サッカー部の元エースのみが俺の球を受けられる

 俺はひたすらにボールを投げる。空振り!
 また投げる。空振り!
 そして、3球目も無事に投げ終え、そして3球で1人目を打ち取った。
 その後結局1点を失ったものの、無事にイニングを投げ終えた。

 ふぅ、息をつく。無事に試合を壊さずに投げきることができた。

 俺は安心したが、

 「よく耐えたな」
 そう言われた。白井が隣りに座る。

 「よく試合を壊さなかった」
 「ああ、なんとか荒れそうになったけど、耐えたよ」
 「一つだけ言っておきたいことがある」
 「俺が好きと言う話か?」
 「それもある。が、それだけじゃない」
 「じゃあ、何だよ」

 回りくどい言い方をして、何を言いたいのだろうか。

 「最初の球、撃たれるとは思わなかった。ただ、少し高めに浮いてたから撃たれたんだと思う。何しろそうじゃなければお前の球が打たれる訳ねえからな」
 「そうかよ」

 とは言ってもの、その言葉は少しありがたかった。

 今日俺はこの一点だけで抑えて見せる。
 そう、俺は拳を握った。

 俺は俺自身の事を信用は完全には出来ていない。

 だけど、俺以上に俺のことを信用している奴がいる。
 それで十分な気がした。
 そして、俺は次の投球までベンチで休む。
 体力は――まだまだ残っている。
 当然だ。こんな早くに無くなっていたら、最後まで持たないのだから。

 そして次の出番を待っていく。

 そして二イニング目、三イニング目とどんどんと投げて行った。
 絶好調と言う感じがした。これならば、よほどの事がない限り、点は取られない。
 それこそ、初回みたいに変な同様さえしなければ、大丈夫なはずだ。
 俺は、次々と球を放っていく。


 そして、試合が動かないまま、六回まで来た。
 体力はまだまだ残っている。だけど、点を取れないままだと、一対ゼロで負けてしまう。

 「おい」
 「なんだ」
 「俺が何とかして帰す。塁に出ろ」

 そう、白井は言った。


 そんなこと言われても、と言う話だ。自慢じゃねえが。
 俺は打撃に関しての自信はほぼほぼない。
 だけど、投げられるからいい、というだけでは勝てないのも承知。
 だから、打でも貢献しろと言っているのだろう。

 結局全てを理解したわけではない。が、俺に出来る事はなんでもやってやらあ。
 俺は、こぶしを強く握りしめる。

 正直なところ、うちで一番信用できるのは白井だ。

 白井に任せれば万事うまくいく。

 だから、俺は何としてでも塁に出る。それこそ、俺がどうなろうともだ。

 そして俺は四球を選んだ、と同時にガッツポーズをした。

 これであとはあいつに託すだけ。

 そして、一番の悠太はバントとをして見せた。
 そして俺は二塁まで進んだ。後は、
 俺は、二塁ベース上で白井の姿をただ眺めた。
 白井、頼むぞ。お前が打てば俺は走る気満々だ。

 頼む、俺をホームに返してくれ。

 ただ見つめていく。

 俺は、ただ見つめる。

 ★

 ワンアウト二塁。
 ここで俺に出来る事は、あいつをホームに返すことだ。投手として大事なのはピッチャーを支える事だ。そしてそれは、投手を楽にしてやるというのも含まれているはずだ。だから、

 俺は、ボールを見極めながら、チャンスを待つ。
 今この場面で、あいつをホームに返せるのは俺だけだ。
 俺のエゴだが、奴ホームに帰させてほしい。

 俺は、バッドを握り、そして、ボールを見た。そして、チャンスはすぐにやってきた。このタイミングしかないと、俺は確信した。
 このタイミング、このタイミングでこそ、俺は。
 そして、向かってきたボールを思い切り救い上げた。

 そのボールはどんどんと空に向かい飛んでいく。
 来たな、と思った、これは完全に貰った打球はフェンスに当たって行った。

 ★

 俺は打球の行方を確認して、すぐに駆け出した。
 これなら完全に、ホームに帰る事が出来る。ここから失速するわけが無い。



 俺は走り出す。
 そして、間一髪、ホームに滑り込みセーフで一点を返した。
 俺がガッツポーズしたことに気づいたのか、白井もベース上でガッツポーズをした。

 気持ちが良かった。

 これで、一先ず動転へと追いついたのだと、思うと、嬉しくてたまらないのだ。
 そして、その後、追加で一点取って価値が濃厚になった。

 だけど、勝負はここからだ。

 俺が最後まで抑えられるかどうかだ。

 そして、次のイニングのマウンドに向かう時、白井に言われた。

 「ちゃんと抑えられるか?」

 その言葉は俺を嘗めているように一瞬思えた。だか、ら。俺は即座に帰した。

 「当たり前だ」

 そう、俺は言った。
 それともう一つ言わなくてはならない。

 「俺が見事に抑えきったら、お前の言葉に対する返答をやる」
 「ふつうそれは逆だ」
 「分かってる。一回戦でやられたのの意趣返しだ」

 そして俺は
 点さのリードを守るべく、マウンドに立った。
 絶対に白井が取ってくれたこのリード。俺が守って見せる。

 体力的にはおそらくかなりぎりぎりになるだろう。だけど、足りるはずだ。

 俺は全力を投じる。


 前よりも体力がついていると感じた。

 前よりも投げられる。

 これならば、無事に最後まで乗り切れるはず。


 俺はとにかく全力で投げ続けた。




 そして――




 最後の打者を迎えた。
 最初の打席でツーベースを打たれた一番上村。
 奴をこのツーアウト二塁の場面で抑えきらなければならない。


 俺は一球目を投じる。ストレートではなく。スプリットだ。

 落差の大きなボールでストライク1

 あと二つのアウトをどう奪うか。
 これも非常に問題だが、


 だけど、あと二つと考えれば、奪えない事もないと、感じた。

 二球目を投げた。ファールで狙われる。
 俺はあいつの事を信じている。あいつの指示したボールを投げれば無事に抑えられるって。

 俺はとにかく、球おw投じる。だけど、相手打者は俺のボールをかろうじてファールにしてくる。それに対して俺は怒りを感じる。
 黙って三振にとられ路やカスが。それが俺の今のそっ得な気持ちだ。



 俺は三振を奪いに行く。そう言った白井の指示だ。俺は次々にボールを投げ、投げ、投げまくる。

 その先で無事に抑えられると信じて。

 そして、最後の一球。完璧な球を投じた。はずだった。
 そのボールは俺の手を滑って行った。
 そして、

 カキンっ!!


 その投球は見事に弾かれた。

 そして、非情にもその球はスタンドへと入っていくのだった。

 さよならツーランホームランだ。
 俺はその場に立ち尽くす。




 「なあ、白井。終わったのか?」



 マウンドに駆け寄る白井に俺は訊く。
 すると、

 「終わっちまった」


 そう言った。


 「すまん、俺の配給」
 「違う!! お前は完璧だった。だけど、俺がボールの球威でねじ伏せられなかったからだ」

 俺がそう言うと、白井はただ、俺を抱きしめた。
 まるで、子どもをあやすように。



 「白井、俺の事を好きにしてくれ」


 俺は言った。

 ベッドの上だ。

 「筋肉に触ってもいいのか」
 「早くしろ。これは俺からのお礼だ」
 「ありがとう」


 そして、白井は俺の肌に触れる。それは気持ちがいいような悪いような変な感じだった。

 「来年こそは」

 白井は言う。


 「来年こそは俺がお前を甲子園に連れて行く」
 「頼むぞ」

 俺がそう言うと、白井は笑うのだった。