自殺を阻止された俺は、小説を書く楽しみを覚える。

 結局俺が学校に着いたのは、10時半だった。二時間目の途中に俺は汗をたらしながら入ってきた。
 衆目の視線にさらされ、恥ずかしい。
 だけど、その中で唯一佐久間が俺に手を振ってくれた。

 『なんで、遅刻したんだ?』
 『言うまでもないだろ』
 『なるほどね某か』
 『ん、ある意味正解』

 俺はそう返して見せた、

 『大丈夫。ちゃんと出来たから』

 俺はそう送った。
 俺は紙にしか書いていない。だから、今すぐには見せられない。
 だけど、部活の時に、佐久間の言葉への返答小説を見せてやる。

 結局その日、授業にはそこまで集中することが出来なかった。

 せっかく遅刻してまで学校に行ったのにな、って思う。だけど、授業自体はちゃんとノートにメモとして取ってあるから、無駄な時間ではなかったと思う。
 そして、運命の時か来ることとなった。
 俺は今から返答小説を佐久間に見せる。

 原稿用紙100枚分になった。つまり、4万字近くも書いたことになる。
 つくつぐ俺の集中力はどうなってるんだよ、なんてツッコんであげたい。セルフツッコみだ。
 だけど、それも早く見せるためだ。


 俺には今までまともにはまったものは無かった。そんな俺が初めてはまったのが、小説だったんだ。

 それを、俺の半生と共に見せつけてやる。






 そして、部活の時間がやってきた。オレはすぐに部誌杖hと言った。
 すると、

 「待ってたぞ」

 そう言って佐久間が椅子に座っていた。
 今から佐久間に見せないとな、と思いながら。

 緊張感高まる空間で、俺は小説の束を背中のスクールリュックから取り出した。

 「これを読んで欲しい」

 俺は言った。そのことばに、佐久間は唾をのんだ。

 「すぐに読み終えられるかは分からんが、読んでみる」

 そう言って佐久間はページに手を付けた。


 ★

 俺は、小説の束を見て、驚いた。こんなに書くというのには相当な時間がかかったはずだ。
 俺は、一日に5000字かけたことがない。だけどここにあるのは4万字ありそうな分量なのだ。

 とりあえず、一ページ目を読み始める。前と一緒だ。絶望から始まっている。
 彼の絶望を感じる。

 親が自分のせいで心で、その後父親にも責められて。
 この前の彼の初めての小説に比べても、だいぶ技術が上がっているから、仲の闇が大きく奈tぅている。心の絶望を上手く表現できている。まだまだ、目の前には積み重なっているが、俺は丁寧に読まなければならないと感じた。


 「悪い、今日一日で読み終わらねえかもしれねえ」
 「それでもいいよ。家で読んでくれたら:
 「それにしても、良くもここまで多くの分量を書いたな」
 「暇だったからな」

 暇とは言うが、大変だったのはこの小説を読んでいたらよくわかる。俺はまた次のページに手をかけていく。


 そして父親もまた死に、孤独にあえいだという事が書かれてあった。正直読むのが辛いという気持ちもある。だけど、俺はこれを読み切らなくてはならないと、感じている。


 またページを開いていく。
 そこからは、絶望が続いていき、読んでいる俺も辛いと感じ始める。

 俺は小説には感情を込めたほうがいいと思っているが、それでもこれはあk上接種過ぎて俺まで鬱になってもおかしくない。

 そして、またページを開いていく。
 開いて、
 開いて、
 開いて、

 兎に角たくさん読み続けていく。




 そして、ようやく絶望が満ちて、自殺を選ぼうかと言うシーンに入ってきた。


 やはりあれは死を選ぼうとしていたのか、本当に危なかった、と思う。
 あそこで死なれてたら、俺はどうすりゃいいんだ。


 ほんとうに救えてよかったな、なんて思う。

 救えてなかったら俺が絶望していたところだ。

 そこまで読んだところで一日目は終わった。ここまでで既に40枚あったから、時間的にはそんなものか。

 「じゃあ、明日にしていいか。明日の部活までには呼んで来るから」
 「分かった」

 彼は頷いた。俺はそれに納得し、

 家へと帰った。

 ★

 くっそ、緊張した。なんなんだよ。人に読んでもらうって、それを傍目に眺めるって、正直めちゃくちゃ恥ずかしかった。
 死ぬかと思うくらいだった。
 くそ、あんなに恥ずかしいのかよ。

 俺は、帰り道何を話したか、なんて正直おぼえていない。だけど、その中で佐久間は感想を言っていなかった。
 佐久間が俺を好いているのは知っている。だから、変に思われないとは思っている。だけど、それでも怖い物は怖い。その気持ちにj変化なドどこにもないのだ。


 別れた後、俺は不安の渦中に飲み込まれていた。何をすれば安心なのかもわからず、ただただベッド上で項垂れていた。

 「佐久間もこんな気持ちだったのかな」

 なんて、思う。
 きっと不安だったに違いない。何しろ、返事待ちに時間がかかってしまうのだから。

 そして、



 俺はいてもたまらず、とりあえずベッドに横になる事に決めた。
 今日は寝不足だ。だから、もう寝てしまおうと思ったのだ。


 ★


 「よくも、私を殺したな!! 」


 叫び声が聴こえる。そこには、血みどろの姿となった母さんがいた。車に跳ねられ、見るも無残な姿だ。その姿を見て、俺は「ひっ」と、思わず言った。
 怖い怖い。なんなんだ、怖い。

 「私はあんたを産まなければよかった。そしたら、幸せだったのに」

 幸せだった。そうだ、俺が母さんを不幸にしてしまったみたいなものだ。

 「あんたがわたしを不幸にしたんだ。この恨み。許さない、許さない。絶対に許さない!!」

 そして、父さんも一歩ずつこちらへと歩いてくる。

 「よくも俺の愛する人を奪ったな、この愚息よ。お前の存在は害だ。お前は俺たちの敵だ。俺たちに近づくな」

 何を言っているんだ。父さん。酷いよ。なんで、そんな事を。

 だけど、そうじゃないか。
 思えば僕は死われて当然の人間じゃないのか?

 僕は家族に対して害しか与えていない。僕は要するにクズでしかないんだ。

 「父さん、母さん」



 僕は今凄く泣きたい。泣いてもう現実から逃げてしまいたい。だけど、それもそれも無理なのだろう。

 やばい、辛いな。死にたいな。死にたい。





 ★


 「っはあ」

 入れは目を覚ました。今俺は何を思っていた。

 死にたい?

 なんで、そんな。いや、あの夢を見たからか。
 死んでいい事があるわけが無いのに。

 くそっ、どうしてしまったんだ俺は。
 明らかにおかしい。


 俺の心がナイーブになっているから、それしかない。

 ああ、俺はだめだ。





 その時スマホに通知が来た。

 『読み終わった』

 そう、通知が来た。

 今は5時。だけど、徹夜して呼んでくれたのか。

 俺はこれにどう返せばいいだろうか。

 そんなことを考えていると、

 『俺の気持ちに応えてくれて嬉しい』

 そう、返事が来た。

 俺は、そう是と言う答えを示した。

 勿論、佐久間の告白に対してだ。

 正直その答えを出すには葛藤をした部分がある。だけど、俺は答えたいと思ったのだ。
 俺にとって今一番大事な人間は佐久間だし、

 それに、俺は佐久間と一緒に居たい。

 『それで、唐突だが、放課後にお前の家に来ていいか?』

 唐突だな、と思った。
 だけど、全然かまわない。そう思い、

 『大丈夫だよ』

 そう返事を返したのだった。


 そして今日は部活をさぼり、放課後招待する事となった。

 「まずはお礼を言いたい」

 そう言って佐久間は俺に頭を下げる。

 「お礼なんて、いらないよ」

 俺は言った・

 それに、

 「お礼を言うなら、こっちの方だよ。俺みたいな価値のない人間を好きになってくれて」
 「まだ、そんな事を言ってるのか?」

 俺は、壁ドンをされた。

 「次そんな事言ったら許さねえからな」

 その言葉を聞いて、俺はひぇ
 と言った。


 「さてと、今日はお前を愛でたいとも思ってる」

 そして、頬を触られる。


 「だけど、俺の好きはそれだけじゃない。今日は一つだけ話したいことがある」
 「何でしょうか」
 「合作しないか?」

 「合作?」

 どう言う意味だろうか。
 俺が戸惑っていると、

 「要するに二人で一つの小説を書こうという花sだ」
 「二人で……」
 「そのテーマはもう考えてある。実話小説。まあ私小説と言われるやつだな」
 「なるほど」

 意味が分かった。

 「俺は俺の感じたことを、お前はお前の感じたことを書いてくれ。それを発表してやる」
 「それは良いね」
 「だけど、その内容は少し過激になるかもな」

 そう言って舌を出した。
 俺の知らない佐久間の一面だ。
 いや、もう佐久間じゃなくて、亨と言うべきだろうか。


 「分かった。まずはどうしたらいい?」
 「そうだな」

 そして、

 「で、やる事がこれかよ」

 俺は言った。

 「まあな。官能的な物は書かないし、そういうのはやるつもりはない。だから、いまするのはこれだ」

 それは、ゲームだ。
 彼が、亨が家から持ってきたのだ。

 「だからってこれっていうのもな」
 「いいじゃないか。友達いなかったんだろ」
 「うっ、まあそうなんだけど」
 「だったら、こういうのも楽しいだろ」

 亨のペースに巻き込まれている気がする。たぶんそれは気のせいとかじゃなくて、確実に、だ。


 「まあ、楽しいけど」

 俺が渋々そう返すと、嬉しそうに彼は「だろっ!!」と言った。
 その日から、部活の代わりに彼と一緒に遊ぶことが増えて行った。

 一緒に遊びそれを日記として小説に纏めていく。
 そして、個人での執筆も繰り広げてきた。

 その中で俺たちはさらに仲良くなり始め、最初はしてこなかった、恋人らしい行為も増えてきた。

 そして――

 「遊園地か」

 俺はそう呟いた。今回連れてこられた場所は、遊園地だ。


 「俺たちの共働合作のしめはここっうう訳か」
 「その通りだ」そう言って彼は笑う。

 文化祭まで日はそこまでない。その中で二人一緒に遊び、小説を完成させようという狙いなのだろう。その狙いに乗っかってやる、と俺は思った。


 遊園地、そこはとにかく楽しかった。
 俺自身、亨と行く遊園地に憧れていたのかもしれない。
 あれから変な夢を見る事はすっかりと無くなったし、自分の事が嫌いになる事もかなり減った。
 それは良い事なのだろうと、思う。
 俺は、自分の事を嫌いになりたくなんてなかったのだから。

 きっと亨のおかげなのだろう。

 俺はひたすらに遊びつくした。

 その中で楽しかった。

 それを俺は感じつくした。


 「完成したな」


 そして、俺たちは完成した小説の前で唾をのんだ。無事に完成した。

 「ああ」

 俺は頷いた。だけどその中で俺は亨の小説を読めていない。
 彼はどのような感じで小説を書いて見せたのか。
 それが正直なところ気になる所だ。


 「なあ、第一読者になっていいか?」

 俺が訊くと、

 「勿論」

 そう言って彼は笑った。

 「ありがとう」

 俺は言って、彼の小説に手を付けた。
 最後完成させたのは亨だ。
 ちなみにだが、一応亨と恋人になった後、幽霊部員にもあった。

 女子と男子一人ずつだったが、二人共俺を歓迎してくれた。
 そんな二人が書いた小説もここにも書かれてある。

 其れもまた読むのが楽しみだと、「思った。
 俺は、とにかくそれを読み続ける。

 結果的にはhyぁクページ近くの小説となっている。

 俺は少しずつ読んでいく。それを亨は眺めている。
 その小説は読んでて面白い物だった・俺視点と亨視点が見事に絡み合っていて、面白い形になっている。

 「なるほどなあ」

 俺は又呟いた。

 「少しだけ表現を変えちまったが、問題とかあったか?」

 亨が訊く、

 「嫌大丈夫だよ。それよりも、ありがとう、纏めてくれて」
 「いい言葉だな」
 「ん?」
 「いや、何でも」

 何かを言おうとしていた彼だったけれども、顔を背けてしまった。しかしその様子を見ていると、俺の言葉に照れたのではないかとすぐに推察することが出来た。

 俺はとにかく読み進めた。

 結局最後まで面白い物だったな、と思う。
 最後まで飽きることなく読めてしまった。
 不思議な事だ。半分は俺が書いていたはずなのに、読んでいて楽しいのだから。
 本来、自分が書いた小説を読むのは嫌なものだ。しかし、今回はそのような事を一切感じなかった。
 それはきっといい事なのだろう。


 「良かった」

 俺は言った。


 「無事にここまで来れて」

 俺は趣味が無かった。だけど、そこからここまでこれたのだ。

 それは素晴らしい事だ。


 俺は本をバタンと閉じ、

 「お前のおかげだ。ありがとう」

 亨に告げると、

 「どういたしまして」

 そう言って亨も笑ったのだった。