1ミニッツ短編集ボックス

 僕はずっと「世界の隙間」というものを見てみたかった。
街に出かければどこかに開いているんじゃないかと思って。
けれど探しても、それらしい隙間は見つからなかった。

 ある日、本棚の本を引き抜いた瞬間、
本と本の間に、小さな隙間ができた。

 ――ああ、世界の隙間って、探すものじゃなくて
 “自分でつくる”ものなのかもしれない。

 そんなことを考えながら日々を過ごしていた頃、
電車で座席のあいだに、誰も座らない小さな隙間を見つけた。
次の駅が来ても、また次の駅でも、その隙間は空いたまま。

 じっと見つめていると、脇腹を肘でつつかれた。
振り向くと、あまり仲のよくなかった高校の同級生がいた。
「おい、あそこ空いてるぞ。座らないのか?」

「うん……なんとなく、いやなんだ」

「じゃ、俺が座るわ」

 彼は何のためらいもなく、その隙間に腰を下ろした。
僕が見つけた“世界の隙間”を埋めたのは、
特に親しくもなかった同級生で、
そして彼はスマホを眺めたまま僕を見ようともしなかった。

 その瞬間、僕はまたひとつ気づく。

 ――隙間って、人と人のあいだにもあるんだ。
 しかも、思っている以上に、そこらじゅうに。