1ミニッツ短編集ボックス

 「ティロリン」と、誰が作ったとも分からないあの音が、頭の中で鳴り響いた。
おや、もうそんな時期か。
 自分のスキルカードを確認すると、「大学3年生」の文字がゆらゆらと揺れ、
その下に新しい選択肢がポップアップのように浮かび上がった。

「さて、どっちに行こうかな」

 僕は脳内の“スキルツリー”へアクセスし、
次に取得できるスキルをざっと見渡す。

「……うーん、微妙だなぁ」

 そう呟きながら、なんとなく気になっていた映画を再生した。

 しばらくすると「テレレ」。
またツリーにアクセスすると、新しいスキルが追加されている。

 それでも、どうしても「これだ!」と思えるものがない。

 映画の次は漫画。
その後は小説を読んで、最後に友人と飲みに出かけた。

 その間にも「テレレ」「テレレ」と通知音が鳴り、
僕のスキル選択肢はどんどん増え続けた。

 思い返せば学生時代はずっと、
このスキルツリーを“伸ばすこと”ばかりを優先してきた。
勉強しても、部活しても、恋をしても、
とにかく成長の音が鳴ることだけを指標にしていた。

 でもね。
僕はひとつ、大事な前提を忘れていたんだ。

「スキルを取るには、“経験値”がいる」ってことを。