週明け。
昇降口へ行く途中、宏弥に高城とのことを話した。
高城に、練習はもう終わりだと言ったこと。勝手に決められたのが腹立たしかったこと。あいつが何を考えているのか、結局よく分からなかったこと。
宏弥は口を挟まず、弓袋を肩にかけて歩いていた。
全部聞き終えると、少し考えてから言う。
「それ、ちゃんと言ったほうがいいんじゃない?」
「言った。練習は終わりだって」
「それは怒った勢いで言っただけでしょ」
余計なところだけ鋭い。
「慧介が悪かったって話じゃなくて、侑ちゃんがこれからどうしたいか」
「それが分からないから困ってるんだろ」
「分からないってことも、そのまま言えばいいじゃん」
校舎の角を曲がると、風が吹き抜けた。
「勝手に答えを決められるのが嫌だったんでしょ。だったら、まだ決められないことも含めて、自分で決めるって言わないと」
宏弥は肩にかかった弓袋を持ち直すように、わずかに揺した。
「的を見ないで怒ってても当たらないよ? 慧介本人に言わないと」
「……」
「弓は離したあとも、矢が届くまで見る。言葉も同じ。投げて終わりにしたら、どこへ刺さったか分かんない」
「たまに全国優勝者みたいなこと言うな」
「実際そうなんだけど」
宏弥は笑った。
「矢だって、放しただけじゃ終わりじゃないからね。どこに届いたかまで見ないと」
「結局、弓の話にするんだな」
「分かりやすいでしょ」
分かりやすいのが、少し腹立たしい。
高城に何を言いたいのか、まだうまく言葉にはできない。
けれど、あのままで終わらせたくないことだけは分かった。
◇
翌朝、昇降口の掲示板に新しい紙が貼られていた。
陸上競技県大会出場者。
百メートル、高城慧介。来週日曜、午後二時。県総合運動場。
誰かに誘われたわけではない。八代も、有川も、宏弥も、見に行けとは言わなかった。
俺はスマホを出し、日程を予定へ入れた。
走りたいのかは、まだ分からない。
陸上部に入るかなんて、もっと分からない。
でも、高城が走るところを見たい。
そのあと、あいつに言いたい。俺が分からないまま考えることも、走るか走らないかを決めることも、全部俺のものだと。
そして、もしもう一度隣を走るなら、それも俺が選ぶ。
来週の日曜、県総合運動場へ行く。
誰にも頼まれていない。
俺が、そうしたいからだ。
昇降口へ行く途中、宏弥に高城とのことを話した。
高城に、練習はもう終わりだと言ったこと。勝手に決められたのが腹立たしかったこと。あいつが何を考えているのか、結局よく分からなかったこと。
宏弥は口を挟まず、弓袋を肩にかけて歩いていた。
全部聞き終えると、少し考えてから言う。
「それ、ちゃんと言ったほうがいいんじゃない?」
「言った。練習は終わりだって」
「それは怒った勢いで言っただけでしょ」
余計なところだけ鋭い。
「慧介が悪かったって話じゃなくて、侑ちゃんがこれからどうしたいか」
「それが分からないから困ってるんだろ」
「分からないってことも、そのまま言えばいいじゃん」
校舎の角を曲がると、風が吹き抜けた。
「勝手に答えを決められるのが嫌だったんでしょ。だったら、まだ決められないことも含めて、自分で決めるって言わないと」
宏弥は肩にかかった弓袋を持ち直すように、わずかに揺した。
「的を見ないで怒ってても当たらないよ? 慧介本人に言わないと」
「……」
「弓は離したあとも、矢が届くまで見る。言葉も同じ。投げて終わりにしたら、どこへ刺さったか分かんない」
「たまに全国優勝者みたいなこと言うな」
「実際そうなんだけど」
宏弥は笑った。
「矢だって、放しただけじゃ終わりじゃないからね。どこに届いたかまで見ないと」
「結局、弓の話にするんだな」
「分かりやすいでしょ」
分かりやすいのが、少し腹立たしい。
高城に何を言いたいのか、まだうまく言葉にはできない。
けれど、あのままで終わらせたくないことだけは分かった。
◇
翌朝、昇降口の掲示板に新しい紙が貼られていた。
陸上競技県大会出場者。
百メートル、高城慧介。来週日曜、午後二時。県総合運動場。
誰かに誘われたわけではない。八代も、有川も、宏弥も、見に行けとは言わなかった。
俺はスマホを出し、日程を予定へ入れた。
走りたいのかは、まだ分からない。
陸上部に入るかなんて、もっと分からない。
でも、高城が走るところを見たい。
そのあと、あいつに言いたい。俺が分からないまま考えることも、走るか走らないかを決めることも、全部俺のものだと。
そして、もしもう一度隣を走るなら、それも俺が選ぶ。
来週の日曜、県総合運動場へ行く。
誰にも頼まれていない。
俺が、そうしたいからだ。



