僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

 タツさんへ

 何から話せば、書けばいいのか、いくら考えてもわかりません。
 どれも正しいように思えて、だけど、その正しさでタツさんをまた苦しめてしまうんじゃないかって怖くなるからです。

 あれから長いようで、人生を八十年と仮定したら、ほんの僅かとしか思えないであろう三年弱が経ちました。

 タツさんは今、どこで、何をして過ごしていますか?

 私はというと、自分で見つけた夢を叶えるために、一つひとつの目標に向かって、なんとか頑張っています。
 けれど、今日、教授と講義のあとに二人きりで話して、成長できたとか大人になれたとばかり思えていた自分を、これでもかと打ち砕かれました。
 話しながら、" もう実習を辞退して、普通に就職しようかな…… " と考えてしまいました。
 考えてしまう、は私以外の一生懸命に就活をしている学生に対して、とんでもなく失礼な言葉ですよね……。

 あれだけ「なりたい」だとか、「やりたい」だとか声高に宣言した手前、もう後に引けないなって思っていて。それに、おばあちゃんに「夕夏ちゃんが決めたならいいのよ」なんて言わせてまで、高い学費も払ってもらっているし。

 私だけの夢じゃなくなってしまったから、もう後戻りできない。

 それだけじゃなくて。

 タツさんと最後に話した、あの日の、屋上でのこと。

" 安全な場所から見下ろしてあーだこーだ好き勝手言って "
" 満足したらまた忘れて繰り返すだけじゃないか "
" 誰も私を助ける気なんてない "

 息が詰まりました。


" 今までは、助けを求められたら全力で助ける、願いを叶えて幸せにする。それだけが私の存在理由だと思い込んでいた "
" どれだけ助けても、叶えても "
" 満たされなかった "
" 今まで満たされなかった気持ちの正体 "

 私は、タツさんがあえてその先を、気持ちの正体を言わずにいてくれたんじゃないかなと、思います。

 最後は、自分で、私が私のために考える必要があったのに。
 恥ずかしいけれど、実は当時、それが理解できていませんでした。
 タツさん、ずるいよ。
 本当に、全部、知っているんだから。

 全部知っているのは、それぐらい、数えきれないほどたくさんの人と関わって、亡くなったあともずっと、めげずに生きていた証なんだと思います。それだけは、事実であってほしい。

" 誰かに大切にされること、守られること、それが愛だと知りました "
" 自分を幸せにすることを、第一に考えてほしい "
" 最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。 "

 タツさんはすでに、私に教えてくれていたのに。私はその正解にたどり着けていなかった。
 あんなに必死になって話してくれていたのに。そのことを、私は忘れていたわけじゃない、はずなのに。

 ≪忙しい≫なんてことを都合よく言い訳にして、私は、考えることから逃げ続けることを選んでしまった。

 だから、最後の願いはまだ叶えられていません。強いて言うならば、叶えている途中、道半ばにいます。

 それと……あの日、言えなかったことを伝えさせてください。
 これは私の勝手な、というか、エゴだから、ひとりごとだと思って、聞いてほしいです。


 あなたに、生きてほしかった。


 夕夏