――確かに。
15時に客室から電話が来ることは珍しい。
チェックアウトは終わっている時間だし、チェックインはこれから始まる。
電話がかかってくるとしたら連泊の部屋からだ。
「連泊の団体フロアのゲストから。韓国の方だったよ」
私が答えると相田ちゃんの表情がパァと明るくなった。
「え! 誰でした!?」
「えぇ、わかんないよ。男性の声だったけど」
「もしかしたらアイドルの誰かだったかも……!」
「アイドル本人が電話するかな? 30人以上の団体だし、スタッフの方が確率高いと思うけどな」
「もー。夏木さんは夢がないですねぇ」
「だってアイドル詳しくないから……。逆に相田ちゃんは今回はやけに気にするじゃん。先月来てたアイドルには興味なさそうだったのに」
この「HOTEL COAST」は世界中に展開しているホテルグループで、韓国のアイドルに限らず、アーティストや著名人が利用することも多い。
芸能事務所とホテルグループが契約を結ぶことも珍しくなく、国をまたいで移動するアーティストにとって、行く先々で勝手のわかる系列ホテルに泊まれるのは何かと都合がいいらしい。
「あー、あのグループはそんなに興味なかったので」
「ふーん、そういうもん?」
「そういうもんです」
相田ちゃんがそう言った時、左耳につけたインカムがザザと鳴った。
『フロントです。只今からチェックイン開始いたします』
その声に、私と相田ちゃんは軽く顔を見合わせて背中を伸ばした。
