雨色な君の心に半透明な傘を翳すころ

キーンコーンカーンコーン、と午前中の授業開始を告げるチャイムが響き渡る。
学校の廊下を、男子高校生たちの騒がしい足音が埋め尽くしていた。

「おい瑞稀、日焼け止め持ってねえの?マジで焼けるぞ」
木村がカバンから場違いに白いボトルを取り出して、俺の目の前で振ってみせる。
「いらん。男がそんなもん塗るか」
「甘いよ貯金マシーンくん!今の紫外線はね、お肌の天敵!」

背後から、ポニーテールを揺らした和奏が、俺の黒いカバンの端をぎゅっと掴みながら割り込んできた。
そのハーフアップにした髪には、あのショッピングモールで買った、ひまわりの髪留めが綺麗に収まっている。
「お前、本当に来るんだな」
「当たり前じゃん!拓海くんに和奏も強制参加って言われた瞬間、私のスケジュール帳には大きなひまわりマークが描かれました!」
和奏はいつものように、耳がキーンとするようなトーンでゲラゲラと笑った。

都会の喧騒を離れ、ガタゴトと頼りない音を立てる地方路線に揺られること一時間。
冷房の効いた車内は、完全に俺たちの貸し切り状態だった。
拓海と木村はボックス席でスマホの画面を覗き込み、次の大会の対戦相手のデータを熱心に分析している。

その向かい側。
窓際の席に座った和奏は、ガラスに額をぴったりとくっつけて、遠くに見え始めた青い水平線を見つめていた。
「……わ」
和奏の口から小さな息が漏れる。
その横顔を、真夏の太陽の光が透き通るように照らしていた。

「海、見るの初めてか」
俺がボソッと呟くと、和奏はハッとしたように振り返り、いつもの笑顔。
「まさか!私をどこの深窓の令嬢だと思ってんの。ちょっと綺麗だなーって、普通の女子高生らしい感想を抱いただけです!」