「……ん?」
ここ、どこ?
私はお姉ちゃんと会ってて……。
「…」
視線を感じ隣を見ると、目を丸くした少年が座っていた。
「お姉ちゃんが目をさました〜〜!!」
その声で現実に引き戻される。
「澄……声大きい……」
「だって……っ、十日も目をさまさなかったんだよ!?」
私はそんなに眠っていたのか……。
そんな事を話していたら、けたたましい足音ともにガラリと襖が開いた。
「おまっ、死んだかと思ったじゃねえか!!」
「虎徹!」
泣いている、とんでもなく。
大丈夫だろうか。
「ちょっと、姫さん混乱しちゃうでしょ?」
「巳影」
後ろには白緋と深月もいた。
気がつけば、神使全員が揃っていた。
「美桜、本当に良かった」
「美桜……?」
そう言いかけて思い出す。
それはここでの私の名。
「お、お姉ちゃん……」
澄が悲しげにこちらを見つめる。
「私は……」
「混乱しているのだろう」
白緋が言葉を遮る。
「そうですね……!もう少し休んでいて下さい!」
「そうだ姫さん、怪我は大丈夫?」
「怪我?」
そうだ、私は白緋を庇ってーー。
「……いっ!!!」
思い出すと背中が激しい痛みに襲われる。
「わ、忘れてたのに……」
「あ、ごめんね?」
「おい兄さん!痛み思い出しちまってるじゃねえか!」
「にいちゃんのばーか!!」
澄と虎徹が巳影を責める。
巳影って他の神使には優しいわよね。
そんなことを考えつつ、こんな事でもないと見ない光景に私の頬は緩む。
「ふふっ……いった……」
「痛み止めを多めに出しておきますから、ひとまず皆さん退散いたしましょう」
「ばか!ばか!」
「ごめんってばぁ」
そんなやり取りに和む。
……和んでいる場合ではなかった。
「待って」
「どうしたの?姫さん」
「話がある」
どうしても今、確認したい事があった。
痛みを懸命に堪え言葉を続ける。
「白緋」
貴方に聞きたいことが山ほどある。
「私は貴方に会ったことがある?」
「……」
薄々気がついていた。
あれは夢なんかじゃない。
「何故気が付いた」
「やっぱり……」
他の神使が私達の様子を伺う。
「ここでの記憶が薄れる度に、思い出す記憶があるの。そこには貴方と……八重様がいた」
「……」
「何故、貴方たちは私の元に来ていたの?あの場所はなんなの?」
考えている様に見えた。
私に告げるかどうか。
「……お前があの時の子供だと気が付いたのは、最近の事だ」
「じゃあ」
「確証がなかった」
強めの語気に身体が跳ねる。
「あれは隠世での出来事ではない」
「……」
「あれは、現世での出来事だ」
「げん、せ……?」
「ちょっと待って下さい」
口を挟んだのは、今まで静観していた深月だった。
「現世なんて……おとぎ話じゃないんですから」
「ある日、八重に告げられたんだ」
ーー白緋、私すごいこと知っちゃった!
「八重の後を追って楼閣の鳥居を潜ると見知らぬ土地に出ていた」
「それで、現世に……」
「何か条件みたいなものがあるんですかね、鳥居を潜るだけならいつもしていることですし」
「おそらく桜ノ命とその加護を受けた者だけが行けるのだろう」
「あとは……」と白緋が考えながら言葉を紡ぐ。
「現世に行く日は必ず満月の夜だった」
「満月……」
桜ノ命の力は神の力。
あり得ない話も受け入れてしまいそうになる。
「八重はその子供の事を気にかけていてな」
「なんで?」
「悲しい顔をしているからだそうだ」
八重様……。
時を経て彼女の思いが胸に染みる。
「八重が亡くなって暫く経った頃、私はもう一度現世へと足を運んだ」
再び会っていたかもしれない。
その淡い期待は打ち砕かれた。
「お前はいなかった」
「いなかった?」
なんで……?
ーーー可哀想に。
ーーーもう何日も意識が戻ってないんだって?
ーーーやっとあの男から離れられたってのにねぇ。
「……え?」
「大方事故にでもあったのだろう」
信じがたい事実に頭の中が真っ白になる。
「そんな時だ、美桜がこの隠世に来たのは」
「じゃあ私は……」
「お前には帰る場所がある」
静寂に包まれる。
誰一人、真実を受け入れられないようだった。
「お前の本当の名前は花織だ」
「本当の名前……」
薄々勘付いてはいた。
八重様が呼ぶその名を私は知っている気がした。
「白緋はさ」
「なんだ」
「なんでそんな大事な事黙ってたの?」
恐ろしいほど鋭い目線。
まるで出会った頃のようだ。
「確証がなかった」
「確証?」
「強すぎる力にどこか似ている風貌。桜ノ命の加護があったからと言えばそれまでだが、決定づけるものがなかった」
「それで今回美桜さんが思い出したから伝えたと……」
私はここの者ではない。
その事実が私の中でまだ消化できなかった。
「まあでも美桜が消滅するの防げるってわけだろ?良かったじゃねえか」
「“満月の夜に鳥居を潜る”が条件ですね。次の満月は……」
「十日後」
あまりに急な事に頭の中が真っ白になる。
「全然時間がないじゃない」
「まあ姫さんを現世に返すってだけならわけないね」
「駄目!」
「姫さん……?」
咄嗟にでた言葉に自分自身で驚く。
だって、私はーーー
「まだ皆と居たい」
まるで八重様と会っていた頃のーー子供のような喋り方。
人を引き留める方法を私は知らない。
「駄目だ」
冷たく言い放ったのは白緋だった。
「ここにいてはどの道消滅してしまう」
「でも……」
「またいつか会える」
私を安心させるように掌を頭の上に乗せる。
あの頃そうしてくれたようにーーー。
後ろを見ると、他の神使達も優しく見守ってくれていた。
「ーーーっ」
この人達のために、残りの時間できることをしよう。
「鞍馬のこと、十日でなんとかするわ」
「なんとかするってそんな無茶な……」
巳影が苦笑する。
「でも、姫さんのご要望とあらば仕方ないね」
「まかせてよ!」
無謀なことを言っている自覚はあった。
けれど、残りの時間で私にできる事をやりたかった。
「皆、力を貸してくれる?」
五人の神使は私に跪く。
「御意」
ここ、どこ?
私はお姉ちゃんと会ってて……。
「…」
視線を感じ隣を見ると、目を丸くした少年が座っていた。
「お姉ちゃんが目をさました〜〜!!」
その声で現実に引き戻される。
「澄……声大きい……」
「だって……っ、十日も目をさまさなかったんだよ!?」
私はそんなに眠っていたのか……。
そんな事を話していたら、けたたましい足音ともにガラリと襖が開いた。
「おまっ、死んだかと思ったじゃねえか!!」
「虎徹!」
泣いている、とんでもなく。
大丈夫だろうか。
「ちょっと、姫さん混乱しちゃうでしょ?」
「巳影」
後ろには白緋と深月もいた。
気がつけば、神使全員が揃っていた。
「美桜、本当に良かった」
「美桜……?」
そう言いかけて思い出す。
それはここでの私の名。
「お、お姉ちゃん……」
澄が悲しげにこちらを見つめる。
「私は……」
「混乱しているのだろう」
白緋が言葉を遮る。
「そうですね……!もう少し休んでいて下さい!」
「そうだ姫さん、怪我は大丈夫?」
「怪我?」
そうだ、私は白緋を庇ってーー。
「……いっ!!!」
思い出すと背中が激しい痛みに襲われる。
「わ、忘れてたのに……」
「あ、ごめんね?」
「おい兄さん!痛み思い出しちまってるじゃねえか!」
「にいちゃんのばーか!!」
澄と虎徹が巳影を責める。
巳影って他の神使には優しいわよね。
そんなことを考えつつ、こんな事でもないと見ない光景に私の頬は緩む。
「ふふっ……いった……」
「痛み止めを多めに出しておきますから、ひとまず皆さん退散いたしましょう」
「ばか!ばか!」
「ごめんってばぁ」
そんなやり取りに和む。
……和んでいる場合ではなかった。
「待って」
「どうしたの?姫さん」
「話がある」
どうしても今、確認したい事があった。
痛みを懸命に堪え言葉を続ける。
「白緋」
貴方に聞きたいことが山ほどある。
「私は貴方に会ったことがある?」
「……」
薄々気がついていた。
あれは夢なんかじゃない。
「何故気が付いた」
「やっぱり……」
他の神使が私達の様子を伺う。
「ここでの記憶が薄れる度に、思い出す記憶があるの。そこには貴方と……八重様がいた」
「……」
「何故、貴方たちは私の元に来ていたの?あの場所はなんなの?」
考えている様に見えた。
私に告げるかどうか。
「……お前があの時の子供だと気が付いたのは、最近の事だ」
「じゃあ」
「確証がなかった」
強めの語気に身体が跳ねる。
「あれは隠世での出来事ではない」
「……」
「あれは、現世での出来事だ」
「げん、せ……?」
「ちょっと待って下さい」
口を挟んだのは、今まで静観していた深月だった。
「現世なんて……おとぎ話じゃないんですから」
「ある日、八重に告げられたんだ」
ーー白緋、私すごいこと知っちゃった!
「八重の後を追って楼閣の鳥居を潜ると見知らぬ土地に出ていた」
「それで、現世に……」
「何か条件みたいなものがあるんですかね、鳥居を潜るだけならいつもしていることですし」
「おそらく桜ノ命とその加護を受けた者だけが行けるのだろう」
「あとは……」と白緋が考えながら言葉を紡ぐ。
「現世に行く日は必ず満月の夜だった」
「満月……」
桜ノ命の力は神の力。
あり得ない話も受け入れてしまいそうになる。
「八重はその子供の事を気にかけていてな」
「なんで?」
「悲しい顔をしているからだそうだ」
八重様……。
時を経て彼女の思いが胸に染みる。
「八重が亡くなって暫く経った頃、私はもう一度現世へと足を運んだ」
再び会っていたかもしれない。
その淡い期待は打ち砕かれた。
「お前はいなかった」
「いなかった?」
なんで……?
ーーー可哀想に。
ーーーもう何日も意識が戻ってないんだって?
ーーーやっとあの男から離れられたってのにねぇ。
「……え?」
「大方事故にでもあったのだろう」
信じがたい事実に頭の中が真っ白になる。
「そんな時だ、美桜がこの隠世に来たのは」
「じゃあ私は……」
「お前には帰る場所がある」
静寂に包まれる。
誰一人、真実を受け入れられないようだった。
「お前の本当の名前は花織だ」
「本当の名前……」
薄々勘付いてはいた。
八重様が呼ぶその名を私は知っている気がした。
「白緋はさ」
「なんだ」
「なんでそんな大事な事黙ってたの?」
恐ろしいほど鋭い目線。
まるで出会った頃のようだ。
「確証がなかった」
「確証?」
「強すぎる力にどこか似ている風貌。桜ノ命の加護があったからと言えばそれまでだが、決定づけるものがなかった」
「それで今回美桜さんが思い出したから伝えたと……」
私はここの者ではない。
その事実が私の中でまだ消化できなかった。
「まあでも美桜が消滅するの防げるってわけだろ?良かったじゃねえか」
「“満月の夜に鳥居を潜る”が条件ですね。次の満月は……」
「十日後」
あまりに急な事に頭の中が真っ白になる。
「全然時間がないじゃない」
「まあ姫さんを現世に返すってだけならわけないね」
「駄目!」
「姫さん……?」
咄嗟にでた言葉に自分自身で驚く。
だって、私はーーー
「まだ皆と居たい」
まるで八重様と会っていた頃のーー子供のような喋り方。
人を引き留める方法を私は知らない。
「駄目だ」
冷たく言い放ったのは白緋だった。
「ここにいてはどの道消滅してしまう」
「でも……」
「またいつか会える」
私を安心させるように掌を頭の上に乗せる。
あの頃そうしてくれたようにーーー。
後ろを見ると、他の神使達も優しく見守ってくれていた。
「ーーーっ」
この人達のために、残りの時間できることをしよう。
「鞍馬のこと、十日でなんとかするわ」
「なんとかするってそんな無茶な……」
巳影が苦笑する。
「でも、姫さんのご要望とあらば仕方ないね」
「まかせてよ!」
無謀なことを言っている自覚はあった。
けれど、残りの時間で私にできる事をやりたかった。
「皆、力を貸してくれる?」
五人の神使は私に跪く。
「御意」
