だが、彼女の動きは驚くほど素早かった。
俺の紺色のパーカーの袖を、引きちぎらんばかりの力で掴み、強引にその場へ引き戻す。
「関係あります!これ、見てください!」
彼女がスカートのポケットから乱雑に引っ張り出したのは、何枚もの分厚い一万円札の束だった。
銀行の帯がついたままの、生々しい百万円の束。
それが二つ、彼女の手の中で不格好に歪んでいる。
「これ、パパの金庫から、先輩のために私が持ってきてあげたんです。百万円。あの女の人には、こんな大金、絶対に用意できませんよね?」
「……正気かよ、お前」
俺の全身の血が凍りつく。
親の金を盗み出してまで俺を縛り付けようとする狂気の証明。
「私、先輩のそういう困った顔、すっごくゾクゾクしちゃう。先輩、あの日私を傷つけた罰、ちゃんと受けてもらいますからね。……ねえ、橘先輩。このお金、欲しいですよね?」
後輩は、掴んだ俺の腕を自分の胸元へと強引に押し当てた。
セーラー服の隙間から覗く、生温かい肌の感触が直接手のひらに伝わり、脳裏に強烈な嫌悪感が走る。
彼女の細い指先が、今度は彼女自身の制服のボタンにかけられた。
一つ、また一つと外されていく。
その執拗で、こちらの意思を完全に無視した身体的な境界線を踏み越えてくる圧倒的な支配欲に、俺の身体は恐怖で完全に硬直してしまった。
逃げなければいけない。
突っぱねなければいけない。
頭では分かっているのに、トラウマが俺の四肢から筋力を完全に奪い去っていた。
「あの女の人の匂い、消してあげます。先輩の全部を、私が力ずくでも上書きして……!」
後輩の顔が至近距離まで迫り、その熱い吐息が首筋にかかる。
逃げられない暗闇の中で、俺の視界が真っ黒に塗り潰されようとした、その時――。
俺の紺色のパーカーの袖を、引きちぎらんばかりの力で掴み、強引にその場へ引き戻す。
「関係あります!これ、見てください!」
彼女がスカートのポケットから乱雑に引っ張り出したのは、何枚もの分厚い一万円札の束だった。
銀行の帯がついたままの、生々しい百万円の束。
それが二つ、彼女の手の中で不格好に歪んでいる。
「これ、パパの金庫から、先輩のために私が持ってきてあげたんです。百万円。あの女の人には、こんな大金、絶対に用意できませんよね?」
「……正気かよ、お前」
俺の全身の血が凍りつく。
親の金を盗み出してまで俺を縛り付けようとする狂気の証明。
「私、先輩のそういう困った顔、すっごくゾクゾクしちゃう。先輩、あの日私を傷つけた罰、ちゃんと受けてもらいますからね。……ねえ、橘先輩。このお金、欲しいですよね?」
後輩は、掴んだ俺の腕を自分の胸元へと強引に押し当てた。
セーラー服の隙間から覗く、生温かい肌の感触が直接手のひらに伝わり、脳裏に強烈な嫌悪感が走る。
彼女の細い指先が、今度は彼女自身の制服のボタンにかけられた。
一つ、また一つと外されていく。
その執拗で、こちらの意思を完全に無視した身体的な境界線を踏み越えてくる圧倒的な支配欲に、俺の身体は恐怖で完全に硬直してしまった。
逃げなければいけない。
突っぱねなければいけない。
頭では分かっているのに、トラウマが俺の四肢から筋力を完全に奪い去っていた。
「あの女の人の匂い、消してあげます。先輩の全部を、私が力ずくでも上書きして……!」
後輩の顔が至近距離まで迫り、その熱い吐息が首筋にかかる。
逃げられない暗闇の中で、俺の視界が真っ黒に塗り潰されようとした、その時――。



