四畳半、煙草の煙、火曜日の少女 〜これは、二人だけの秘密だよ〜

 当時の私は孤独でした。
 あの人は、そんな私に優しい手を差し伸べてくれました。
 私だけの特別な場所と時間を与えてくれました。
 私は、あの人に救われました。
 それは、あの人の善意だったのだと思います。
 あの人は、私を傷つけるつもりなんてなかったのだと思います。
 きっと、本当に。

 でも。

 あの頃の私は、あの人の言葉ひとつで世界の形が変わってしまうほど、まだ小さな視野で生きていました。
 あの人にとっては、ほんの気まぐれや、通り雨のようなひとときだったかもしれません。
 しかし、当時の私にとって、あの人は世界のすべてでした。

「二人だけの秘密だよ」

 その言葉を聞いた瞬間から、私は少しずつ、あの人の世界だけを見つめるようになっていったのだと思います。
 空の星のように、いつかは消えてしまうものだとしても、その時の私は、その光だけが永遠だと信じて疑いませんでした。

 今の私は、あの頃より少しだけ大人になりました。
 だから、わかります。
 あの人がしたことの意味も。
 そして、あの時の私が失ったものの痛みも。