雨色な君の心に半透明な傘を翳すころ

下旬、ポストに届いた茶封筒が俺の合格を知らせていた。
後期スポーツ推薦、特例選考合格。

あの面接で、俺はバスケが好きだからなんて志望動機は一言も言わなかった。
ただ。

「俺にはこれしかない。他人の命の金で繋いでもらった首の皮一枚のチャンスを、無駄にするわけにはいかない」
と、面接官の大人たちの目を真っ直ぐに見据えて言い放った。

それから1ヶ月後、3月。
肌寒い日に卒業式を迎えた。

式が終わった後の教室は、皆「合格おめでとう!」「マジで良かったな!」と抱き合い、スマホのカメラを向け合って、涙を流しながら互いの合格を祝い合っていた。
騒がしくて、やっぱりどこか絵に描いたような青春の終わりの光景。

「おい、橘!」
人混みを掻き分けて、拓海と木村が俺の席に突っ込んできた。
木村の手には、すでに制服の第二ボタンが握られている。

「聞いたぞ、お前マジで後期で体育大ぶち抜いたんだってな!監督から聞いた時はひっくり返りそうになったわ!本当に良かったな、橘。これでまた、お前のバスケが見られる。大学のリーグ戦絶対に木村と応援に行くからよ」

「……ああ。ありがとな、お前ら」
俺は小さく笑って、2人の差し出してきた拳に、自分の拳を軽くぶつけた。


式を終え、俺は1人静まり返ったアパートの部屋に戻った。


4月。
大学のキャンパスへと続く道は、満開の桜のピンク色で埋め尽くされていた。
生ぬるい風が、新しいカバンを背負った俺の頬を撫でていく。

俺のポケットの中には、あののキーホルダーと黄色いひまわりの髪留め。

……見上げた空は雲1つない快晴だった。
俺はマフラーを外し、カバンの紐を強く握り直すとキャンパスの門へと力強く一歩を踏み出した。