僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

 人生において、AはBだという決まった答えは存在しない。
 だから今までは、親や学校の先生、自分を囲んでいる友達とかから " 借りてきた " 正解を信じて、それを一度も疑うことはなかった。
 けれど、すべてを失ったあの事故で――いや
 タツさんと出会って、私が今までいろんな人たちから借りてきた正解が、必ずしもすべてが正しいとは思えなくなった。
 人間は一人ひとり、似ているところがいくらあろうと、全く同じということは、ありえないから。
 " 双子みたい "だとか、" ニコイチ "だとか。そんな風に呼ばれていた私と朋美でさえ、一度、粉々に壊れた。

 壊れてしまった。

 壊してしまった。

 すべてをわかり合えるなんてこと、本当はないのに、私は一方的に、朋美とはわかり合えている気になって、自分の考えを押し付けていた。

 朋美と、向き合わなくなっていた。向き合えなくなっていた。朋美が何に苦しんでいたかさえ、私は一ミリも知ろうとしなかった。
 そのうち、自分自身とも、向き合えなくなっていた。

 自分の心の奥深くまで蝕んできた言葉にしようがない気持ちを、まるで、ノイズかのように感じていた。
 ノイズだと思い込んで……消そうとした。消せなかった。
 ノイズだと思っていれば、それを消す理由になるはずだった。
 ノイズは、それまで信じていた正解にとって、一つの正解に固執していた私の人生にとって、ただの「雑音」だった。

 歌うこと自体が楽しかったはずなのに、いつの日からか、金賞を獲って、全国大会に出ることだけが生きがいになってしまっていた。
 平和に過ごしたかったのに、自分が周りをあまりにも見ていなさすぎて、一人で突っ走って、居場所を失った。

 だから、ノイズなんて、消してしまえば、感じなくなる。
 感じなくなれば、傷つかなくて済む。
 傷つかずにいれば、また、普通に笑えるようになると思った。

 全部、そうじゃなかった。

 ノイズ――心の奥に眠る、本音――は、他の誰でもない私自身を守ろうとしていた。ただ、それだけだった。
 今この時も、私は想像することが難しい将来を一目(ひとめ)見ようとするたびに、震えて怯えている。
 私の心は必死に私を守ろうと、鼓動を打ち鳴らし続け、生きている。
 それが、どうしようもないくらい愛おしくて。遠くに行ってしまったように感じていたものを、やっと取り戻せたように感じる。

 もう、失くさないように。見失わないように。
 二度と、消してしまわないように。

 私は、未熟で守りたくなる――過去の自分のすべて――を、真っ白な箱にしまい、蓋をした。
 そして、一番好きな色のリボンを使い、両手でそっと優しく結んだ。