雨色な君の心に半透明な傘を翳すころ

俺は続けた。

「通常は大学の進学費用や、就職のための引っ越し費用として認められるケースが多いんだけど……これを昏睡状態の妹の将来的な自立・更生のための先進医療費として役所に認めさせる。叔父貴にも頭を下げて、理由書を書いてもらうつもりだ。これが通れば、俺が新しく稼ぐバイト代は、一円も減らされることなく、詩織の未来のための本物の金としてストックできる」

俺の言葉を聞いて、和奏はホッとしたように胸をなでおろし、へにゃりと眉を下げて笑った。
「よかった……。絶望的なだけじゃなかったんだね。橘くんが難しい本をたくさん読んで、役所の仕組みを必死に調べてくれたおかげだよ」
「まだ役所が認めてくれるかは分からない。だけど、戦う土俵には立てる。……そこでだ、和奏」

俺はノートの次のページを開き、大きく新バイト条件と書いた。

「今度は深夜じゃなく、学校帰りに無理なく行ける範囲で、効率よく稼げるバイトを探さなきゃいけない。俺一人で泥をあさるように探してたら、また体調を崩す。……お前の、あのストーカー並みの情報網を、もう一度俺に貸してくれないか」

「ストーカー並みって言うなー!」
和奏は頬を膨らませたが、すぐに、にやりと最高に頼もしい笑顔を浮かべた。

「まー任せなさい!橘くんの非公認・専属栄養士兼、公認の彼女としての腕の見せ所だね。学校帰りに行けて、深夜じゃなくて、体力を活かせて、人とあまり話さなくていいやつ……。いくつか条件を整理」

「ああ。まず、時間は放課後の16時から、遅くても夜の21時か22時まで。これなら次の日の授業にも響かないし、睡眠時間もちゃんと確保できる。それから、時給は最低限のラインじゃなく、できるだけ高いところがいい」