翌日の部活で、俺はさっそく高森に謝った。
「昨日はごめん!酒井先輩たちが高森のこと狙ってるとか知らなくて誘っちゃって!」
「何言ってんですか?」
は?と言いたげに高森が俺を見る。
いつもの廊下。並んで個人練習をしている最中の休憩時間。
俺たちの間には一瞬、冷ややかな空気が流れた。
「先輩って本当に何にもわかってないんですね。俺は先輩と二人で行きたかったんですけど」
思いっきり拗ねた口調で高森が言う。
なんだ、それで怒ってたのか。
ようやく納得する。
「じゃあそう言えばいいじゃん」
「言ったら、行ってくれるんですか」
俺は黙ってしまう。
高森はただ放課後どこかに寄りたくて誘ってきてるわけじゃない。
高森の膝の上あるクラリネット。
あのカバーが今日も律儀にお揃いにしてある。
俺はそれを見て、どうしたらいいのか迷う。
迷うことなく断ればいいはずなのに。
「いいですよ別に行かなくて。本当に甘いもの苦手ですし」
高森がふいっと顔を背ける。
ああもう。
(全然行かなくていいって態度じゃないだろそれ)
いくら呼びかけても高森はこっちを向かない。
痺れをきらして、俺はつい自分から言った。
「じゃあ何が好きなんだよ高森は」
高森がようやくこっちを向く。
「……行ってくれるんですか」
「いつまでもそうされるとやりにくいから」
先輩と後輩が放課後何か食べ行くなんて珍しくもない。
俺は高森を意識してるわけじゃないし。
一緒に何か食べに行ったってどうにかなるわけでもない。
そう言い聞かせる。
「すみません。わがまま言って」
「わかってるんならやめろよ」
「できません」
えへっと笑いながら言われて、ムッとする。
でも嬉しそうな高森を見ていたら文句は言えなかった。
部活後。
高森と共に高校の近くにある大きめのスーパーに向かう。
そこで何か食べることにした。
「俺、一回先輩と放課後どこか寄りたかったんです」
「いつでも言えばいいじゃん」
「だって先輩には彼女がいたし」
前もこんなやり取りしたなと考えていたら、ふいに高森が不穏なことを口にする。
「でも今はいないので。何でもできますね」
笑顔で言われて俺はびくりとする。
「何でもはできねえよ」
「それはわかんないじゃないですか」
ふふんと笑う高森に、俺はなんで断らなからなかったんだろうと思う。
このままだと俺は何でもされることになる。
いや、させない。
絶対に。
スーパーに到着し、店の前で高森に聞く。
「何食う?」
「先輩が食べたいものだったら何でもいいですよ。何食べたいですか?」
逆にさらりと人を甘やかすようなことを言われて、俺はちょっと動揺した。
「高森が食べたいやつでいいよ」
言いながら、俺は店の前でたこ焼きを焼いているキッチンカーに目が吸い寄せられる。
「俺もたこ焼き食べたいです」
どうやら高森も同じだったらしい。
定番のソースとシンプルな塩。二種類買って、入口前のベンチで食べようとしたのだけど。
吹奏楽部の女子たちがいたので、近くの公園に行く。
草だらけのぽつんと滑り台があるだけの公園は無人だった。
二人で隅っこのベンチに座り、高森にソースの方を渡す。
「なんかすみません。気遣ってもらって」
「いいよ。そういや高森ってなんで吹奏楽部に来たんだ。女子苦手そうなのに」
「今更すぎませんか」
「俺、高森のことほとんど何も知らないなと思って」
「それで知りたいって思ってくれたんですか?」
首を傾げて愛おしそうな目で高森が見てくる。
ここは二人きりの廊下とは違うんだぞと言いたくなる。
俺は高森の視線をスルーして、たこ焼きのパックの蓋を開けた。
「最初は友達が部活見学についてきてって言うからついてきただけです。入るつもりなかったけど先輩に誘われちゃったから」
そこで惚れたとか言ってたっけ。
まあそれは置いておいて、付属の塩を振りかけ、たたこ焼きを食べる。
「その友達はどうしたんだよ。入部してないよな?」
「はい。吹奏楽部が思ったより文化部っぽくなくて、ついていけなさそうって言ってやめちゃいました」
「結構体力いるもんな。俺も最初びっくりしたわ」
「先輩はどうして入部したんですか」
「俺も似たようなもんだよ。中学の時、友達に誘われて入部してそっから続けてる」
「へえ。宮野先輩上手ですもんね」
「高森の方が上手いだろ。初めて吹いて一発で音鳴らしたし。俺は結構鳴らすの時間かかったのに」
「もしかして、なんだこいつむかつく!って思ったりしましたか」
「思わねえよ。むしろ上手な後輩入ってきて嬉しかったし。先輩もいなかったから頼もしかったっていうか」
「よかった」
ふわっと高森が笑う。
俺は落ち着かない気分で、たこ焼きをもう一口食べた。
塩味のたこ焼きはシンプルでおいしい。
俺はこういうのほとんど味がついてないやつが好きだ。
高森との関係もシンプルに先輩と後輩だったらよかったのに。
俺は高森にどう接するべきなんだろう。
こんな風に一緒に帰ったりしない方がいいんじゃないのか。
ていうかそもそもなんで行こうとか言っちゃったんだろう。
思いに応えらられないなら傷つけるだけなのに。
高森があきらめてくれないから、どうしたらいいのかわからなくなってくる。
悩んで箸が止まる俺に、高森が急に明るい声で言った。
「そうだ先輩!一緒に写真撮りましょ!」
高森がいそいそとスクールバッグからスマホを取り出す。
たこ焼きのパックを顔の前に掲げ、俺の方に体を寄せながら、片手でスマホを構える。
画面には笑顔の高森と、怪訝な顔の俺が映り込む。
「はい、先輩も笑って」
「どうすんだよ。こんな特に映えない写真撮って」
「映えとかどうでもいいんですよ。俺は先輩と写真撮りたいだけです」
高森の言葉を俺は拒めず、写真を撮った。
画面の中の俺は高森につられて、少し笑っていた。
「はい撮れた!あとで先輩にも送りますね。連絡先教えてください」
「やだよ」
「いいじゃないですかそれくらい。部活のことで相談したいこととかできるかもしれないし」
それを言われたら教えないのも悪いような気がして、結局俺はラインのIDを教えた。
「写真、消さないで持っててくださいね」
にこっと笑って言われて、俺は「わかったよ」とため息を吐く。
俺だって後輩と一緒に撮った写真を即削除するほど、薄情じゃない。
高森はまるですごく大事なものみたいに画面を見つめ、口角を上げていた。
うっかりきゅんとしそうになったので、たこ焼きを食べる。
「彼女ともこういうことしたんですか」
いきなり聞かれて顔を上げると、高森は笑ってなかった。
どう答えるのが正解なのか。
考えてから、正直に話す。
「こうやって公園寄って喋ったりとかはしたかな」
ほとんど俺しか喋ってなかったけれど。
気分がずんと沈みそうになって、また箸が止まる。
「俺に彼女がいたのって奇跡っていうか、ほぼ夢みたいなもんだよな」
「何言ってるんですか。ちゃんと現実ですよ」
高森がしっかりした口調で返してくる。
俺は目を瞬きながら、その顔を見つめた。
どうやら本気で言ってるらしい。
(こういう風にはっきり言えるとこはかっこいいよな)
自然と思う自分に俺は驚きながら、ふと思い出した。
「高森は俺と元カノのことお似合いですねって言ってくれたよな」
「言いましたっけ」
「言ったよ」
他の人は『全然似合ってない』とか言っていたのに、高森だけは違った。
「俺にとってはあんまりいい思い出じゃなかったので忘れてました。それ言った時先輩すごい嬉しそうだったし。言うんじゃなかったって思いました」
唇を尖らせて、明らかに不機嫌になる。
せっかく初めてちゃんとかっこいいって思ったのに、台無しだ。
でも、きっと嫌だったのを堪えて高森は言ってくれたんだ。俺のために。
そう考えたら、何だか胸がじんとした。
こんなのいけないのに。
付き合う気もないくせに、何を都合よく、じんとしてるんだろう。
「先輩?」
高森が横から顔を覗いてくる。
「もしかしてやっぱり俺とは来たくなかったですか」
「いや、その、高森はいいのかなって気になって」
「何がですか」
「俺は高森の気持ちに応えられないのにこうやって一緒に帰ったりしていいのかなって」
「言ったじゃないですか。俺の気持ちを舐めるなって。先輩はただ俺の気持ちを受け取ってください」
いいのかそれで。
俺が得してるだけのような。
そこまで考えて、ハッとする。
得ってどういうことだ。
俺は高森から向けられる気持ちをそんな風に感じてたのか。
むしろ迷惑くらいに思っていたはずでは。
あたふたしてきて、つい本音がこぼれた。
「俺にはわかんないんだよ。どうしたらいいか。こんな風に誰かから好かれたことないし」
高森はきょとんとした表情になる。
「彼女からもですか?」
「好きなのは俺の方だけだったと思う」
「なんだ。そうだったんですね」
高森はあっさりと流し、たこ焼きのパックを差し出してきた。
「食べます?たこ焼き。先輩、こっちも食べたそうにしてましたよね」
「別にしてないけど」
「すみません。外しましたか」
落ち込む高森に、俺はしょうがなく箸を伸ばす。
「一個だけもらうわ。高森も俺の一個食べる?」
「いいです。先輩に全部あげます。なんならこれも全部」
「いいって」
「先輩。俺は先輩のこと好きです」
「外で言うなよそういうこと」
「外じゃなかったらいいんですか」
「いいわけないだろ」
そう言いつつ、先輩たちとアイスを食べた時よりも、高森とたこ焼きを食べている今の方がいいなと思ってしまった。
「昨日はごめん!酒井先輩たちが高森のこと狙ってるとか知らなくて誘っちゃって!」
「何言ってんですか?」
は?と言いたげに高森が俺を見る。
いつもの廊下。並んで個人練習をしている最中の休憩時間。
俺たちの間には一瞬、冷ややかな空気が流れた。
「先輩って本当に何にもわかってないんですね。俺は先輩と二人で行きたかったんですけど」
思いっきり拗ねた口調で高森が言う。
なんだ、それで怒ってたのか。
ようやく納得する。
「じゃあそう言えばいいじゃん」
「言ったら、行ってくれるんですか」
俺は黙ってしまう。
高森はただ放課後どこかに寄りたくて誘ってきてるわけじゃない。
高森の膝の上あるクラリネット。
あのカバーが今日も律儀にお揃いにしてある。
俺はそれを見て、どうしたらいいのか迷う。
迷うことなく断ればいいはずなのに。
「いいですよ別に行かなくて。本当に甘いもの苦手ですし」
高森がふいっと顔を背ける。
ああもう。
(全然行かなくていいって態度じゃないだろそれ)
いくら呼びかけても高森はこっちを向かない。
痺れをきらして、俺はつい自分から言った。
「じゃあ何が好きなんだよ高森は」
高森がようやくこっちを向く。
「……行ってくれるんですか」
「いつまでもそうされるとやりにくいから」
先輩と後輩が放課後何か食べ行くなんて珍しくもない。
俺は高森を意識してるわけじゃないし。
一緒に何か食べに行ったってどうにかなるわけでもない。
そう言い聞かせる。
「すみません。わがまま言って」
「わかってるんならやめろよ」
「できません」
えへっと笑いながら言われて、ムッとする。
でも嬉しそうな高森を見ていたら文句は言えなかった。
部活後。
高森と共に高校の近くにある大きめのスーパーに向かう。
そこで何か食べることにした。
「俺、一回先輩と放課後どこか寄りたかったんです」
「いつでも言えばいいじゃん」
「だって先輩には彼女がいたし」
前もこんなやり取りしたなと考えていたら、ふいに高森が不穏なことを口にする。
「でも今はいないので。何でもできますね」
笑顔で言われて俺はびくりとする。
「何でもはできねえよ」
「それはわかんないじゃないですか」
ふふんと笑う高森に、俺はなんで断らなからなかったんだろうと思う。
このままだと俺は何でもされることになる。
いや、させない。
絶対に。
スーパーに到着し、店の前で高森に聞く。
「何食う?」
「先輩が食べたいものだったら何でもいいですよ。何食べたいですか?」
逆にさらりと人を甘やかすようなことを言われて、俺はちょっと動揺した。
「高森が食べたいやつでいいよ」
言いながら、俺は店の前でたこ焼きを焼いているキッチンカーに目が吸い寄せられる。
「俺もたこ焼き食べたいです」
どうやら高森も同じだったらしい。
定番のソースとシンプルな塩。二種類買って、入口前のベンチで食べようとしたのだけど。
吹奏楽部の女子たちがいたので、近くの公園に行く。
草だらけのぽつんと滑り台があるだけの公園は無人だった。
二人で隅っこのベンチに座り、高森にソースの方を渡す。
「なんかすみません。気遣ってもらって」
「いいよ。そういや高森ってなんで吹奏楽部に来たんだ。女子苦手そうなのに」
「今更すぎませんか」
「俺、高森のことほとんど何も知らないなと思って」
「それで知りたいって思ってくれたんですか?」
首を傾げて愛おしそうな目で高森が見てくる。
ここは二人きりの廊下とは違うんだぞと言いたくなる。
俺は高森の視線をスルーして、たこ焼きのパックの蓋を開けた。
「最初は友達が部活見学についてきてって言うからついてきただけです。入るつもりなかったけど先輩に誘われちゃったから」
そこで惚れたとか言ってたっけ。
まあそれは置いておいて、付属の塩を振りかけ、たたこ焼きを食べる。
「その友達はどうしたんだよ。入部してないよな?」
「はい。吹奏楽部が思ったより文化部っぽくなくて、ついていけなさそうって言ってやめちゃいました」
「結構体力いるもんな。俺も最初びっくりしたわ」
「先輩はどうして入部したんですか」
「俺も似たようなもんだよ。中学の時、友達に誘われて入部してそっから続けてる」
「へえ。宮野先輩上手ですもんね」
「高森の方が上手いだろ。初めて吹いて一発で音鳴らしたし。俺は結構鳴らすの時間かかったのに」
「もしかして、なんだこいつむかつく!って思ったりしましたか」
「思わねえよ。むしろ上手な後輩入ってきて嬉しかったし。先輩もいなかったから頼もしかったっていうか」
「よかった」
ふわっと高森が笑う。
俺は落ち着かない気分で、たこ焼きをもう一口食べた。
塩味のたこ焼きはシンプルでおいしい。
俺はこういうのほとんど味がついてないやつが好きだ。
高森との関係もシンプルに先輩と後輩だったらよかったのに。
俺は高森にどう接するべきなんだろう。
こんな風に一緒に帰ったりしない方がいいんじゃないのか。
ていうかそもそもなんで行こうとか言っちゃったんだろう。
思いに応えらられないなら傷つけるだけなのに。
高森があきらめてくれないから、どうしたらいいのかわからなくなってくる。
悩んで箸が止まる俺に、高森が急に明るい声で言った。
「そうだ先輩!一緒に写真撮りましょ!」
高森がいそいそとスクールバッグからスマホを取り出す。
たこ焼きのパックを顔の前に掲げ、俺の方に体を寄せながら、片手でスマホを構える。
画面には笑顔の高森と、怪訝な顔の俺が映り込む。
「はい、先輩も笑って」
「どうすんだよ。こんな特に映えない写真撮って」
「映えとかどうでもいいんですよ。俺は先輩と写真撮りたいだけです」
高森の言葉を俺は拒めず、写真を撮った。
画面の中の俺は高森につられて、少し笑っていた。
「はい撮れた!あとで先輩にも送りますね。連絡先教えてください」
「やだよ」
「いいじゃないですかそれくらい。部活のことで相談したいこととかできるかもしれないし」
それを言われたら教えないのも悪いような気がして、結局俺はラインのIDを教えた。
「写真、消さないで持っててくださいね」
にこっと笑って言われて、俺は「わかったよ」とため息を吐く。
俺だって後輩と一緒に撮った写真を即削除するほど、薄情じゃない。
高森はまるですごく大事なものみたいに画面を見つめ、口角を上げていた。
うっかりきゅんとしそうになったので、たこ焼きを食べる。
「彼女ともこういうことしたんですか」
いきなり聞かれて顔を上げると、高森は笑ってなかった。
どう答えるのが正解なのか。
考えてから、正直に話す。
「こうやって公園寄って喋ったりとかはしたかな」
ほとんど俺しか喋ってなかったけれど。
気分がずんと沈みそうになって、また箸が止まる。
「俺に彼女がいたのって奇跡っていうか、ほぼ夢みたいなもんだよな」
「何言ってるんですか。ちゃんと現実ですよ」
高森がしっかりした口調で返してくる。
俺は目を瞬きながら、その顔を見つめた。
どうやら本気で言ってるらしい。
(こういう風にはっきり言えるとこはかっこいいよな)
自然と思う自分に俺は驚きながら、ふと思い出した。
「高森は俺と元カノのことお似合いですねって言ってくれたよな」
「言いましたっけ」
「言ったよ」
他の人は『全然似合ってない』とか言っていたのに、高森だけは違った。
「俺にとってはあんまりいい思い出じゃなかったので忘れてました。それ言った時先輩すごい嬉しそうだったし。言うんじゃなかったって思いました」
唇を尖らせて、明らかに不機嫌になる。
せっかく初めてちゃんとかっこいいって思ったのに、台無しだ。
でも、きっと嫌だったのを堪えて高森は言ってくれたんだ。俺のために。
そう考えたら、何だか胸がじんとした。
こんなのいけないのに。
付き合う気もないくせに、何を都合よく、じんとしてるんだろう。
「先輩?」
高森が横から顔を覗いてくる。
「もしかしてやっぱり俺とは来たくなかったですか」
「いや、その、高森はいいのかなって気になって」
「何がですか」
「俺は高森の気持ちに応えられないのにこうやって一緒に帰ったりしていいのかなって」
「言ったじゃないですか。俺の気持ちを舐めるなって。先輩はただ俺の気持ちを受け取ってください」
いいのかそれで。
俺が得してるだけのような。
そこまで考えて、ハッとする。
得ってどういうことだ。
俺は高森から向けられる気持ちをそんな風に感じてたのか。
むしろ迷惑くらいに思っていたはずでは。
あたふたしてきて、つい本音がこぼれた。
「俺にはわかんないんだよ。どうしたらいいか。こんな風に誰かから好かれたことないし」
高森はきょとんとした表情になる。
「彼女からもですか?」
「好きなのは俺の方だけだったと思う」
「なんだ。そうだったんですね」
高森はあっさりと流し、たこ焼きのパックを差し出してきた。
「食べます?たこ焼き。先輩、こっちも食べたそうにしてましたよね」
「別にしてないけど」
「すみません。外しましたか」
落ち込む高森に、俺はしょうがなく箸を伸ばす。
「一個だけもらうわ。高森も俺の一個食べる?」
「いいです。先輩に全部あげます。なんならこれも全部」
「いいって」
「先輩。俺は先輩のこと好きです」
「外で言うなよそういうこと」
「外じゃなかったらいいんですか」
「いいわけないだろ」
そう言いつつ、先輩たちとアイスを食べた時よりも、高森とたこ焼きを食べている今の方がいいなと思ってしまった。

