桜ノ命は五人の神使に祈りを捧ぐ

夢を見た。
高い建物の中に囲まれた大きな神社で、誰かと話す夢。

『美桜ちゃんは好きな子いるの』
『いるわけないじゃん』

おばあちゃんに引き取られて数日、お姉ちゃんにこんな事を聞かれた。
可愛くない答え方をしてしまったと反省する。
でもそんな子ができる程、私の世界は明るくなかったのだ。

『おねえちゃんはいるの?』
『私!?』

目の前の人は驚きの声を発する。

『私はねぇ……いるよ』
『えっ、だれだれ?』

思いもよらぬ返答に私は食いつく。
彼女が自分のことを話してくれるのが嬉しかったのかもしれない。

『う〜ん……なんか暗い人!』
『なにそれ?』

彼女が言っている事がおかしくて笑ってしまう。

『八重』
『白緋!』

彼女が慌てて声の主の方に身体を向ける。

『その子は…?』

私へと移された視線は、冷ややかだった。

『ダメでしょ、ただでさえ怖い顔してるんだから。もっと笑いなさい?』
『うるさい』
『ふふっ』

なんの会話をしているのか分からなかった。
分かったのは二人が親しげだということだけ。

『ほら、ご挨拶は?』

彼女がその人に挨拶を促す。

『白緋だ』
『私は……』

同じ目線で見たその表情は思ってたより優しくて、少し後ろで微笑むお姉ちゃんに促されて私も名を名乗る。

『私は、花織』

**

鞍馬(くらま)の狙いは美桜さんだと考えます」
「だからってなんで美桜が現れてから攻撃再開するんだよ」

神使協議。
議題は鞍馬についてだった。
鞍馬が現れたことはすぐに虎徹や澄、護衛たちに伝達された。

「祈りの力を持つものを消したいんでしょう」
「カラクリを使って都を襲わせたのもその為だろうねぇ」

口々に相手の思惑を告げる。

「なんにせよ、行動を再開した鞍馬とは近い将来ぶつかり合う事になるでしょうね」
「もうあの時のようにはさせない」

ーーーあの時。
終祈の災い。
皆に深い傷を残した厄災。

「ねえ……終祈の災いって、一体どんな厄災だったの……?」

沈黙。
誰も口を開こうとはしなかった。
聞いてはいけないことだったのだろうか。

それでも私は知りたかった。
皆の心に影を落とす、その厄災の正体をーーー。

「あれは五年前、雨が降る日のことでした」