桜ノ命は五人の神使に祈りを捧ぐ

「んっ……」
「あっ!起きたぁ!?」

可愛らしい少年が顔を覗き込む。
その背後には見知らぬ天井。
確か私は知らないところで目覚めて二人に会ってそれで……。

「おい(すみ)、いきなり大きな声出すなよ」
「ごめんよお、虎徹(こてつ)兄ちゃん」

二人が親しげに話しているのを眺める。
どうやら私は横になっているようだった。

「身体はだいじょうぶ?」
「え、ええ……」

くりくりとした目で覗きこむ少年は、混じり気のない笑顔でこちらを見てくる。
色素の薄い灰色の髪の毛が綺麗だった。
10歳位……だろうか。
こんな子供がどうしてここに居るのだろう。

「ここはどこ?」

薄暗い部屋。
けれど暗さを感じないのは、天井一面に吊り下げられた色とりどりの提灯(ちょうちん)の所為だろう。
だだっ広い部屋。
その真ん中に敷かれた布団の中で目を覚ましたようだった。

「ここは都の中にある(みや)だ」
「みや?」
桜ノ命(さくらのみこと)と神使の居場所だよ」

答えたのはもう一人の少年。
こちらの彼の方が幾分歳上に見える。

「カラクリと戦って倒れたあんたを兄さん達が運んで来たんだ」
「倒れた……」

意識を手放す前の事を思い出す。
そうだ、私はあの黒いのに襲われて……。

「俺は虎徹(こてつ)、虎の神使」
「ぼくは(すみ)!鼠の神使だよ!」

虎?鼠?
訳が分からない。
虎徹と名乗る彼は、金色の髪に少し吊り上がった……けれども大きな瞳をしている。
ぶっきらぼうな話し方から、少し取っ付きにくそうな印象を覚えた。

「あんた、桜ノ命(さくらのみこと)なの?」
「へっ?」

桜ノ命……?
初めて聞く名にキョトンとしていると、虎徹は呆れたように話しだす。

「お前ほんっと何も知らねえんだな」
「んな……!」

なんて失礼な奴だ。
言い返したい気持ちをぐっと堪え、私はその桜ノ命について聞いてみることにした。

「さくらのみことって何?」
「桜ノ命は神様だよ」
「神様……!?」

ここには妖がいて神使がいて神様までいるのか。

「あんたカラクリに襲われた時“(いの)り”を使ったんだって?」
「いのり……?」

あの時、殺されない様に祈っただけ……。

「祈った……」
「簡単に言うと、祈りはカラクリを消滅させる神の力。それは桜ノ命しか成し得ない力なんだよ」
「でもっ私にそんな力はないわ!」
「力使ったんだろ?説得力ねえよ」

いきなり神様って言われても信じられるわけないじゃない。

「お姉ちゃん、すごい顔してるよ?」
「あ……ごめんね」
「今日はもう休めよ、疲れてんだろ」

ぶっきらぼうに私の身体を心配する彼は、案外優しい人なのかも。
そんなことを考え、私は横になった。