拓斗に謎のお菓子をもらってから数日後、バレンタイン当日の朝。
教室に入ると、もうチョコを交換する女子たちがチラホラと居た。
男子はいつもと変わらないけど女子をチラ見したり、あからさまに口笛を吹いたりして注目を集めようとしている。
そういうことするより、自分から何か話し掛けりゃいいのに。
そわそわしてる同性のクラスメイト達に半ば呆れながら、俺は自分の席に向かった。
するとコンビニで買えそうな小分けされたチョコや、ひと口サイズのチョコ、中には手作りって分かるチョコやクッキーが机に置かれている。
「……ふぅ」
誰にも聞こえないように溜め息を吐くと、念のために持ってきた無地の白いエコバッグに机のものを全部しまう。
教室に着くまで楽しみ半分、憂鬱半分。今、憂鬱の方がちょっと上がった。
正直なところ義理でも本命でも嬉しいけど、せっかくくれたから捨てるのは嫌だし、ちゃんと食べないとと思う。
でもこの中に……特にラッピングされたものは、本命なんだろうな。
恋愛とかそういうのは分からないけど、告白されたらまぁ……断るわな。
今は五月の半ばにある大会に集中したいし、そもそもあと二ヶ月しかないから出来るだけ追い込まないといけない。
そうじゃなくても、恋愛してるより拓斗と居る方が楽しいんだよな。素を見せられるっていうか。
「──あれ、拓斗くんは?」
すると廊下から女子の声が聞こえて、無意識に拓斗の席に目を向ける。
「うわっ」
そんな声と共に、ぎょっと目を見開いた。
肝心の拓斗はいない代わりに、机の上に溢れ返りそうなほどのチョコが載せられている。
え、俺より多いんだけど。
なんだか負けた気分になって、でも『あれ全部食べるのか』とか『お返しどうするんだろう』とか、そんなことが気になってしまう。
あいつ、どんな顔して渡すんだろう。どんな言葉を掛けるんだろう。
「……やっぱあの、ニセモノの顔で言うのかなぁ」
俺と話す時とはまるきり違う、優しくて穏やかで……いかにも『作ってます』感がある口調で。
「拓斗ならいないけど」
「そっかぁ、じゃあ……」
まだ五分も経ってないけど教室はもちろん、廊下側も騒がしくて落ち着かない。
なのに頭の中はフル回転していて、気付いたら拓斗のことばっか考えてるな、って自覚したら段々笑えてきた。
「──おはよ、隼くん。今いい?」
するとすぐ側から女子の声が聞こえてきて、俺はにこりと口元に笑みを貼り付ける。
「はよ、どした」
話し掛けてきたその子はクラスメイトで、頬を染めながらやや上擦った声で言った。
「バレンタインだから。これ、ちゃんと渡したくて」
言いながら差し出してきたのは正方形の茶色い箱で、ラッピングされたリボンにはメッセージカードが挟んである。
英語っぽいけど、なんて書いてるのかは分からない。でも、また一つ食べないといけないものが増えた……。
「……ありがとう。大事に食べるよ」
心の中で号泣しながら、ひとまずお礼を言って差し出された箱を受け取る。
チクショウ、この体質さえなければバカみたいに食べるのに。でも、今日を乗り切れば俺の勝ちだ!
拓斗までとはいかないけど、もらった大量のチョコをどうするのかは考えないといけないから。
クラスメイトの女子が居なくなると、俺は決意するように机の下でぎゅうと両手を握り締めた。
教室に入ると、もうチョコを交換する女子たちがチラホラと居た。
男子はいつもと変わらないけど女子をチラ見したり、あからさまに口笛を吹いたりして注目を集めようとしている。
そういうことするより、自分から何か話し掛けりゃいいのに。
そわそわしてる同性のクラスメイト達に半ば呆れながら、俺は自分の席に向かった。
するとコンビニで買えそうな小分けされたチョコや、ひと口サイズのチョコ、中には手作りって分かるチョコやクッキーが机に置かれている。
「……ふぅ」
誰にも聞こえないように溜め息を吐くと、念のために持ってきた無地の白いエコバッグに机のものを全部しまう。
教室に着くまで楽しみ半分、憂鬱半分。今、憂鬱の方がちょっと上がった。
正直なところ義理でも本命でも嬉しいけど、せっかくくれたから捨てるのは嫌だし、ちゃんと食べないとと思う。
でもこの中に……特にラッピングされたものは、本命なんだろうな。
恋愛とかそういうのは分からないけど、告白されたらまぁ……断るわな。
今は五月の半ばにある大会に集中したいし、そもそもあと二ヶ月しかないから出来るだけ追い込まないといけない。
そうじゃなくても、恋愛してるより拓斗と居る方が楽しいんだよな。素を見せられるっていうか。
「──あれ、拓斗くんは?」
すると廊下から女子の声が聞こえて、無意識に拓斗の席に目を向ける。
「うわっ」
そんな声と共に、ぎょっと目を見開いた。
肝心の拓斗はいない代わりに、机の上に溢れ返りそうなほどのチョコが載せられている。
え、俺より多いんだけど。
なんだか負けた気分になって、でも『あれ全部食べるのか』とか『お返しどうするんだろう』とか、そんなことが気になってしまう。
あいつ、どんな顔して渡すんだろう。どんな言葉を掛けるんだろう。
「……やっぱあの、ニセモノの顔で言うのかなぁ」
俺と話す時とはまるきり違う、優しくて穏やかで……いかにも『作ってます』感がある口調で。
「拓斗ならいないけど」
「そっかぁ、じゃあ……」
まだ五分も経ってないけど教室はもちろん、廊下側も騒がしくて落ち着かない。
なのに頭の中はフル回転していて、気付いたら拓斗のことばっか考えてるな、って自覚したら段々笑えてきた。
「──おはよ、隼くん。今いい?」
するとすぐ側から女子の声が聞こえてきて、俺はにこりと口元に笑みを貼り付ける。
「はよ、どした」
話し掛けてきたその子はクラスメイトで、頬を染めながらやや上擦った声で言った。
「バレンタインだから。これ、ちゃんと渡したくて」
言いながら差し出してきたのは正方形の茶色い箱で、ラッピングされたリボンにはメッセージカードが挟んである。
英語っぽいけど、なんて書いてるのかは分からない。でも、また一つ食べないといけないものが増えた……。
「……ありがとう。大事に食べるよ」
心の中で号泣しながら、ひとまずお礼を言って差し出された箱を受け取る。
チクショウ、この体質さえなければバカみたいに食べるのに。でも、今日を乗り切れば俺の勝ちだ!
拓斗までとはいかないけど、もらった大量のチョコをどうするのかは考えないといけないから。
クラスメイトの女子が居なくなると、俺は決意するように机の下でぎゅうと両手を握り締めた。



