1ミニッツ短編集ボックス

 RPGをクリアして世界に平和が戻る。けれど、僕はクリア後のマップをうろついて、使われていないダンジョンの隅をつい覗いてしまう。
「まだ何か、続きがあるんじゃないか」。
きっと、そんな経験をした人は少なくないと思う。

 でも物語はもう終わっている。目的は達成されて、勇者としての僕の役目も終わった。

 深夜、電車の窓に自分の姿が映った。スーツを着て、吊革につかまって、明日もあさっても同じ時間に家を出る。
思い描いていた未来は、こんな景色じゃなかった。
もっとキラキラしていて、もっと特別で――そんなふうに思ったことは、正直ある。

 スマホに視線を落とす。そこにはステージで笑っている人たちが映っていた。

「応援してください! 私たちは“夢の続きを”お届けします!」

 そんなキャッチコピーが目に飛び込んできて、胸のどこかがざわついた。
**“夢の続きが買える”**と考えた途端、なぜか財布の紐が緩む。
もう自分の番はとうに過ぎてしまって。
会社という大きな歯車には命を懸けているのに、肝心の自分自身の人生には、ほとんど賭けてこなかった。

 もし目の前に「賭けたくなる誰か」が現れたら――そりゃあ賭けたくもなるだろう。

 その日から僕は“どこかの誰か”に賭けるようになった。
動画を見て、ライブに通って、グッズを手に入れて。
追いかけて、追いかけて、ただその先を見たくて。

 ――そして、二年後。
その人は突然、僕の前から消えた。

 売られていたのは「夢の続き」なんかじゃなかった。
僕が買っていたのも「昔の続き」じゃなかった。

 ただ単に――
“見たくなかった未来”を買っていただけだった。