1ミニッツ短編集ボックス

「はい、次の方どうぞー」

 この会社に勤めて五年。仕事内容はいたってシンプルだ。
これから生まれてくる子ども、そして子どもを迎える予定の家庭に“チケット”を配り、
組み合わせを決めるための抽選をしてもらう――ただそれだけ。

 子どもは授かりもので、親はそれぞれの思いで家族を望む。
その根本に手を出すことは、私たちの仕事ではない。
担当するのはただ一つ。

「どの子が、どの家庭へ行くのか」

 それを整えるだけだ。

 ただ、ここ数年は“相談”が増えている。

「想像していたタイプの子じゃなかった」
「こんなに環境の差があるなんて思わなかった」
「もっと別の地域に生まれたかった」
「こういう性格がよかったのに」

……挙げればきりがない。

 昔はこんな声は少なかったらしい。
きっと、気づかなかったのだ。
自分たちの組み合わせが“抽選”によって選ばれていたことに。

 今は違う。
SNSが広がり、誰もが誰かと簡単につながれる。
となれば当然、比較も生まれる。

「最近さ、“もっとレベルの高い家族を希望します”って相談、増えてるよね」

「まあ、自分のところには“理想の子ども”が来てほしい、って気持ちは分かるけどね」

 私は紙コップのコーヒーを一口飲み、窓の外を見上げた。

「でもさ、いい結果がほしいなら、それなりの準備が必要ってことに
気づかないといけないんじゃない? 抽選だって、タダじゃないんだし」

 同僚はくすくす笑って肩をすくめた。

「それを分かってもらうのが、一番むずかしい仕事なのよね」