一年生が入部してニ週間が経った。
藤丸がうざくて、俺のストレスは溜まる一方。
着替え中に「ネクタイが結べないから結んでください」とねだられたこともある。家を出る時に結んでるやつが、何を言ってんだよ。
そして連絡先を教えて欲しいとしつこい。俺が拒否をすれば、かわりに高崎が自分の連絡先を教えていた。その時の藤丸の虚無顔は少し笑えた。
部活後には「一緒に帰りましょう」と絡んでくるし、毎日土日の予定を詰めようとしてくるし。
思い浮かべると、キリがない。
昼休みに高崎と三年生の教室に向かい、三浦先輩と東堂先輩を誘って空き教室で弁当を食べる。
「藤丸をぶちのめしたいんですけど」
イライラした気持ちで、ご飯を頬張った。
「暴力はダメだぞ」
三浦先輩が嗜める。
「ヒメのことを慕って、可愛い後輩じゃん」
「どこが?!」
高崎を睨みつければ、先輩たちが苦笑する。
藤丸は部活中だけヘラヘラとした軽さを捨て、真面目に打ち込んでいる。
でもそれ以外が最悪だ。距離は近いし、呼吸をするように甘ったるい声で口説いてくる。
フルフルと首を振って、頭の中をクリアにする。
宙を睨んで、朝練のことを思い出した。
ハーフコートでのGKを含めた7対7で、藤丸と同じチームになった。
奥の藤丸は相手DFを振り切り、こちらを振り返る。
あいつの目が『くれ』と言っていた。
俺は右足を振り抜き、柔らかいパスを放つ。ボールは藤丸の走るスピードを一切殺さない、一歩先へと吸い込まれるように飛んでいった。
ワントラップから、流れるようなシュート。
ボールは一年生GKの伸ばした手を嘲笑うかのように、ゴールネットを揺らした。
東堂先輩が喉の奥でくつくつと笑いを堪える。その声で現実に引き戻される。
「どうしたんですか?」
「いや、朝練後の藤丸を思い出して。ヒメに『すごく取りやすいパスで最高でした』って目を輝かせていただろ」
首をすくめる。
「それ、いいことじゃないですもんね。ヒメに接待されてるってことですから」
高崎がパンをかじりながら、うんうんと頷く。
「だって、まだ藤丸がどれくらいできるかわからないので。東堂先輩に出すようなパスなんて、出せませんよ」
東堂先輩には、ただの取りやすいパスなんて出さない。『ここに走り込んでください』と要求するような、ギリギリのパスが出せる。絶対に追いついてくれるという、安心感があるから。
サッカーに関しては真面目とはいえ、まだニ週間だ。藤丸なら取ってくれる、という信頼はない。
頬杖をついて黙っていた三浦先輩が「よし!」と声を上げて、手を叩いた。
全員がそちらに目を向ける。
「一年生、潰すか!」
温厚な三浦先輩らしからぬ言葉に、東堂先輩と高崎と目を合わせる。二人とも俺と同じように、戸惑いの色を浮かべていた。
三浦先輩は俺たちの表情に気付いたのか、両手を振って弁明する。
「潰すって、物理的にじゃないからな。サッカーでってこと。二、三年生VS一年生で試合はどうだ?」
「はい! やりたいです」
机に手をバンとついて、身を乗り出す。
藤丸をこてんぱんに、のしてやる。
「ヒメ、藤丸を集中狙いするなよ。全員平等にだからな」
俺の頭を覗き込んだのかというほど的確なタイミングで、三浦先輩がいさめる。
「なにか目的があるんですか?」
高崎は緊張感のない声で訊ねた。
「俺たち三年生は夏の大会で引退だろ。このチームで少しでも長くプレーするためには、一年生を強くしたい」
三浦先輩の眉尻は力なく下がり、平坦な声だった。
「そうだな。安心して引退するにも、一年生には頑張ってもらわないとな」
東堂先輩は三浦先輩に同意すると、背もたれに体を預けて天井を見上げた。
「えー、今から引退の話なんてしないでくださいよ。泣きますよ」
高崎が極力明るい声で、口を尖らせる。
三浦先輩と東堂先輩は目を和ませた。
地区大会で敗退すれば、あと三ヶ月くらいしかこのチームでプレーすることはできない。
先輩たちの引退を引き延ばすためにも、一年生を強くするのは納得できる。
潰すというより、俺たちのサッカーを実践で教えようということだろう。
「あっ、やっぱりヒメは一年生のチームにしようかな」
三浦先輩が思いついたように、手をパンと鳴らした。
「ん? 何でですか?」
「一年生はまだニ週間なんだ。そんな子たちに試合をするからって言ったら、突き放してるみたいに思われるだろ? まとめるやつがいた方がいい」
顎に手を添えて、眉を吊り上げる。
一年生と戦いたい気持ちもあるが、一年生を率いて格上の二、三年生に一泡吹かせるのも面白そうだ。
「ヒメだけでキツイなら、高崎も一年生チームにするけど」
「えー、何で俺まで?」
高崎が不満そうに眉を寄せる。
「いや、高崎じゃなくて、三浦先輩がいいです」
俺の言葉に、高崎は顎をしゃくって眉を上げる。視線を外して、高崎を視界から消した。
「三浦じゃ意味ないだろ。俺たちが引退したら、チームを引っ張っていくのはヒメと高崎なんだから」
先輩たちには、俺と高崎の統率力も磨こうという思惑があるらしい。
「わかりました。高崎、一緒に先輩たちを倒そうぜ」
「嫌だ」
わかりやすく、拗ねている、とそっぽを向く。
「卵焼きやるから、機嫌を直してくれよ」
「おっけー」
高崎は弁当箱の中から素早く唐揚げを掴んで、口に放った。
最後の楽しみに残していたのに。
口を引き結ぶと、高崎が鼻を膨らませて得意気に笑う。ものすごく腹の立つ顔だった。
残った卵焼きを口に放り込んで、小さく息を吐く。
「じゃあ決まりだな。今日の部活でポジションを決めて、試合は明日な」
「わかりました」
明日の試合が楽しみで仕方がない。
放課後、基礎練習の後に三浦先輩が全員を集めた。
「明日、二、三年生対一年生で、紅白戦をするから」
爽やかに告げられるが、ざわざわと戸惑いに空気が震えた。
「静かに!」
東堂先輩が声を張ると、全員がピタリと口を閉ざす。
別の部活の活気ある声が、遠くの方から聞こえてきた。
三浦先輩は腰に手を当てて、大きく頷く。
「まだ入ったばかりで、周りの実力もわからないし、遠慮もあるだろう。姫宮と高崎を一年生チームに入れるから、安心して欲しい」
一年生から、ホッとしたような空気が漂う。
「一年生は今から話し合って、ポジションや作戦を決めるように。二、三年生は練習を続けるぞ」
全員が「はい」と声を揃える。
「時間は少し短くして、前半と後半三十分ずつで、間にハーフタイム十分な。交代は自由で、一年生は必ず全員出ること!」
三浦先輩が最後にルールを付け足すと、二、三年生は練習に戻っていく。
俺と高崎は一年生を連れて、グラウンドの端で輪になって座り込んだ。
「ここにDF四人、MF四人、FW二人の4-4-2のフォーメーションを書いたノートがある。回していくから、自分の希望するポジションに名前を書いて欲しい。一箇所に固まったらバラけさせるけど、十七人だから絶対に被る。遠慮して、少ないところに名前を書く必要はないからな」
4-4-2でバランスが悪ければ、他のフォーメーションに変える参考にもなる。
隣にいる藤丸にノートとペンを渡した。
藤丸はFWの左側に名前を書いて、隣に渡した。順番に書いていき、戻ってくる。
高崎がCBに名前を書き、俺はトップ下に姫宮と記した。
「4-4-2でよさそうだな」
高崎が俺の持つノートを横から覗き込む。
「今のうちのチームは、オフェンスが俺、ディフェンスを三浦先輩ってピッチ上に司令塔が二人いる状態でやってるんだ。ディフェンスの指示、高崎はいけるか?」
「そのためにこっちのチームにいるんだろ。やるしかないじゃん」
ディフェンスは高崎に任せておけば、問題ないだろう。
「俺はまだ全員の実力がわからない。だから適当に名前を書くけど、スタメンに入らないから、劣っているということはないからな。そこは勘違いしないで欲しい。十分ごとに交代させるから」
隣のページにポジション希望を参考にして、名前を書いていった。
「え? ヒメ先輩がいないじゃないですか」
書いている最中に藤丸が大声を上げるから、耳を押さえて顔を顰める。
他の一年生は円を縮めた。首を伸ばしてノートを覗き込む。
「俺は最初の十分、外から見させて欲しい。どうやって戦うか考えるから」
全員がどれくらい動けるか、確認したい。
「東堂先輩は高崎が止めろよ」
高崎は首をすくめて、口を尖らせた。
「まー、でも、俺一人でやるわけじゃないしな。CB二人で挟んで、ボランチにカバーをしてもらおう」
そう漏らせば、遠慮がちに手を上げる一年生がいた。
「どうした?」
「あの、三人もつけなきゃいけないほどヤバいんですか? 高崎先輩は、すごく上手いのに」
上手いと褒められて気分が良くなったのか、高崎は得意気に口を開く。
「東堂先輩がボールを持ってるなら、三人つく価値はある。だからといって、もう一人のFWをフリーにもできない。SBはマークしとけ」
どよめきが上がる。
「オフェンス側も覚悟しとけよ。三浦先輩からゴールを奪うのは、至難の業だからな」
「オレが最初に決めてみせますよ! ゴールをヒメ先輩に捧げます」
藤丸が意気揚々と胸を張る。
他の一年生が不安で顔を翳らせる中、微塵も緊張せず堂々としている。
その図太さが、サッカーに関しては利点だ。点を取るという意思があるやつにしか、ゴールを決めることができないのだから。
藤丸がうざくて、俺のストレスは溜まる一方。
着替え中に「ネクタイが結べないから結んでください」とねだられたこともある。家を出る時に結んでるやつが、何を言ってんだよ。
そして連絡先を教えて欲しいとしつこい。俺が拒否をすれば、かわりに高崎が自分の連絡先を教えていた。その時の藤丸の虚無顔は少し笑えた。
部活後には「一緒に帰りましょう」と絡んでくるし、毎日土日の予定を詰めようとしてくるし。
思い浮かべると、キリがない。
昼休みに高崎と三年生の教室に向かい、三浦先輩と東堂先輩を誘って空き教室で弁当を食べる。
「藤丸をぶちのめしたいんですけど」
イライラした気持ちで、ご飯を頬張った。
「暴力はダメだぞ」
三浦先輩が嗜める。
「ヒメのことを慕って、可愛い後輩じゃん」
「どこが?!」
高崎を睨みつければ、先輩たちが苦笑する。
藤丸は部活中だけヘラヘラとした軽さを捨て、真面目に打ち込んでいる。
でもそれ以外が最悪だ。距離は近いし、呼吸をするように甘ったるい声で口説いてくる。
フルフルと首を振って、頭の中をクリアにする。
宙を睨んで、朝練のことを思い出した。
ハーフコートでのGKを含めた7対7で、藤丸と同じチームになった。
奥の藤丸は相手DFを振り切り、こちらを振り返る。
あいつの目が『くれ』と言っていた。
俺は右足を振り抜き、柔らかいパスを放つ。ボールは藤丸の走るスピードを一切殺さない、一歩先へと吸い込まれるように飛んでいった。
ワントラップから、流れるようなシュート。
ボールは一年生GKの伸ばした手を嘲笑うかのように、ゴールネットを揺らした。
東堂先輩が喉の奥でくつくつと笑いを堪える。その声で現実に引き戻される。
「どうしたんですか?」
「いや、朝練後の藤丸を思い出して。ヒメに『すごく取りやすいパスで最高でした』って目を輝かせていただろ」
首をすくめる。
「それ、いいことじゃないですもんね。ヒメに接待されてるってことですから」
高崎がパンをかじりながら、うんうんと頷く。
「だって、まだ藤丸がどれくらいできるかわからないので。東堂先輩に出すようなパスなんて、出せませんよ」
東堂先輩には、ただの取りやすいパスなんて出さない。『ここに走り込んでください』と要求するような、ギリギリのパスが出せる。絶対に追いついてくれるという、安心感があるから。
サッカーに関しては真面目とはいえ、まだニ週間だ。藤丸なら取ってくれる、という信頼はない。
頬杖をついて黙っていた三浦先輩が「よし!」と声を上げて、手を叩いた。
全員がそちらに目を向ける。
「一年生、潰すか!」
温厚な三浦先輩らしからぬ言葉に、東堂先輩と高崎と目を合わせる。二人とも俺と同じように、戸惑いの色を浮かべていた。
三浦先輩は俺たちの表情に気付いたのか、両手を振って弁明する。
「潰すって、物理的にじゃないからな。サッカーでってこと。二、三年生VS一年生で試合はどうだ?」
「はい! やりたいです」
机に手をバンとついて、身を乗り出す。
藤丸をこてんぱんに、のしてやる。
「ヒメ、藤丸を集中狙いするなよ。全員平等にだからな」
俺の頭を覗き込んだのかというほど的確なタイミングで、三浦先輩がいさめる。
「なにか目的があるんですか?」
高崎は緊張感のない声で訊ねた。
「俺たち三年生は夏の大会で引退だろ。このチームで少しでも長くプレーするためには、一年生を強くしたい」
三浦先輩の眉尻は力なく下がり、平坦な声だった。
「そうだな。安心して引退するにも、一年生には頑張ってもらわないとな」
東堂先輩は三浦先輩に同意すると、背もたれに体を預けて天井を見上げた。
「えー、今から引退の話なんてしないでくださいよ。泣きますよ」
高崎が極力明るい声で、口を尖らせる。
三浦先輩と東堂先輩は目を和ませた。
地区大会で敗退すれば、あと三ヶ月くらいしかこのチームでプレーすることはできない。
先輩たちの引退を引き延ばすためにも、一年生を強くするのは納得できる。
潰すというより、俺たちのサッカーを実践で教えようということだろう。
「あっ、やっぱりヒメは一年生のチームにしようかな」
三浦先輩が思いついたように、手をパンと鳴らした。
「ん? 何でですか?」
「一年生はまだニ週間なんだ。そんな子たちに試合をするからって言ったら、突き放してるみたいに思われるだろ? まとめるやつがいた方がいい」
顎に手を添えて、眉を吊り上げる。
一年生と戦いたい気持ちもあるが、一年生を率いて格上の二、三年生に一泡吹かせるのも面白そうだ。
「ヒメだけでキツイなら、高崎も一年生チームにするけど」
「えー、何で俺まで?」
高崎が不満そうに眉を寄せる。
「いや、高崎じゃなくて、三浦先輩がいいです」
俺の言葉に、高崎は顎をしゃくって眉を上げる。視線を外して、高崎を視界から消した。
「三浦じゃ意味ないだろ。俺たちが引退したら、チームを引っ張っていくのはヒメと高崎なんだから」
先輩たちには、俺と高崎の統率力も磨こうという思惑があるらしい。
「わかりました。高崎、一緒に先輩たちを倒そうぜ」
「嫌だ」
わかりやすく、拗ねている、とそっぽを向く。
「卵焼きやるから、機嫌を直してくれよ」
「おっけー」
高崎は弁当箱の中から素早く唐揚げを掴んで、口に放った。
最後の楽しみに残していたのに。
口を引き結ぶと、高崎が鼻を膨らませて得意気に笑う。ものすごく腹の立つ顔だった。
残った卵焼きを口に放り込んで、小さく息を吐く。
「じゃあ決まりだな。今日の部活でポジションを決めて、試合は明日な」
「わかりました」
明日の試合が楽しみで仕方がない。
放課後、基礎練習の後に三浦先輩が全員を集めた。
「明日、二、三年生対一年生で、紅白戦をするから」
爽やかに告げられるが、ざわざわと戸惑いに空気が震えた。
「静かに!」
東堂先輩が声を張ると、全員がピタリと口を閉ざす。
別の部活の活気ある声が、遠くの方から聞こえてきた。
三浦先輩は腰に手を当てて、大きく頷く。
「まだ入ったばかりで、周りの実力もわからないし、遠慮もあるだろう。姫宮と高崎を一年生チームに入れるから、安心して欲しい」
一年生から、ホッとしたような空気が漂う。
「一年生は今から話し合って、ポジションや作戦を決めるように。二、三年生は練習を続けるぞ」
全員が「はい」と声を揃える。
「時間は少し短くして、前半と後半三十分ずつで、間にハーフタイム十分な。交代は自由で、一年生は必ず全員出ること!」
三浦先輩が最後にルールを付け足すと、二、三年生は練習に戻っていく。
俺と高崎は一年生を連れて、グラウンドの端で輪になって座り込んだ。
「ここにDF四人、MF四人、FW二人の4-4-2のフォーメーションを書いたノートがある。回していくから、自分の希望するポジションに名前を書いて欲しい。一箇所に固まったらバラけさせるけど、十七人だから絶対に被る。遠慮して、少ないところに名前を書く必要はないからな」
4-4-2でバランスが悪ければ、他のフォーメーションに変える参考にもなる。
隣にいる藤丸にノートとペンを渡した。
藤丸はFWの左側に名前を書いて、隣に渡した。順番に書いていき、戻ってくる。
高崎がCBに名前を書き、俺はトップ下に姫宮と記した。
「4-4-2でよさそうだな」
高崎が俺の持つノートを横から覗き込む。
「今のうちのチームは、オフェンスが俺、ディフェンスを三浦先輩ってピッチ上に司令塔が二人いる状態でやってるんだ。ディフェンスの指示、高崎はいけるか?」
「そのためにこっちのチームにいるんだろ。やるしかないじゃん」
ディフェンスは高崎に任せておけば、問題ないだろう。
「俺はまだ全員の実力がわからない。だから適当に名前を書くけど、スタメンに入らないから、劣っているということはないからな。そこは勘違いしないで欲しい。十分ごとに交代させるから」
隣のページにポジション希望を参考にして、名前を書いていった。
「え? ヒメ先輩がいないじゃないですか」
書いている最中に藤丸が大声を上げるから、耳を押さえて顔を顰める。
他の一年生は円を縮めた。首を伸ばしてノートを覗き込む。
「俺は最初の十分、外から見させて欲しい。どうやって戦うか考えるから」
全員がどれくらい動けるか、確認したい。
「東堂先輩は高崎が止めろよ」
高崎は首をすくめて、口を尖らせた。
「まー、でも、俺一人でやるわけじゃないしな。CB二人で挟んで、ボランチにカバーをしてもらおう」
そう漏らせば、遠慮がちに手を上げる一年生がいた。
「どうした?」
「あの、三人もつけなきゃいけないほどヤバいんですか? 高崎先輩は、すごく上手いのに」
上手いと褒められて気分が良くなったのか、高崎は得意気に口を開く。
「東堂先輩がボールを持ってるなら、三人つく価値はある。だからといって、もう一人のFWをフリーにもできない。SBはマークしとけ」
どよめきが上がる。
「オフェンス側も覚悟しとけよ。三浦先輩からゴールを奪うのは、至難の業だからな」
「オレが最初に決めてみせますよ! ゴールをヒメ先輩に捧げます」
藤丸が意気揚々と胸を張る。
他の一年生が不安で顔を翳らせる中、微塵も緊張せず堂々としている。
その図太さが、サッカーに関しては利点だ。点を取るという意思があるやつにしか、ゴールを決めることができないのだから。



