迫した状況でも、楽しそうに話す。
「バカめ。お前らの仲間は全員、東京で殺されたぞ。もう終わりだ」
伊東は、非情な結末を伝えた。
「殺したのか……? 何でだ!」
ボクは公安が許せなかった。
「落ち着け、俊介。……供養のためにも宴を開きたいな」
「でも、もうボクら以外に仲間はいないです……」
「いや、全員じゃないかもな」と珠美さんは言う。
全員じゃない?
「これから、ヤタガラスのアジトに入り、兵器や武器などを奪う。セキュリティを解除してくれ」
伊東の求めに応じて、キッコさんが認証システムの前に進む。しかし、いつものようにセキュリティは解除されず、警報音が鳴った。
「どういうことだ?」
小川さん、吉馬さん、ミホさんが代わるがわる認証してみても、セキュリティは解除されない。伊東は動揺していた。それを見て、珠美さんは笑い転げている。
「はははっ。俊介。戦場で悲しんでなんかいられないんだよ。それよりお前は、4人が全員がグルだと分かっていたか?」
「いえ」
「だから先入観は捨てろ、といつも言っているんだ」
「じゃあ、ボスは分かっていたんですか?」
「いつくかある可能性の一つだと思っていた。だから、ここを出発する直前にセキュリティをいじったのさ」
伊東が捕縛されて地面に座っているボクと珠美さんに銃を向ける。
「くだらないことをしやがって。どうすれば、このセキュリティが解除できるんだ? 言え。言わないとこの場で撃ち殺す」
「セキュリティは変更した。最初に私と俊介が同時に認証を受けて、その後をミホが認証されれば、解除となる」
最後にミホさん? そうか、裏切者ではないと思い込んでいたせいだ。
「本当だな?」
「嘘を付いても仕方がないだろ」
珠美さんの発言は強気だ。
「よし、じゃあ、ミホ。こいつらと一緒に入口で認証を受けろ」
「はい」
ミホさんは、ボクと珠美さんを立たせると、銃を突き付けながらアジトの入口へと連れていく。
「じゃあ、まずは二人の認証ね」
ミホさんの言う通りに、ボクと珠美さんはスキャナーの前に立つ。無事認証された。しかし、まだゲートは開かない。
「では最後に、私が認証を受けまーす」
ミホさんが認証されて、解除音が鳴り響く。
「突入だ!」と伊東が指令を出すよりもわずかに早く、珠美さんは「今だ!」と叫んでミホさんに合図を送る。すると、ミホさんは素早くアジトの中に入り、何かを操作した。
すると頑丈な鋼鉄製のシャッターがアジトの入口に下りてくる。
銃声が鳴り響く中、ボクと珠美さんは慌てて、そのシャッターが閉まる前にアジトの中へ滑り込んだ。そして、シャッターが完全に閉まる。
「ヤッター! 成功ね」
ミホさんは嬉しそうに、ボクに話しかけてきた。
どういうことだ?
「ひょっとして、ミホさんはボクらの側の人ですか?」
すると、ミホさんは笑顔で頷く。
「そうよ。最初は公安のスパイだったけど、珠美さんってカッコいいじゃない。それに俊介くんもかわいいから裏切ることにしたの」
つまり、ミホさんは最初は裏切者だったが、さらに裏切って味方になっているってこと? もう訳が分からない。
公安は銃やマシンガン、手りゅう弾をシャッターに浴びせかけて、破壊しようとしている。しかし、頑丈なシャッターはビクともしない。
ミホさんはレーザーカッターでボクらの手錠を外してくれて、ようやく身体が自由になった。
「さあ、これからが本番だ。痛い目に遭わせてやる。そして、最後は……俊介、宴で必要なものの用意できているな? 出発前に準備しておくように言っておいたヤツだ」
「はい。でも、ボス。何で宴なのに、こんなのが必要なんですか……」とボクが言い出すと「うるさい!」と珠美さんは一喝した。
ボクは手のひらサイズのワイヤレスボタンを差し出す。
「このボタンを押したら、どのくらい爆発するんだ?」
「このアジトだけじゃなく、周辺の集落や山ごと吹き飛びます」
「それはいいな。どっちにしたって公安に知られてしまった以上、このアジトはすべて消さなきゃいけない。その前にひと暴れするぞ」
珠美さんは、ボクを兵器庫に連れていき、防弾仕様のウェアと手りゅう弾、レーザー銃、ドローンの翼を収納したリュックを渡してきた。
「今から、このアジトの入口を開けて、中に公安の連中をおびき寄せる」
「それで、最後に爆発させるんですか?」
「そうだ。それまで公安の隊員を中へ引き寄せるために、ギリギリまで暴れるぞ。それで、最後に天井のハッチを開けて、ここを逃げ出してからスイッチを押すんだ」
死ぬかもしれない。でも、負けたくない。ボクとミホさんはお互い目を合わせ、力強く頷いた。
慌てて防弾ウェアや翼のリュックを身にまとい、武器を持つ。
「公安のちゃちな火薬の銃では、私たちの防弾ウェアを貫通することはできない。でも、私たちの持っているレーザー銃は公安の防弾ウェアを貫通できる。さあ、盛大なフィナーレを楽しもう!」
珠美さんは、指令室にある集中管理システムをいじって、アジトの入口を開放した。
雪崩を打ったかのようにたくさんの公安隊が押し寄せてくるのが、監視カメラに映る。
「私が合図したら、この指令室に集合して、ハッチから空へ逃げる。それまでバラバラで公安を攻撃し引きけるんだ。分かったな? じゃあ、スタートだ!」
「はい!」
ボクたちは3方に分かれて通路に出る。すると、公安隊が銃撃してきた。
痛い! 相手の銃弾がボクの足に当たった。……でも、無事だ! この防弾はウェア強力なシールドのようにはねのけている。
優等人種め。よくも、仲間を殺したな!
怒りが湧いてくる。人は殺したくないが、ボクらを殺そうとするヤツらに温情はかけていられない。
レーダー銃を構え、できるだけ急所を外して、連射した。すると一撃で公安隊員は倒れていく。
アジト内は爆発音や銃の射撃の轟音で包まれた。とりわけ、公安にとっては兵器庫にほしいものがそろっているせいか、焦ったようにそこに飛び込んでくる。そこをボクは攻撃し続けた。
「俊介くん、観念しろ!」
背後から男2人にボクは羽交い絞めにされた。必死で振りほどくと、そこには小川さんと吉馬さんがいた。二人は、レーザー銃を持つボクになすすべがないから、おびえている。
「なあ、俊介くん、公安に協力しないか?」
吉馬さんは、ボクも裏切るように説得してくる。
「お母さんや弟さんとも、一緒に暮らしたいだろ?」
ボクは銃口を二人に向けた。
「あなたたちに、ヨーシー民の悔しさが分かるのか?」
「やめてくれ。な。撃たないでくれ」
「邪魔だ! この裏切者!」
ボクは無意識で連射をしていた。そして涙が流れる。
バカ野郎。
この2人が倒れても、次から次へと隊員は攻め込んでくる。いくら撃ってもキリがなかった。
一体、公安は何人いるんだ? 千人以上か?
その時、珠美さんの声が聞こえた。
「俊介! ミホ!」
ついに、集合の合図だ。
ボクの仕掛けた爆弾が、すべてを破壊してしまう。
銃を連射しながら、ボクは指令室に入る。そこには、珠美さんとミホさんがすでにいて、テーブル越しに公安隊と銃撃戦を繰り広げていた。見回したら公安の誰も、空を飛べるドローン機器は装備していないり。空に飛べば、逃げ切れる。
「よし、作戦通りだ」
そういうと、珠美さんは爆破スイッチであるワイヤレスボタンを取り出した。
「ミホ、天井のハッチを開けろ」
「はい!」
ミホさんは、緊急避難装置を作動させ、天井のハッチを全開放した。その先に、青く澄んだ空が見える。あそこだ。青空へ飛ぶんだ!
え?
その時、電子音に似た銃声が何発も響き渡った。
そして、血のしぶきが舞い、珠美さんとミホさんが倒れる。ボクの右足も激しい痛みが襲った。
「ボス! ミホさん!」
高性能の防弾ウェアを着ているのに、どうして撃ち抜かれたんだ?
振り向くと、キッコさんが扉の背後から銃を構えていた。
ボクは撃たれないように、司令デスクの後ろに回って銃を構える。
「撃ち殺すのは、あと、俊介くんだけね!」
キッコさんは、ボクらと同じレーザー銃を持っていた。
なぜだ? あの銃は今日初めて珠美さんがボクらに渡したもので、キッコさんたちは持っていないはずなのに。
「このレーザー銃を珠美がこっそりつくろうとしていたのは、お見通しだよ。だから、設計図を先にコピーして、私がこの日のために同じものをつくったのさ」
キッコさんは銃を連射してボクをかくまっている机をどんどん破壊していく。このままでは、丸裸になってしまう。
もう、一か八かだ。
ボクは部屋の照明やモニターをすべて銃で撃って司令室を暗くした。
「ふん、そんなことをしても無駄だよ」
やってやる。生きるか死ぬかの勝負。負けてたまるか。
ケータイの通話をスピーカーモードにして、キッコさんの足元に投げる。ケータイはAIがボクの声で喋るように設定してある。
その時、キッコさんは声に反応して、足元のケータイを射撃し始めた。
よし!
その一瞬でボクは背中の翼を広げ、天井スレスレまで舞い上がり、上からキッコさん目掛けて銃を連射する。
「ぐわぁ!」
キッコさんが倒れた。成功だ。
ボクは急いで、倒れ込んでいる珠美さんとミホさんに駆け寄る。
「もういい。逃げろ……」
かろうじて、珠美さんは生きていた。
ミホさんは、……ダメだった。助けられなかった……。ボクは自分の無力さに打ちのめされる。
「俊介くん、これをご覧」
倒れて血まみれになったキッコさんは、右手にボタンを握りしめていた。
あれは、ボクがつくった爆弾の起爆装置!
「さっき、珠美から奪ってやった。これもお見通しだったよ。このエリアがこのボタンで爆破するんでしょ?」
「それ、返せ!」
「ふっ。もう、私は致命傷を負ってる。どうせ死ぬんだよ。死ぬなら、道連れだ」
ボクは慌てて珠美さんを抱え上げ、逃げようとする。しかし、ボクも右足を負傷していて、うまく抱えられずに手こずっていた。
「珠美、ゲームオーバーだ!」
キッコさんは、とうとうボタンを押してしまった。
アジト全体の空気が張り詰める。
「俊介、私は置いて逃げろー!」
「イヤです」
目に映る景色がスローモーションのようにゆっくりと流れていく。
キッコさんは「なぜ爆発しない?」と声を上げた。
ボクは力を振り絞って珠美さんを抱え上げ、空に向って飛び出した。
「ボス。さあ、神様に一緒に謝罪しましょう」
「……そういうことか。くだらん」
ボタンを押してから爆発するまでに3秒間の猶予の時間をつくっておいてよかった。
「神様、すいません」
ハッチから飛び出した途端、爆風と炎が巻き上がる。
その炎はボクの背中の翼に燃え移っていた。でも、何とか、逃げ切れるだろう。
「俊介。お前、まるで、火の鳥みたいだな」と珠美さんは笑う。
空はどこまでも青く澄んでいた。
機体を降りると、大勢の公安の隊員に取り囲まれる。ボクと珠美さんは手錠をかけられたまま、公安のリーダーらしき隊員の前へと連行された。
「ほう、こいつらか。もう、無駄な抵抗はやめろ。どんなに逆らっても国家権力には勝てないのだ」
このリーダーらしき隊員は、腹の出た中年の男で、ボクらを睨んで威圧してくる。
「よし、キッコ、小川、吉馬、ミホ。ご苦労であった!」
「はい、伊東大佐!」
グルの4人は、敬礼をする。この男は、伊東というらしい。
「参ったねえ。ヤタガラスのメンバー全員とここで最後の宴をするって約束したんだけど、どうしてくれるんだい」
珠美さんは、こんな緊迫した状況でも、楽しそうに話す。
「バカめ。お前らの仲間は全員、東京で殺されたぞ。もう終わりだ」
伊東は、非情な結末を伝えた。
「殺したのか……? 何でだ!」
ボクは公安が許せなかった。
「落ち着け、俊介。……供養のためにも宴を開きたいな」
「でも、もうボクら以外に仲間はいないです……」
「いや、全員じゃないかもな」と珠美さんは言う。
全員じゃない?
「これから、ヤタガラスのアジトに入り、兵器や武器などを奪う。セキュリティを解除してくれ」
伊東の求めに応じて、キッコさんが認証システムの前に進む。しかし、いつものようにセキュリティは解除されず、警報音が鳴った。
「どういうことだ?」
小川さん、吉馬さん、ミホさんが代わるがわる認証してみても、セキュリティは解除されない。伊東は動揺していた。それを見て、珠美さんは笑い転げている。
「はははっ。俊介。戦場で悲しんでなんかいられないんだよ。それよりお前は、4人が全員がグルだと分かっていたか?」
「いえ」
「だから先入観は捨てろ、といつも言っているんだ」
「じゃあ、ボスは分かっていたんですか?」
「いつくかある可能性の一つだと思っていた。だから、ここを出発する直前にセキュリティをいじったのさ」
伊東が捕縛されて地面に座っているボクと珠美さんに銃を向ける。
「くだらないことをしやがって。どうすれば、このセキュリティが解除できるんだ? 言え。言わないとこの場で撃ち殺す」
「セキュリティは変更した。最初に私と俊介が同時に認証を受けて、その後をミホが認証されれば、解除となる」
最後にミホさん? そうか、裏切者ではないと思い込んでいたせいだ。
「本当だな?」
「嘘を付いても仕方がないだろ」
珠美さんの発言は強気だ。
「よし、じゃあ、ミホ。こいつらと一緒に入口で認証を受けろ」
「はい」
ミホさんは、ボクと珠美さんを立たせると、銃を突き付けながらアジトの入口へと連れていく。
「じゃあ、まずは二人の認証ね」
ミホさんの言う通りに、ボクと珠美さんはスキャナーの前に立つ。無事認証された。しかし、まだゲートは開かない。
「では最後に、私が認証を受けまーす」
ミホさんが認証されて、解除音が鳴り響く。
「突入だ!」と伊東が指令を出すよりもわずかに早く、珠美さんは「今だ!」と叫んでミホさんに合図を送る。すると、ミホさんは素早くアジトの中に入り、何かを操作した。
すると頑丈な鋼鉄製のシャッターがアジトの入口に下りてくる。
銃声が鳴り響く中、ボクと珠美さんは慌てて、そのシャッターが閉まる前にアジトの中へ滑り込んだ。そして、シャッターが完全に閉まる。
「ヤッター! 成功ね」
ミホさんは嬉しそうに、ボクに話しかけてきた。
どういうことだ?
「ひょっとして、ミホさんはボクらの側の人ですか?」
すると、ミホさんは笑顔で頷く。
「そうよ。最初は公安のスパイだったけど、珠美さんってカッコいいじゃない。それに俊介くんもかわいいから裏切ることにしたの」
つまり、ミホさんは最初は裏切者だったが、さらに裏切って味方になっているってこと? もう訳が分からない。
公安は銃やマシンガン、手りゅう弾をシャッターに浴びせかけて、破壊しようとしている。しかし、頑丈なシャッターはビクともしない。
ミホさんはレーザーカッターでボクらの手錠を外してくれて、ようやく身体が自由になった。
「さあ、これからが本番だ。痛い目に遭わせてやる。そして、最後は……俊介、宴で必要なものの用意できているな? 出発前に準備しておくように言っておいたヤツだ」
「はい。でも、ボス。何で宴なのに、こんなのが必要なんですか……」とボクが言い出すと「うるさい!」と珠美さんは一喝した。
ボクは手のひらサイズのワイヤレスボタンを差し出す。
「このボタンを押したら、どのくらい爆発するんだ?」
「このアジトだけじゃなく、周辺の集落や山ごと吹き飛びます」
「それはいいな。どっちにしたって公安に知られてしまった以上、このアジトはすべて消さなきゃいけない。その前にひと暴れするぞ」
珠美さんは、ボクを兵器庫に連れていき、防弾仕様のウェアと手りゅう弾、レーザー銃、ドローンの翼を収納したリュックを渡してきた。
「今から、このアジトの入口を開けて、中に公安の連中をおびき寄せる」
「それで、最後に爆発させるんですか?」
「そうだ。それまで公安の隊員を中へ引き寄せるために、ギリギリまで暴れるぞ。それで、最後に天井のハッチを開けて、ここを逃げ出してからスイッチを押すんだ」
死ぬかもしれない。でも、負けたくない。ボクとミホさんはお互い目を合わせ、力強く頷いた。
慌てて防弾ウェアや翼のリュックを身にまとい、武器を持つ。
「公安のちゃちな火薬の銃では、私たちの防弾ウェアを貫通することはできない。でも、私たちの持っているレーザー銃は公安の防弾ウェアを貫通できる。さあ、盛大なフィナーレを楽しもう!」
珠美さんは、指令室にある集中管理システムをいじって、アジトの入口を開放した。
雪崩を打ったかのようにたくさんの公安隊が押し寄せてくるのが、監視カメラに映る。
「私が合図したら、この指令室に集合して、ハッチから空へ逃げる。それまでバラバラで公安を攻撃し引きけるんだ。分かったな? じゃあ、スタートだ!」
「はい!」
ボクたちは3方に分かれて通路に出る。すると、公安隊が銃撃してきた。
痛い! 相手の銃弾がボクの足に当たった。……でも、無事だ! この防弾はウェア強力なシールドのようにはねのけている。
優等人種め。よくも、仲間を殺したな!
怒りが湧いてくる。人は殺したくないが、ボクらを殺そうとするヤツらに温情はかけていられない。
レーダー銃を構え、できるだけ急所を外して、連射した。すると一撃で公安隊員は倒れていく。
アジト内は爆発音や銃の射撃の轟音で包まれた。とりわけ、公安にとっては兵器庫にほしいものがそろっているせいか、焦ったようにそこに飛び込んでくる。そこをボクは攻撃し続けた。
「俊介くん、観念しろ!」
背後から男2人にボクは羽交い絞めにされた。必死で振りほどくと、そこには小川さんと吉馬さんがいた。二人は、レーザー銃を持つボクになすすべがないから、おびえている。
「なあ、俊介くん、公安に協力しないか?」
吉馬さんは、ボクも裏切るように説得してくる。
「お母さんや弟さんとも、一緒に暮らしたいだろ?」
ボクは銃口を二人に向けた。
「あなたたちに、ヨーシー民の悔しさが分かるのか?」
「やめてくれ。な。撃たないでくれ」
「邪魔だ! この裏切者!」
ボクは無意識で連射をしていた。そして涙が流れる。
バカ野郎。
この2人が倒れても、次から次へと隊員は攻め込んでくる。いくら撃ってもキリがなかった。
一体、公安は何人いるんだ? 千人以上か?
その時、珠美さんの声が聞こえた。
「俊介! ミホ!」
ついに、集合の合図だ。
ボクの仕掛けた爆弾が、すべてを破壊してしまう。
銃を連射しながら、ボクは指令室に入る。そこには、珠美さんとミホさんがすでにいて、テーブル越しに公安隊と銃撃戦を繰り広げていた。見回したら公安の誰も、空を飛べるドローン機器は装備していないり。空に飛べば、逃げ切れる。
「よし、作戦通りだ」
そういうと、珠美さんは爆破スイッチであるワイヤレスボタンを取り出した。
「ミホ、天井のハッチを開けろ」
「はい!」
ミホさんは、緊急避難装置を作動させ、天井のハッチを全開放した。その先に、青く澄んだ空が見える。あそこだ。青空へ飛ぶんだ!
え?
その時、電子音に似た銃声が何発も響き渡った。
そして、血のしぶきが舞い、珠美さんとミホさんが倒れる。ボクの右足も激しい痛みが襲った。
「ボス! ミホさん!」
高性能の防弾ウェアを着ているのに、どうして撃ち抜かれたんだ?
振り向くと、キッコさんが扉の背後から銃を構えていた。
ボクは撃たれないように、司令デスクの後ろに回って銃を構える。
「撃ち殺すのは、あと、俊介くんだけね!」
キッコさんは、ボクらと同じレーザー銃を持っていた。
なぜだ? あの銃は今日初めて珠美さんがボクらに渡したもので、キッコさんたちは持っていないはずなのに。
「このレーザー銃を珠美がこっそりつくろうとしていたのは、お見通しだよ。だから、設計図を先にコピーして、私がこの日のために同じものをつくったのさ」
キッコさんは銃を連射してボクをかくまっている机をどんどん破壊していく。このままでは、丸裸になってしまう。
もう、一か八かだ。
ボクは部屋の照明やモニターをすべて銃で撃って司令室を暗くした。
「ふん、そんなことをしても無駄だよ」
やってやる。生きるか死ぬかの勝負。負けてたまるか。
ケータイの通話をスピーカーモードにして、キッコさんの足元に投げる。ケータイはAIがボクの声で喋るように設定してある。
その時、キッコさんは声に反応して、足元のケータイを射撃し始めた。
よし!
その一瞬でボクは背中の翼を広げ、天井スレスレまで舞い上がり、上からキッコさん目掛けて銃を連射する。
「ぐわぁ!」
キッコさんが倒れた。成功だ。
ボクは急いで、倒れ込んでいる珠美さんとミホさんに駆け寄る。
「もういい。逃げろ……」
かろうじて、珠美さんは生きていた。
ミホさんは、……ダメだった。助けられなかった……。ボクは自分の無力さに打ちのめされる。
「俊介くん、これをご覧」
倒れて血まみれになったキッコさんは、右手にボタンを握りしめていた。
あれは、ボクがつくった爆弾の起爆装置!
「さっき、珠美から奪ってやった。これもお見通しだったよ。このエリアがこのボタンで爆破するんでしょ?」
「それ、返せ!」
「ふっ。もう、私は致命傷を負ってる。どうせ死ぬんだよ。死ぬなら、道連れだ」
ボクは慌てて珠美さんを抱え上げ、逃げようとする。しかし、ボクも右足を負傷していて、うまく抱えられずに手こずっていた。
「珠美、ゲームオーバーだ!」
キッコさんは、とうとうボタンを押してしまった。
アジト全体の空気が張り詰める。
「俊介、私は置いて逃げろー!」
「イヤです」
目に映る景色がスローモーションのようにゆっくりと流れていく。
キッコさんは「なぜ爆発しない?」と声を上げた。
ボクは力を振り絞って珠美さんを抱え上げ、空に向って飛び出した。
「ボス。さあ、神様に一緒に謝罪しましょう」
「……そういうことか。くだらん」
ボタンを押してから爆発するまでに3秒間の猶予の時間をつくっておいてよかった。
「神様、すいません」
ハッチから飛び出した途端、爆風と炎が巻き上がる。
その炎はボクの背中の翼に燃え移っていた。でも、何とか、逃げ切れるだろう。
「俊介。お前、まるで、火の鳥みたいだな」と珠美さんは笑う。
空はどこまでも青く澄んでいた。



