雨色な君の心に半透明な傘を翳すころ

「――最低でも、現段階で見込める自己負担額だけで、百万から二百万。術後の経過やリハビリの期間によっては、それ以上になることも覚悟していただかなければなりません」

文字にすればたった数文字の数字が、今の俺たちにとっては世界の果てよりも遠い絶望的な壁だった。
さっき役所で、俺が身を削って貯めた数十万円の通帳を守れたと安堵していた自分が、滑稽に思えてくる。

高校生が夜を徹して床を磨き、肉を運んだところで、命の値段の足元にも及ばない。
それが、この理不尽な世界の現実だった。

「……分かりました。先生、とにかく、検討させてください」
叔父はそう言うのが精一杯という顔で、深く頭を下げた。

カンファレンスルームを出て、一般病棟の長い廊下を歩く間、俺たち二人の間に言葉はなかった。
窓の外からは、夏の終わりを告げるような雲が広がり始めている。