日曜日の午前十時。
駅前の噴水広場は、休日を楽しむ家族連れやカップルでごった返していた。
俺は黒いキャップキャップのひさしを少しだけ指で押し上げ、手元のスマホに目を落とす。
『橘くん、もう着いた? 私はね、あと三十秒で橘くんの後ろに出現しまーす!』
そんな意味不明なメッセージが届いた直後、背中にぽすん、と柔らかい衝撃が走った。
「じゃじゃーん!橘くん、お待たせ!今日の私は一味違うでしょ!」
振り返ると、そこにはいつもの制服姿ではなく、白いブラウスにブルーのデニムスカートを合わせた和奏が立っていた。
いつもより少しだけ大人っぽく、ポニーテールが元気に揺れている。
「……おう。待ってない。今着いたところだ」
「嘘だぁ。スマホの画面見てる橘くん、ちょっとソワソワしてたもん!っていうか、見て見て!今日の橘くん、拓海くんたちに選んでもらった服?すっごく格好いいじゃん!」
和奏は俺の私服(黒のパーカーにシンプルなジーンズ)を見るなり、限界まで顔を近づけて目を輝かせた。
近すぎる。
彼女の髪から、いつもの夏の雨の匂いじゃなくて、ほんのり甘いシャンプーの匂いがして、俺は思わず一歩後ずさりした。
「……行くぞ」
「あ、照れた!顔赤いよ、橘くん!」
「赤くない。暑いだけ」
フイッと顔を背けて歩き出す俺の右腕に、和奏は躊躇いもなく自分の腕をぎゅっと絡めてきた。
細い腕の感触と、密着する肩の温もり。
俺の心臓がドクンと跳ね上がる。
常に真顔をキープしようと奥歯を噛み締めるが、耳の裏まで一気に熱くなっていくのが自分でも分かった。
「ちょっと、和奏。近すぎる。離せ」
「やーだ。デートなんだから、これくらい普通だし!ほら、今日の目的地はあっちだよ!」
和奏が指差したのは、駅から歩いてすぐの場所にある、巨大な観覧車がシンボルの遊園地だった。
ゲートに到着すると、和奏は「橘くんはそこで待ってて!」と言い残し、チケット売り場へタタタッと走っていった。
そして、二枚のフリーパスを手に満面の笑みで戻ってくる。
「はい、これが私たちの本日の通行証でーす!」
「おい、いくらだった。俺の分、払う」俺
が財布を取り出そうとすると、和奏はその手を両手でパチンと挟んで止めた。
「ノンノン!今日私の全おごり!橘くんは貯金マシーンなんだから一円も使っちゃダメ。お寿司もハンバーグも、この遊園地も、全部私が橘くんを笑顔にするための投資だからね!」
「……さすがに、それは申し訳なさすぎるって……」
「申し訳ないって思うなら、今日一日、私のわがままに全部付き合うこと!ほら、まずはあのアトラクションからいくよー!」
和奏は俺の腕を引っ張り、最初に向かったのは、園内でも一番の絶叫率を誇る大型ジェットコースターだった。
「ひゃっほーい!橘くん、生きてるー!?」
「……静かにしろ。死ぬかと思った」
駅前の噴水広場は、休日を楽しむ家族連れやカップルでごった返していた。
俺は黒いキャップキャップのひさしを少しだけ指で押し上げ、手元のスマホに目を落とす。
『橘くん、もう着いた? 私はね、あと三十秒で橘くんの後ろに出現しまーす!』
そんな意味不明なメッセージが届いた直後、背中にぽすん、と柔らかい衝撃が走った。
「じゃじゃーん!橘くん、お待たせ!今日の私は一味違うでしょ!」
振り返ると、そこにはいつもの制服姿ではなく、白いブラウスにブルーのデニムスカートを合わせた和奏が立っていた。
いつもより少しだけ大人っぽく、ポニーテールが元気に揺れている。
「……おう。待ってない。今着いたところだ」
「嘘だぁ。スマホの画面見てる橘くん、ちょっとソワソワしてたもん!っていうか、見て見て!今日の橘くん、拓海くんたちに選んでもらった服?すっごく格好いいじゃん!」
和奏は俺の私服(黒のパーカーにシンプルなジーンズ)を見るなり、限界まで顔を近づけて目を輝かせた。
近すぎる。
彼女の髪から、いつもの夏の雨の匂いじゃなくて、ほんのり甘いシャンプーの匂いがして、俺は思わず一歩後ずさりした。
「……行くぞ」
「あ、照れた!顔赤いよ、橘くん!」
「赤くない。暑いだけ」
フイッと顔を背けて歩き出す俺の右腕に、和奏は躊躇いもなく自分の腕をぎゅっと絡めてきた。
細い腕の感触と、密着する肩の温もり。
俺の心臓がドクンと跳ね上がる。
常に真顔をキープしようと奥歯を噛み締めるが、耳の裏まで一気に熱くなっていくのが自分でも分かった。
「ちょっと、和奏。近すぎる。離せ」
「やーだ。デートなんだから、これくらい普通だし!ほら、今日の目的地はあっちだよ!」
和奏が指差したのは、駅から歩いてすぐの場所にある、巨大な観覧車がシンボルの遊園地だった。
ゲートに到着すると、和奏は「橘くんはそこで待ってて!」と言い残し、チケット売り場へタタタッと走っていった。
そして、二枚のフリーパスを手に満面の笑みで戻ってくる。
「はい、これが私たちの本日の通行証でーす!」
「おい、いくらだった。俺の分、払う」俺
が財布を取り出そうとすると、和奏はその手を両手でパチンと挟んで止めた。
「ノンノン!今日私の全おごり!橘くんは貯金マシーンなんだから一円も使っちゃダメ。お寿司もハンバーグも、この遊園地も、全部私が橘くんを笑顔にするための投資だからね!」
「……さすがに、それは申し訳なさすぎるって……」
「申し訳ないって思うなら、今日一日、私のわがままに全部付き合うこと!ほら、まずはあのアトラクションからいくよー!」
和奏は俺の腕を引っ張り、最初に向かったのは、園内でも一番の絶叫率を誇る大型ジェットコースターだった。
「ひゃっほーい!橘くん、生きてるー!?」
「……静かにしろ。死ぬかと思った」



