「そこをなんとか、特例として認められないでしょうか」
叔父が身を乗り出し、掠れた声で交渉を始める。
「瑞稀の妹、詩織は、今も脳神経外科の病棟で昏睡状態にあります。これから先、どんな治療法が見つかるか分からない。将来、詩織が目を覚ました時、あるいはリハビリが必要になった時、この子が稼いだお金を、その妹の将来のための貯金として確保しておくことはできないんですか」
職員は困ったように眉根を寄せ、手元の分厚いマニュアルの冊子をパラパラとめくった。
「うーん……本来、生活保護法における自立更生は、アルバイトをしている本人のための支出に限定されるのが原則なんですがね。ただ、今回のケースは、妹さんの事故という極めて特殊な事情があります」
職員は一度眼鏡を外し、俺の真顔をじっと見つめてきた。
「担当の医師からの診断書、および、将来的な医療費・介護費の見込みに関する意見書を別途提出していただけるなら、このアルバイト収入を詩織さんの将来のための自立更生費用として、目的を限定した上で保有を認める方向で、上司と調整してみます。これなら、生活保護を廃止にされることなく、全額を詩織さんのためにストックできますよ」
「……本当、ですか」
叔父の声が震えた。
俺が夜を徹して、プライドを粉砕されながら、泥をすするようにして稼いだお金。
それが、ただの国のルールによって没収されることなく、ちゃんと詩織の未来を繋ぎ止めるための光として使える。
その事実だけが、夏休みを絶望で失った俺の心に、小さな、だけど確かな錨のように下ろされた瞬間だった。
叔父が身を乗り出し、掠れた声で交渉を始める。
「瑞稀の妹、詩織は、今も脳神経外科の病棟で昏睡状態にあります。これから先、どんな治療法が見つかるか分からない。将来、詩織が目を覚ました時、あるいはリハビリが必要になった時、この子が稼いだお金を、その妹の将来のための貯金として確保しておくことはできないんですか」
職員は困ったように眉根を寄せ、手元の分厚いマニュアルの冊子をパラパラとめくった。
「うーん……本来、生活保護法における自立更生は、アルバイトをしている本人のための支出に限定されるのが原則なんですがね。ただ、今回のケースは、妹さんの事故という極めて特殊な事情があります」
職員は一度眼鏡を外し、俺の真顔をじっと見つめてきた。
「担当の医師からの診断書、および、将来的な医療費・介護費の見込みに関する意見書を別途提出していただけるなら、このアルバイト収入を詩織さんの将来のための自立更生費用として、目的を限定した上で保有を認める方向で、上司と調整してみます。これなら、生活保護を廃止にされることなく、全額を詩織さんのためにストックできますよ」
「……本当、ですか」
叔父の声が震えた。
俺が夜を徹して、プライドを粉砕されながら、泥をすするようにして稼いだお金。
それが、ただの国のルールによって没収されることなく、ちゃんと詩織の未来を繋ぎ止めるための光として使える。
その事実だけが、夏休みを絶望で失った俺の心に、小さな、だけど確かな錨のように下ろされた瞬間だった。



