「じゃじゃーん!お昼ご飯は、回るお寿司屋さんでーす!」
和奏が両手を広げて案内したのは、駅ビルの最上階にある、大人気の回転寿司チェーンだった。
店内は、家族連れやカップルの熱気と、皿がレーンを流れるカタカタという音、そして「へい、いらっしゃい!」という店員のいい声で溢れかえっている。
「……お前、生活保護の俺が、こんな贅沢できるわけないだろ。一皿150円でも、今の俺にとっては大金だ」
ボックス席に腰掛けながら、メニューのタッチパネルを睨みつける。
「何言ってるの、今日は私の奢りだってば!ほら、遠慮しないで好きなの頼んで?橘くん、ガリガリなんだから、マグロ50皿くらい食べなきゃダメだよ」
「死ぬだろ。誰がそんなに食うか」
「じゃあ、まずは私からね!えーっと、サーモン、炙りサーモン、チーズサーモン、あ、マヨサーモンも!」
「……どんだけサーモン好きなんだよ。熊かお前は」
俺がボソッと突っ込むと、和奏はタッチパネルを操作する手を止めて、嬉しそうに目を細めた。
「あ、橘くんがつっこんでくれた!嬉し!じゃあご褒美に、橘くんには光り物三種盛りね!」
「なんでだよ。意味分かんねえよ」
すぐに、レーンから新幹線型のトレイに乗って、お寿司が運ばれてきた。
和奏は「わあ、新幹線だー!」と、小学生のように目を輝かせてお皿を取っている。
周りの小さな子供よりもテンションが高い。
「ほら、橘くんも食べて食べて!」
和奏に急かされ、俺は渋々、一皿のマグロを手に取った。
醤油を少しつけ、口に運ぶ。
口の中で、冷たくて新鮮な脂がじゅわっと広がった。
「……うまい」
「でしょー!あ、私、次は茶碗蒸しと、デザートのミルクレープ頼も!」
「まだ寿司三皿しか食ってねえだろ。もうデザート行くのかよ。ペース配分バグってんのか」
「女の子の胃袋はね、宇宙とおんなじで無限大に広がってるの!」
和奏はそう言うと、運ばれてきた茶碗蒸しをフーフーとしながら、実においしそうに食べ進めた。
彼女のお喋りは、お寿司を食べている間も一瞬たりとも止まらなかった。
学校の担任の先生のモノマネをしてみたり、最近流行っているらしい動画のダンスを身振り手振りで説明してみたり。
俺は基本「ん」「まあ」「別に」としか返さなかったが、和奏はそれを寂しがるどころか、「今の『ん』は、同意ってことでいいよね!」と勝手にポジティブに解釈して、一人でゲラゲラと笑っていた。
静まり返ったあの家とは、正反対の空間。
「……ありがとな」
「え?何?ごめん、お寿司食べる音で聞こえなかった!」
「なんでもない。サーモン早く食えよ、レーンに詰まってんだろ」
「あわわ、大変!サーモン救出作戦、開始!」
お腹がいっぱいになったあと、和奏に引っ張られてやってきたのは、同じフロアにある巨大なガチャガチャ専門店だった。
見渡す限り、何百台ものガチャガチャの機械がズラリと並んでおり、カラフルなカプセルが壁一面を埋め尽くしている。
「見て見て橘くん!これ凄くない!?リアルすぎる!居酒屋の赤提灯マスコットだって!超エモい!」
和奏は一台の機械の前にしゃがみ込み、ガラス面をベタベタと触りながら大興奮している。
「……高校生が赤提灯手に入れてどうすんだよ。どこに飾るんだ」
「えー、通学カバンにつけるに決まってるじゃん!渋くてかっこいいよ?」
「絶対やめろ。他クラスの奴から橘の彼女、カバンに赤提灯ぶら下げて歩いてるぞって噂される俺の身にもなれ」
「え……」
和奏がピタリと動きを止めた。
彼女はゆっくりと立ち上がると、耳まで真っ赤に染めながら、上目遣いで俺を見つめてきた。
「……いま、私のこと、彼女って言った?」
「っ……!」
しまった、と言葉の綾に気づいた時には遅かった。
和奏が両手を広げて案内したのは、駅ビルの最上階にある、大人気の回転寿司チェーンだった。
店内は、家族連れやカップルの熱気と、皿がレーンを流れるカタカタという音、そして「へい、いらっしゃい!」という店員のいい声で溢れかえっている。
「……お前、生活保護の俺が、こんな贅沢できるわけないだろ。一皿150円でも、今の俺にとっては大金だ」
ボックス席に腰掛けながら、メニューのタッチパネルを睨みつける。
「何言ってるの、今日は私の奢りだってば!ほら、遠慮しないで好きなの頼んで?橘くん、ガリガリなんだから、マグロ50皿くらい食べなきゃダメだよ」
「死ぬだろ。誰がそんなに食うか」
「じゃあ、まずは私からね!えーっと、サーモン、炙りサーモン、チーズサーモン、あ、マヨサーモンも!」
「……どんだけサーモン好きなんだよ。熊かお前は」
俺がボソッと突っ込むと、和奏はタッチパネルを操作する手を止めて、嬉しそうに目を細めた。
「あ、橘くんがつっこんでくれた!嬉し!じゃあご褒美に、橘くんには光り物三種盛りね!」
「なんでだよ。意味分かんねえよ」
すぐに、レーンから新幹線型のトレイに乗って、お寿司が運ばれてきた。
和奏は「わあ、新幹線だー!」と、小学生のように目を輝かせてお皿を取っている。
周りの小さな子供よりもテンションが高い。
「ほら、橘くんも食べて食べて!」
和奏に急かされ、俺は渋々、一皿のマグロを手に取った。
醤油を少しつけ、口に運ぶ。
口の中で、冷たくて新鮮な脂がじゅわっと広がった。
「……うまい」
「でしょー!あ、私、次は茶碗蒸しと、デザートのミルクレープ頼も!」
「まだ寿司三皿しか食ってねえだろ。もうデザート行くのかよ。ペース配分バグってんのか」
「女の子の胃袋はね、宇宙とおんなじで無限大に広がってるの!」
和奏はそう言うと、運ばれてきた茶碗蒸しをフーフーとしながら、実においしそうに食べ進めた。
彼女のお喋りは、お寿司を食べている間も一瞬たりとも止まらなかった。
学校の担任の先生のモノマネをしてみたり、最近流行っているらしい動画のダンスを身振り手振りで説明してみたり。
俺は基本「ん」「まあ」「別に」としか返さなかったが、和奏はそれを寂しがるどころか、「今の『ん』は、同意ってことでいいよね!」と勝手にポジティブに解釈して、一人でゲラゲラと笑っていた。
静まり返ったあの家とは、正反対の空間。
「……ありがとな」
「え?何?ごめん、お寿司食べる音で聞こえなかった!」
「なんでもない。サーモン早く食えよ、レーンに詰まってんだろ」
「あわわ、大変!サーモン救出作戦、開始!」
お腹がいっぱいになったあと、和奏に引っ張られてやってきたのは、同じフロアにある巨大なガチャガチャ専門店だった。
見渡す限り、何百台ものガチャガチャの機械がズラリと並んでおり、カラフルなカプセルが壁一面を埋め尽くしている。
「見て見て橘くん!これ凄くない!?リアルすぎる!居酒屋の赤提灯マスコットだって!超エモい!」
和奏は一台の機械の前にしゃがみ込み、ガラス面をベタベタと触りながら大興奮している。
「……高校生が赤提灯手に入れてどうすんだよ。どこに飾るんだ」
「えー、通学カバンにつけるに決まってるじゃん!渋くてかっこいいよ?」
「絶対やめろ。他クラスの奴から橘の彼女、カバンに赤提灯ぶら下げて歩いてるぞって噂される俺の身にもなれ」
「え……」
和奏がピタリと動きを止めた。
彼女はゆっくりと立ち上がると、耳まで真っ赤に染めながら、上目遣いで俺を見つめてきた。
「……いま、私のこと、彼女って言った?」
「っ……!」
しまった、と言葉の綾に気づいた時には遅かった。



