その次の日。有言実行とばかりにメールが送られてきた。
そして、メールにはリンクが張ってきた。
そこに書かれていたのは、小説だった。
しかも、かなりの分量だ。
昨日の今日で書いてきたにしては、かなりの量がある、
そうとう熱心して書いたんだろう。
そして、次のメールで、
「徹夜したからねみぃ、寝る」
なんて書いてある。
あの後徹夜したとはすげえな、と思う。
俺なんてもう、今日は10時まで寝たというのに、偉い事だ。
俺はふと、隣に置いてあるメモを手に取った。
そこまで複雑な事は書いてないけれど、所謂プロットだ。
俺もプロットを小説にしなければならないと、思ったが、だけど、俺にとって小説というのは怒りを吐き出す場だ。
怒り、俺の怒りと悲しみだ。
それを吐き出すことが出来るのは小説だと思う。
そして、俺は彼の小説を手に取り読み始める。
それを読むと、早速作品に引き込まれていく、ように感じた。
面白いと感じる。
だけど、それ以上に気になったのは、これはまんま昨日のお出かけの内容だ。
それをデートにしたという事か。
だけど、その内容に俺は、
ドキドキを感じた。
何しろ、感情がまざまざと伝わってくるようなものを感じている。
これは、
正直、緊張を感じていく。
俺がまるで好かれている。求愛されていくような感じがする。
ああ、恥ずかしいと、感じていく。良くもこんなものを読ませて。
だけど、
嬉しくも感じる事も出来て、なんとなく変な気持ちだ。
呼んでいるほんの一時間ちょいで俺の感情が揺さぶられすぎて、顔が紅潮していく。
ああ、だめだ。駄目だ駄目だ。あっという間に俺の心はおかしくなっていく。
『読んだ?』
その時、彼からメールが飛んできた。三時間後だった。
『うん』
俺は頷きのメールを送った。
『何あの小説』
俺は送った。
『面白くなかったか?』
『面白かった、面白くなかったとかじゃない。なにあれ』
流石に無意識だとは思えない。
勿論全部が昨日の物だったとは思えない。だけど、それでも十分に相違点が見える。
『プライバシーの侵害だとか?』
『そういう話じゃない』
『分かってるよ。そういう話だって』
分かっている。彼は分かっているのか。
俺が何に気になっているのかという事を。
『わざとなのか』
『わざとだ。案の定揺さぶられてくれたようだな』
わざとなのか。
『とりあえず、二度寝する。これ以降は返信できないから、よろしく』
その言葉で、会話が終了した。
そして俺もまた眠りについた。
疲れ切って、眠たくなったのだ。
「で、小説書いてきたのか?」
部活の時間。俺はその言葉に首を振った。
「どうした?」
「あれを見て、魔ともに欠けると思うな」
「ははは、そりゃそうだな」
彼はそう言って笑った。
「まあでも、俺はあれはお前を想って書いたもんだ」
「認めるんだな」
「ああ、認めるよ。俺はお前と一緒にデートをしたかったんだ」
その言葉、その言葉に俺は唾をのんだ・
「ま、答えは今じゃなくていいよ。俺の世迷いごとだと思ってくれ」
世迷いごととは思えない。完全に
「おしゃれしてきたのは」
「お前のためだ」
その言葉に頷いた。
「それにしても、驚かないんだな。こういうの少数派だと思うけどな」
「俺の人生には色々とイレギュラーが起こりすぎている。そんな中で、今更そんな事言われても、驚かねえよ」
「そう、だな……」
気まずそうに彼は言った。
その言葉に、俺は「気に住んな」と行った。むしろ気にされる方が嫌だ。
「気にする事じゃねえ。だけど、一つ言えるのは、俺は救われてるってこと」
「救われてる?」
「ああ」
俺は頷く。
「お前にな」
俺がそう言うと、佐久間は嬉しそうな顔を見せて。
「そう思ってくれてるならうれしいよ」
そう、言い放った。
「ああ、それでお前は小説書いた?」
その言葉に、俺はまだと首を振った。
「どうして」
「あんなもの見せられてかける方がおかしいよ」
おかしいに決まっている。
ははっ、それもそうだな」と、彼は言って笑った。その言葉に俺は何の反応も出来なかった。
元来から文豪はおかしな人は多いと聞いている。今回もそう言うケースだというのだろうか。俺にはよくわからない。
訳の分からんことが増えた。
俺の脳のスペックはそれほど高くない。
つまり、あいつは、佐久間はそういう意図で俺を救ったのか。
そう考えれば不純だ。いたって不純な動機だ。
だけど、小説という生きる意味を教えてくれた、という意味では恩人でもある。
俺は佐久間をどう見ればいいのだろうか。
今、訳が分からない事ばかりだけど、
でも、佐久間に救われたのは事実だ。
「だけど」
俺は再び口を開く。「小説は書かなきゃならないってことは分かっている」
今、書かなければならない。そうでないと、これからの事は分からない。
この前初めての小説を書いて、だいぶ気持ちの整理がついた。
ならば今も小説を書けば気持ちの整理がつくだろう。
そう思い、俺は文章を考えていく。だけど、その中で、俺は困難を感じた。
思うように文章が書けない。
頭が詰まっていて、思うように文章を紡げない。
前はすらすらとではなかったけれど、ある程度自由に文章を紡げたのに。
どうして、
「わりぃな」
彼が言った。
「俺がお前の頭を混乱させているんだろう」
「っ、そんなの関係ない」
俺は叫んだ。
今のオレにとって、唯一の楽しみが小説を書く事と、彼の小説を読むことだ。
だから、俺は。
「焦らなくていい」
佐久間は言った。
「心配しなくても、すぐに書かなくてもいいんだ。だから、ゆっくりと文章を組み立ててくれたらいい」
ゆっくりと組み立てれば、なんて言われても。
いや、
今のオレならいける。
そうだ、元々水族館に行っていた。その時のちょっ直な気持ちを表せばいいんだ。
俺は小説をゆっくりとかき始めた。それこそ、あの日佐久間の謎のアプローチにypって感じた感情。それを書き表せばいいんだ。そうと、信じて。
俺はひたすらに文章を書いていく。紡いでいく。そうすることで、今のオレの感情に整理がつくものだと信じて。
★
書いてるか。いいぞ、そう俺は感じた。あの文章は意味が分からなかっただろう。
ヒロインを女性に置いただけでほとんど何も配慮せずに、書いたんだから。
混乱しているだろうが、こうして神に文章を書くとは、やはり俺飲み込んだ男。流石だ。
あいつには悪い事をしたと思っている。だけど、許してくれ。
あれが俺の気持ちを伝えられるチャンスだったからな。
★
クソ、クソ、くそくそくそくそ。どうやって文章を紡げばいい。
分からに俺にはわからないんだ。
だけど、小説から逃げるのはとにかく嫌だった今この場で小説執筆から逃げるというのは戦前逃亡だ。それをするくらいなら死んだほうがましだ。
兎に角文章を紡げ。俺はそう自分に言い聞かせた。そして、書いて書いて書いて書いて。その後どうなるのかは分からない。分からないけど、とにかく書き続ける。
これを書き終えた後俺は道だ。道の俺になるだろう。だけど、それが今はとにかく楽しみだ。
俺は兎に角書き続け書き続け、心の中を整理し続けた。原稿用紙二枚三枚四枚とどんどんと書き進めていくその中で勘定の整理が段々とついてきたかのように感じていく。
俺は、俺は今何を感じているのか。
俺は再び、最初から書き始めた。それこそ、俺が子どもの時に感じた感情もセットだ。
そこから、水族館までを府一つにつなげたいと俺は今感じている。しかし、書いても書いても、幼少期のイベントを終えられない。
この前書いた時よりもだいぶ熱心に書いている。
いや、司祭に書いている、という兵家が正解だろう。
俺は今詳細に小説を表現している。
母さんを失って辛かったキモチ、父さんから怒られて悲しかったキモチ。
本音で言えば、もうそろそろ、佐久間にあった出来事までたどり着きたいところだけど、そこまでたどり着く予感がしない。
今もう詰まっているのだから、完成は一体いつの事になってしまうのやら。
「凄い集中力だが、もう、帰らなくちゃな」
佐久間に言われた。
「まだ、もう少し」
「最初の集中力の欠如状態に比べたらかなりのものだ。だけど、もうやめとけ」
「っ」
辞めておけ、なんて言われても、あまりこんなところで終わりたくない。まだまだ続きを書き、今のオレの気持ちを妻日やカニしたい。
「途中まででいい、俺に見せて見ろ」
「嫌だ!!」
俺は、俺の小説を手に取ろうとする佐久間の手をはたいた。
「完成するまで待っててくれ」
「分かった。原稿用紙を家に持って帰るか?」
その問いに俺は「ああ」と頷いた。
まだ消化不良だ。だけど、意外だった。まさかこんなに本気で書けるとは。
最初は集中力が無かったのに、今はそれこそ本気の本気で書いている。かけている状態だ。
そして、俺は言えでも書き続ける。どの先の答えがどうなるかなんて、今は分かっていないけれど、兎に角書いていく。そう、その先に答えがあると信じて。
思えば俺が今までねっち中したことなんて、今までにあっただろうか?
記憶上無かったはずだ。
俺はこの世のものに対してなんとなしに俯瞰して物事を見ていた。
そういう意味では俺は本当の意味でこの世界に生きていなかったかもしれない。俺は、今まで何のために生きていただろうかと、ふと思う。
母さんのためだ。母さんが救ってくれた命を無駄にしないために俺は生きてきたのかもしれない。
だけど、俺は今自分の生きる意味がようやく見えてきた気がするんだ。
だから、今は母さんが救ってくれたこの命、無駄にしたくないし、限界まで使っていきたい所存だ。
結局今佐久間君のあの小説への返答は出来ていない。
だけど、――返歌ならぬ返説なんていう物を、今俺はしたい。
だから、寝る時間も無駄だ。
寝る時間も惜しんで小説を書いてやる。
それで、翌日寝不足になっても仕方がねえ。ただただただただ、翌日がしんどくなるだけ。
それに比べたらこの小説が完成しないのが一番いやなんだ。
俺は兎に角筆を走らせる。何枚何十枚とどんどんと書いていく。
その中で明らかに俺の文章力が成長しているという事を、自認できてうれしかった。だけど、文章がどれだけいい物になるのか。
今からでも既に楽しみで仕方がなかったのだ。
俺は書いて書いて書いて書き続ける。
★
「今頃書いてるときかな」
俺は思った。
あいつの小説を読むのが楽しみだ。思えば俺が彼を救ったのは偶々、偶然などではない。ただ俺はあいつをこのまま死なせたくなかった。
だからこそ、
俺は助けた。だけど、それだけじゃなかった。
俺は教室内のあいつを常に目で追いかけていた。だからこそ、俺は助けた、という事で距離を縮められたという事で嬉しかった。
水族館だってそうだ。多少無理のある誘い方だったが、取材と称して水族館デートをすることが出来た。それが正直嬉しかったという事は言うまでもないだろう。
水族館の中で、俺はあいつの手を握った。それだけで、天に上るような気持だった。
俺の子の感情が友達だとか、部活仲間とかに使う物をはるかに超えていたという事はとっくにわかっていた。
だけど、俺はこの地震の気持ちに嘘はつきたくなかった。
だから、あんな告白じみた行為をしたのだ。
正直今もドキドキとしている。だけど、これで嫌われても仕方がないと思ってる。
実質一人だった部活がまた一人に戻るだけだ。
だから、それでいいはずなんだ。
俺は、小説を書く気にも、読む気にもなれずに、ただベッドに寝転がった。あいつが絶賛小説を書いている中でこうするのは申し訳がないが、今はもう別にいいだろう。
俺は目を閉じて、そして眠りについた。
★
そして、運命の日がやってきた。
★
「朝、か」
完成したとき、もう既に陽は登っていた。
結局一日中宇眠っていた。
眠気は不思議と仲った。
もう朝の五時だから、眠たいはずなのに、
これもトーバミンのおかげなのかな、と思った。
俺は小説を纏め、クリアファイルに入れた。
これをあいつに見せてやればいい。
文字は汚くないか、文章の誤字脱字が無いかの確認はもう既に行った。恐らくもないだろうと思う。
心配だけど、大丈夫だと信じた。
そして、俺は仮眠しようと、目覚ましをかけ、眠りについた。
中々眠ることが出来ない。
何となくまだ気分が変に高揚してしまっている。
あいつのあの小説に対するヘントウが上手く行ったのかが今も心配で、確認をもう一度したいな、と思う。
だけど、たぶん時間をおいていない今それをすることはあまり良くないと、思っている。
多分見つからないだろう。
それをするならば今睡眠時間を稼ぐ方が良いはずだ。
俺は、ポリポリと頭を掻く。あいつに会いたい、という気持ちが段々と大きくなっていく。
ああ、くそ。俺という人間がわけわからなくなった。
俺は強引に眠りに就こうと考えた。
★
「なあ、俺は今同性愛に関する小説が書きてえんだ。だからお前で練習してみようと思う」
「何を一手」
俺の手足は今まさに拘束をされており、服を剥がされていた。
「さて、ぶれ馬のシーンの研究をさせてもらうぞ」
「や、辞めろ」
「いいじゃねえか。それくらい、カップルならよ」
★
「うわああああああ」
俺は布団を蹴り、思い切り飛び上がる。
びっくりした。
何通夢を見てんだ。
原因は分かっている。あんな夢を見てしまったからだろう。
だけど、俺の心は今もドキドキとしている。
「何なんだよ」
息を軽く吐く。
相変わらず俺の精神はあいつに握られているな、と思った。
俺は軽く伸びをする。
そして、軽く瞬きをした。
そして時計を見る。
「げっ、遅刻じゃねえか」
もう、8時半だった。今から走って行っても、10分後に学校に着くのは無理だ。そもそも、もう黄門は閉じられようとしているだろう。
遅刻確定だ。
「くっそがよ」
とはいえ、今更遅刻如きで動揺するようなことはしない。
遅刻しても、授業を一個受けられなくなるだけだ。
後は、反省文を書かなければならねえリスクか。
とはいえ俺は学校をほとんどサボったことがない。そういう面で考えれば別に大丈夫なのかな、と思った。


