テーブルの前に用意しておいた座布団に、土岐くんがちょこんと座る。
か、かわいい。
彼がいるこの空間は、少しの緊張と、やわらかな癒しに包まれていた。やっぱり土岐くんって癒し系だよね。
彼の前に淹れたてのお茶をそっと差し出し、私も隣に座る。
「ど、どうぞ」
「あ、ありがとう」
それきり、また静かになる。
その緊張を破るように、土岐くんがひと口お茶を飲んだ。
「うん、おいしい」
にこりと微笑まれて、ドキッと心臓が跳ねる。
「そ、そう。ありがとう」
……なんなんだ、この単調なやり取りは。果てしなく緊張する。
さっきはちょっと和らいだかと思ったのに、やっぱりダメ。
彼のことを意識しまくり。その原因もわかってる。
好きって、ちゃんと意識しちゃったから。
初めてこんなに好きって思える人ができたんだもの。しょうがないじゃない。
恋ってこんなに落ち着かないものなの?
ちらりと見ると目が合う。
激しく動揺するのに、なぜか目が離せなかった。
土岐くんが小さく微笑む。
「あの……それで、話って」
はっとする。
そうだ、肝心なことを忘れるところだった。これを言うために彼を呼んだんじゃない。
「あの、あのね……私、桐生さんとお別れしたの」
「え?」
土岐くんの目がまん丸に見開かれた。
「桐生さん、優しくてさ。勝手な言い分を快く受け入れてくれたんだ。
ほんと、感謝しかないよ」
俯きながら囁くように言った声は、どうしても震えてしまう。
まだ心の整理がついていない。彼を傷つけてしまったことが、苦しくてせつなかった。
「それって……」
驚いて言葉を詰まらせる彼に、私は微笑んだ。
「うん、そうなんだ。私、土岐くんが好き。やっと、自分の気持ちに気づいたの」
土岐くんは固まったまま、ぴくりとも動かなくなってしまった。
大丈夫かな、と顔を覗き込んだそのとき――
力強く引き寄せられ、そのまま腕の中にぎゅっと抱きしめられる。
「ほんとう? 本当に、僕でいいの?」
喜びに溢れた声。
あたたかな体温に包まれながら、私はそっと頷いた。
「うん、土岐くんがいいの」
土岐くんは腕を緩め、じっと見つめてくる。
「し、信じられないよ。夢みたい。だけど……桐生さんのことは」
驚きと嬉しさが入り混じった表情。その目にはうっすらと涙が滲んでいる。
「うん。桐生さんのことも好きだった。その気持ちは嘘じゃない。
でも……それ以上に、土岐くんのことが好きだって気づいたの」
ああ、恥ずかしい。視線を合わせられない。
「土岐くんは、いつも傍にいてくれた。
悲しい時も、苦しい時も、悩んでいる時も、いつも相談に乗ってくれて」
はじめは、仲のいい友達みたいに思ってた。親友みたいな存在。
土岐くんは泣きそうな表情で、私を見つめていた。
「私、土岐くんといると幸せなの。心があたたかくなって安心する。
いつもありのままでいられた。ずっと一緒にいたいって、思ったの」
彼の目から涙が一筋落ちていく。
私はそっと頬に手を伸ばし、指先でやさしくその涙を拭った。
「私ね。ふたりから告白されて、すごく迷った。今まで恋愛なんてしたことなかったし、告白されたことすら初めてだったから。
桐生さんや土岐くんみたいに素敵な男性ふたりからなんて……びっくりしすぎて、どうしていいかわからなかったよ」
ふふっと笑うと、彼の表情もつられるように和らいだ。
すべては最近のことのはずなのに、昔の出来事みたいに思える。
「たくさん、たくさん悩んで、答えにたどり着いたの。
私が好きなのは、一緒にいたいって思うのは、
あなただって」
熱を込めて見つめると、彼もまっすぐ私を見返してきた。
視線を受け止めているうちに、体がじんわり火照ってくる。
きっと、顔は真っ赤になってる。
「うれしいよ。正直、もう無理かと思ってたから。
今日も、桐生さんと楽しそうに話している君の姿を見て……すごく悲しくて。
これからは、また前と同じように友達として接しないとなって、自分に言い聞かせてたんだよ」
照れたように笑う彼が愛おしくて、胸がいっぱいになる。
「土岐くん……今まで私のことを支えてくれて、ありがとう。
大好きだよ。これからも、よろしくね」
「僕の方こそ、よろしくお願いします。望月さん……ううん」
一度言葉を切り、深く息を吸う。
「花音さん。大好き、愛してる」
その声が、言葉が、胸の奥にやさしく浸みこんでいく。
彼の手が私の頬に添えられ、顔がゆっくり近づいてくる。
瞳を閉じた。
ふわりと触れる、やさしい口づけ。
それは一瞬ですぐに唇は離れる。目を開けると、彼は遠慮がちに視線を彷徨わせていた。
もっとほしい。自然にそう思えた。
今度は、私からそっと触れる。
土岐くんは驚いた顔をしたけど、すぐに嬉しそうに笑って、今度は深く口づけてくれた。
――恋なんてわからない。
それから始まった、私の恋。
桐生さんという素敵な男性に出会って、恋をした。
あれも、きっと恋。
でも、それより深い想いを知った。
それは、愛というものなのかもしれない。
目が合うと、土岐くんがふわりと笑う。
心があたたかくなって、鼓動が優しい音を奏でる。
ああ、幸せ。
やっと見つけた、私のほんものの恋。いや、愛。
か、かわいい。
彼がいるこの空間は、少しの緊張と、やわらかな癒しに包まれていた。やっぱり土岐くんって癒し系だよね。
彼の前に淹れたてのお茶をそっと差し出し、私も隣に座る。
「ど、どうぞ」
「あ、ありがとう」
それきり、また静かになる。
その緊張を破るように、土岐くんがひと口お茶を飲んだ。
「うん、おいしい」
にこりと微笑まれて、ドキッと心臓が跳ねる。
「そ、そう。ありがとう」
……なんなんだ、この単調なやり取りは。果てしなく緊張する。
さっきはちょっと和らいだかと思ったのに、やっぱりダメ。
彼のことを意識しまくり。その原因もわかってる。
好きって、ちゃんと意識しちゃったから。
初めてこんなに好きって思える人ができたんだもの。しょうがないじゃない。
恋ってこんなに落ち着かないものなの?
ちらりと見ると目が合う。
激しく動揺するのに、なぜか目が離せなかった。
土岐くんが小さく微笑む。
「あの……それで、話って」
はっとする。
そうだ、肝心なことを忘れるところだった。これを言うために彼を呼んだんじゃない。
「あの、あのね……私、桐生さんとお別れしたの」
「え?」
土岐くんの目がまん丸に見開かれた。
「桐生さん、優しくてさ。勝手な言い分を快く受け入れてくれたんだ。
ほんと、感謝しかないよ」
俯きながら囁くように言った声は、どうしても震えてしまう。
まだ心の整理がついていない。彼を傷つけてしまったことが、苦しくてせつなかった。
「それって……」
驚いて言葉を詰まらせる彼に、私は微笑んだ。
「うん、そうなんだ。私、土岐くんが好き。やっと、自分の気持ちに気づいたの」
土岐くんは固まったまま、ぴくりとも動かなくなってしまった。
大丈夫かな、と顔を覗き込んだそのとき――
力強く引き寄せられ、そのまま腕の中にぎゅっと抱きしめられる。
「ほんとう? 本当に、僕でいいの?」
喜びに溢れた声。
あたたかな体温に包まれながら、私はそっと頷いた。
「うん、土岐くんがいいの」
土岐くんは腕を緩め、じっと見つめてくる。
「し、信じられないよ。夢みたい。だけど……桐生さんのことは」
驚きと嬉しさが入り混じった表情。その目にはうっすらと涙が滲んでいる。
「うん。桐生さんのことも好きだった。その気持ちは嘘じゃない。
でも……それ以上に、土岐くんのことが好きだって気づいたの」
ああ、恥ずかしい。視線を合わせられない。
「土岐くんは、いつも傍にいてくれた。
悲しい時も、苦しい時も、悩んでいる時も、いつも相談に乗ってくれて」
はじめは、仲のいい友達みたいに思ってた。親友みたいな存在。
土岐くんは泣きそうな表情で、私を見つめていた。
「私、土岐くんといると幸せなの。心があたたかくなって安心する。
いつもありのままでいられた。ずっと一緒にいたいって、思ったの」
彼の目から涙が一筋落ちていく。
私はそっと頬に手を伸ばし、指先でやさしくその涙を拭った。
「私ね。ふたりから告白されて、すごく迷った。今まで恋愛なんてしたことなかったし、告白されたことすら初めてだったから。
桐生さんや土岐くんみたいに素敵な男性ふたりからなんて……びっくりしすぎて、どうしていいかわからなかったよ」
ふふっと笑うと、彼の表情もつられるように和らいだ。
すべては最近のことのはずなのに、昔の出来事みたいに思える。
「たくさん、たくさん悩んで、答えにたどり着いたの。
私が好きなのは、一緒にいたいって思うのは、
あなただって」
熱を込めて見つめると、彼もまっすぐ私を見返してきた。
視線を受け止めているうちに、体がじんわり火照ってくる。
きっと、顔は真っ赤になってる。
「うれしいよ。正直、もう無理かと思ってたから。
今日も、桐生さんと楽しそうに話している君の姿を見て……すごく悲しくて。
これからは、また前と同じように友達として接しないとなって、自分に言い聞かせてたんだよ」
照れたように笑う彼が愛おしくて、胸がいっぱいになる。
「土岐くん……今まで私のことを支えてくれて、ありがとう。
大好きだよ。これからも、よろしくね」
「僕の方こそ、よろしくお願いします。望月さん……ううん」
一度言葉を切り、深く息を吸う。
「花音さん。大好き、愛してる」
その声が、言葉が、胸の奥にやさしく浸みこんでいく。
彼の手が私の頬に添えられ、顔がゆっくり近づいてくる。
瞳を閉じた。
ふわりと触れる、やさしい口づけ。
それは一瞬ですぐに唇は離れる。目を開けると、彼は遠慮がちに視線を彷徨わせていた。
もっとほしい。自然にそう思えた。
今度は、私からそっと触れる。
土岐くんは驚いた顔をしたけど、すぐに嬉しそうに笑って、今度は深く口づけてくれた。
――恋なんてわからない。
それから始まった、私の恋。
桐生さんという素敵な男性に出会って、恋をした。
あれも、きっと恋。
でも、それより深い想いを知った。
それは、愛というものなのかもしれない。
目が合うと、土岐くんがふわりと笑う。
心があたたかくなって、鼓動が優しい音を奏でる。
ああ、幸せ。
やっと見つけた、私のほんものの恋。いや、愛。



