なぜ、いじめっ子が、飛び降りたのか?

 道路脇の崖下に、小学生の男の子が倒れている。
 と通報があった。
 病院に搬送されたが、
 小学生の男の子が一人死亡、、、、



 永田君と、美作君と、椎名君と、井手君と。
 みんなが、レーシングゲームをするのを、僕は見ていた。
 ゲームをしていた、四人のうち、一人、永田君が、
「なあ、こんなショートカット、欲しくね?」
 と言った。
 美作君が、
「こんなショートカットって、何だよ?」
 と聞くと、
「いや、俺らって、このコースみたいに、こう、山の上から、うねうね道を下って、下の道に降りてから、学校まで行かなきゃならねえじゃん?」
 そんな永田君の言葉に、椎名君は、
「早く自転車で行けるように、なりたいよなー」
 それを聞いた井手君、
「ばーか、帰りはどうすんだよ」
 美作君が、
「学校の近くに引っ越すのが一番だろ」
 井手君は、また、
「ばーか、中学になったら、逆じゃねえか」
「誰が、ばかだ、殺すぞ」
 美作君が井手君に突っかかる。
「よせ、こら、俺の話を聞けよ」
 永田君がそれを制す。
「だから、このコースみたいにさ、上の道から、下の道に、飛んで着地できたら、すげータイム短くなんだろ?」
「どこに作るの? どう作るの?」
 と椎名君。
「ばーか、それを考えるっていう話なんだろ」
 と井手君が、椎名君を馬鹿にすると、美作君が、
「あそこは、どうだ、山裏の、土砂崩れがあったとこ」
 と提案した。
 永田君は、
「確かに、あそこ、めちゃくちゃ大回りして、迂回して行ってんもんな?」
「どう作るの?」
「ばーか、簡単じゃねーか。ほら、前の防災訓練の時使ったマットがあんだろ、あれでいいじゃねえか」
「井手、あそこ、結構高さあんだろ、大丈夫か?」
 美作君は疑問を呈す。
「ばーか、簡単じゃねーか、な、永田」
「ああ、こいつで実験すればいい」
 永田君と、美作君と、椎名君と、井手君と。
 四人が僕を見ていた。

 崖の端に腰掛け、僕は下を覗き込む。
 切り立って、露出した茶色の岩肌。
 地面にあるマットには、三重丸が描かれている。
 見つめていると、そこに、吸いこまれそうになる。
「おい、早く飛べよ」
 背後から、急かす声がする。
 怖い、怖いんだよう、と僕は言った。
「うるせえ、いいから、飛べ」
「飛ーべ、飛ーべ」
「飛ーべ、飛ーべ」
「飛ーべ、飛ーべ」
 背後からの四人の声。
 僕はそれに、押されて。
 へううううううううう。



 永田君と、美作君と、椎名君と、井手君と。
 みんなが、タイムレースをするのを、僕は見ていた。
 あれから、一週間、四人は、小学校まで、いつも競争して、走って行っていた。
 僕はその四人の後ろ姿を、背後からじっと見ていた。
 四人はほぼ、同時にショートカットにさしかかる。
 飛ーべ、飛ーべ。
 僕は四人の背後から、そう念じていた。
 四人は崖下を見ることなく、飛んだ。
 マットの空気は、抜いておいた。