1ミニッツ短編集ボックス


スクラップを集めれば集めるほど、胸の奥がざらついていく。
結果だという人もいるし、努力の証だという人もいる。
でも本当のところ、それはただの寄せ集めで、
“輝きの代わりに積み上がった重さ” なのだと、私はとうの昔に気づいていた。


ポチポチとスマホを叩きながら、
安っぽい感動や、いらないつながりや、
心を曇らせるノイズをスクラップのように抱え込む毎日。
量だけはやたら増えていく。それを誇りのように扱って生きている。

そんな生活に、私は静かに疲れていった。

「……もう、いいかな」

ある夜、ふと気づくと私は 荷物をまとめて駅へ向かっていた。
人知れず姿を消すつもりだった。
誰にも気づかれず、そっといなくなろうとしただけなのに――

駅前の広場には、いるはずのない人たちがいた。

「……どうして」

胸の奥がざわつく。
荷物が、急に重くなる。

私はスマホを手に取った。
そこから伸びる“見えないコード”が、自分の頭の奥に繋がっていて、
私の意志とは関係なく、言葉や反応が世界へ発信されていた。

逃げるつもりで歩き出したはずなのに、
気づけば、私の一挙手一投足を誰かが見つけている。

「……そうか」

知らず知らずのうちに、スクラップを抱えすぎていたんだ。
自分でも制御できないほどに。

涙がじわりと滲んで、でもなぜか笑えてきた。

「もう私は、一人で静かにいなくなることすらできないんだね」

荷物を持ち直し、私は駅の灯りの下に立った。
集めすぎたスクラップの代償を払いながら——
これからも生きていくしかないのだ。