うちの華道部は人気がない、らしい。
今年の春に卒業した兄に強引に誘われ華道部に入った僕は、畳の部室に、本日も誰も居ないことを確認した。現在一年生ながらに、僕は部長になってしまった。これも前部長だった兄の指名だ。それでも部活動として存在しているからには、部員がいる。ただ……僕以外みんな、幽霊部員なのである……。
僕もサボったらいいのかもしれないけど、たまに来る顧問の先生が寂しい顔をするのが可哀想で、それができない。
大体この高校には帰宅部があるのだから、部活をする気がないなら帰宅部に入れば良いと思うのだが、そうされたら華道部は潰れてしまうから僕は強く言えないし、受験の時には帰宅部より部活に入っていたと書く方が心証がいいそうで、皆も辞めない。
もう六月も半ば。
僕は期末テストについて考えつつ、教室へと向かった。もう入学して二ヶ月だから、仲良しのグループもできあがっている。僕は教室の前方に集まっている人気者グループを見た。みんな、キラキラしている。席替えで集まったメンバーだ。なお、僕の席はといえば……そのグループの真横にある。教卓に近く人気の無い席で競争率が低かったその席に、僕は誰かと争うなんて面倒だったから陣取った。するとその僕の隣の席に、何故なのか人気者の中でも一際存在感がある美生伊織くんが座ったのである。以来、僕の隣に人気者達はお昼休みや放課後になると集まるので、僕は非常に居心地が悪い思いをしている。
「おかえり、佳生」
僕が席に着くと、伊織くんがにこりと笑った。薄い唇に、長い睫、綺麗な目をしている。整った顔立ちで、とにかくキラキラしている。さらさらの髪は生まれつき色素が少し薄いそうで茶色だ。王子様がいるとすれば、伊織くんのような人を言うのだと思う。
伊織くんは、僕に優しい――が、少し強引だ。『伊織くん』と呼ばないと不機嫌そうな顔をする。瞳がちょっと冷たくなるのだ。苗字で呼ばないでと直接言われた。曰く、『距離を感じて嫌だから』だとか。人気者の伊織くんと僕の間には距離しかないと思うのだけど……。
伊織くんにいた周囲は僕を見ると、何度か頷いてからそれぞれまた談笑をはじめた。伊織くんだけが、僕に構ってくる。
「ただいま、は?」
「あ、うん。ただいま」
本日日直だった僕は、職員室に集めた宿題を渡しに行って、帰ってきたところである。この宿題の範囲の内容が、期末テストと密接に関係しているから、僕はテストについて考えていたんだった。
「佳生、放課後みんなでカラオケにいくんだけど」
伊織くんは帰宅部だ。だが僕は伊織くんに過去に誘われたことはなかったし、伊織くんが何をして遊んでいるのかも知らない。あんまり興味も無い。
「僕は行かないから、一緒にいていい?」
「へ?」
「華道部。見学に行きたいなって」
唇の両端を綺麗に持ち上げた伊織くんの言葉に、僕は目を丸くした。



