「はぁ……」
「ため息なんか付いてどうしたんですか?」
私が広間で大きくため息をつくと、その場にいた深月に心配をされる。
深月は物腰柔らかな牛の神使だ。
相談するのも一つの手だなと考えつく。
「私、桜ノ命にならない方がいいのかな」
「何故ですか?」
「白緋も深月も桜ノ命に対して何かを抱えている。それを汚して良いのかなって」
まずい、喋りすぎただろうか。
恐る恐る深月を見上げるとすごい形相をしていた。
「あの馬鹿者が
「へっ」
「折角桜ノ命になってくれるという方が現れたのに……」
「深月落ち着いて」
温厚に見える分、怒らせたら一番怖いのは深月なんだろうなと宥めながら思う。
「す、すみません。取り乱しました」
「いえ……」
こほんと咳払いして彼が話し始める。
「前任の桜ノ命に対してあの二人は思い入れが強いんです」
「そうなの?」
「ええ、恐らく死に目に立ち会ってしまったというのもあるのですが……」
言葉を選びながら続ける。
「なので新しくその場所に誰かが入るというのが、頭では分かっていても拒否してしまうのでしょう」
「他の三人は?何も思わないの?」
「虎徹と澄が神使になったのは最近なんです。だから前任との関わりはない」
「貴方は?」
深月はまるで他人事のように話す。
彼の本心が知りたかった。
「私は……」
まるで懐かしむように言葉を紡ぐ。
「前任は私の妹だったんですよ」
「えっそうなの?」
「ええ、彼女は戦いに辟易していました。だから解放されてよかった。そう思っています」
妹を失った悲しみはどれ程のものだったのだろう。
とても想像なんか出来ない。
「だから今度は二の舞にならないように美桜さんをしっかりお守りするつもりです。悩みも一人で抱え込まないで」
「うん……ありがとう」
深月がふわりと優しい笑顔を見せる。
自分が何者なのかも分からないこの隠世で心穏やかにいれるのも、この優しさがあるからかもしれない。
「それになにか、美桜さんのこと放っておけないのですよね」
「何故?」
「なんとなく……ですかね」
言葉の真意を聞こうとするが、それは阻まれる。
「あっ、ちょっと待って下さいね」
部屋の外で物音がしたかと思いきや、深月が慌てて外に出る。
帰ってきた深月は彼の首根っこを掴み、部屋にポイと入れる。
「白緋!」
「貴方は言葉が足りなさすぎる。ちゃんと話しなさい」
まるで怒られた子供のように嗜められると、そのまま深月はどこかへ言ってしまった。
「……」
「……」
お互い正座の体勢で向き合う。
先に口を開いたのは白緋の方だった。
「すまない」
「え……」
「言葉が適切ではなかった」
私の目をまっすぐ見つめる。
「傷付く姿を見たくない」
少し切なげに呟く彼に私の鼓動が脈打つ。
「なぜ?」
「桜ノ命は己も戦いの中に身を投じる。危険だ」
「でも、貴方達も一緒でしょう?」
気付けば私は彼の手にそっと触れていた。
“私は大丈夫”そう伝えたかった。
「私は死なない」
「……」
「貴方達が死なせない」
ふと顔を見ると白緋はとても穏やかな表情をしていた。
「強いんだな」
自分が言った事の恥ずかしさに我に返ってしまった。
手を離し立ちあがろうとする。
そこで気が付いた、正座していた足の感覚がなくなっていた事に。
「きゃっ……」
「おい!!」
白緋が慌てて私を受け止める。
勢い余って床へと倒れ込んだ私に白緋が覆い被さる形になってしまった。
「はく……び……」
密着する身体。
至近距離で見つめられ上手く呼吸が出来ない。
「……んっ」
人差し指で私の頬を撫でる。
その心地の良いくすぐったさに目を細める。
「……悪い」
一気に視界が明るくなった。
私も同じく上体を起こす。
「何かあれば言え」
「え、ええ……」
そう言ってあっという間に部屋を出て行ってしまった。
私はというと、突然の出来事に火照った身体を冷ます事に必死だった。
「ため息なんか付いてどうしたんですか?」
私が広間で大きくため息をつくと、その場にいた深月に心配をされる。
深月は物腰柔らかな牛の神使だ。
相談するのも一つの手だなと考えつく。
「私、桜ノ命にならない方がいいのかな」
「何故ですか?」
「白緋も深月も桜ノ命に対して何かを抱えている。それを汚して良いのかなって」
まずい、喋りすぎただろうか。
恐る恐る深月を見上げるとすごい形相をしていた。
「あの馬鹿者が
「へっ」
「折角桜ノ命になってくれるという方が現れたのに……」
「深月落ち着いて」
温厚に見える分、怒らせたら一番怖いのは深月なんだろうなと宥めながら思う。
「す、すみません。取り乱しました」
「いえ……」
こほんと咳払いして彼が話し始める。
「前任の桜ノ命に対してあの二人は思い入れが強いんです」
「そうなの?」
「ええ、恐らく死に目に立ち会ってしまったというのもあるのですが……」
言葉を選びながら続ける。
「なので新しくその場所に誰かが入るというのが、頭では分かっていても拒否してしまうのでしょう」
「他の三人は?何も思わないの?」
「虎徹と澄が神使になったのは最近なんです。だから前任との関わりはない」
「貴方は?」
深月はまるで他人事のように話す。
彼の本心が知りたかった。
「私は……」
まるで懐かしむように言葉を紡ぐ。
「前任は私の妹だったんですよ」
「えっそうなの?」
「ええ、彼女は戦いに辟易していました。だから解放されてよかった。そう思っています」
妹を失った悲しみはどれ程のものだったのだろう。
とても想像なんか出来ない。
「だから今度は二の舞にならないように美桜さんをしっかりお守りするつもりです。悩みも一人で抱え込まないで」
「うん……ありがとう」
深月がふわりと優しい笑顔を見せる。
自分が何者なのかも分からないこの隠世で心穏やかにいれるのも、この優しさがあるからかもしれない。
「それになにか、美桜さんのこと放っておけないのですよね」
「何故?」
「なんとなく……ですかね」
言葉の真意を聞こうとするが、それは阻まれる。
「あっ、ちょっと待って下さいね」
部屋の外で物音がしたかと思いきや、深月が慌てて外に出る。
帰ってきた深月は彼の首根っこを掴み、部屋にポイと入れる。
「白緋!」
「貴方は言葉が足りなさすぎる。ちゃんと話しなさい」
まるで怒られた子供のように嗜められると、そのまま深月はどこかへ言ってしまった。
「……」
「……」
お互い正座の体勢で向き合う。
先に口を開いたのは白緋の方だった。
「すまない」
「え……」
「言葉が適切ではなかった」
私の目をまっすぐ見つめる。
「傷付く姿を見たくない」
少し切なげに呟く彼に私の鼓動が脈打つ。
「なぜ?」
「桜ノ命は己も戦いの中に身を投じる。危険だ」
「でも、貴方達も一緒でしょう?」
気付けば私は彼の手にそっと触れていた。
“私は大丈夫”そう伝えたかった。
「私は死なない」
「……」
「貴方達が死なせない」
ふと顔を見ると白緋はとても穏やかな表情をしていた。
「強いんだな」
自分が言った事の恥ずかしさに我に返ってしまった。
手を離し立ちあがろうとする。
そこで気が付いた、正座していた足の感覚がなくなっていた事に。
「きゃっ……」
「おい!!」
白緋が慌てて私を受け止める。
勢い余って床へと倒れ込んだ私に白緋が覆い被さる形になってしまった。
「はく……び……」
密着する身体。
至近距離で見つめられ上手く呼吸が出来ない。
「……んっ」
人差し指で私の頬を撫でる。
その心地の良いくすぐったさに目を細める。
「……悪い」
一気に視界が明るくなった。
私も同じく上体を起こす。
「何かあれば言え」
「え、ええ……」
そう言ってあっという間に部屋を出て行ってしまった。
私はというと、突然の出来事に火照った身体を冷ます事に必死だった。
