桜ノ命は五人の神使に祈りを捧ぐ

覚醒(かくせい)だと思います」

それは帰ってから深月に言われた言葉。

「覚醒……?」
「極限まで追い込まれた桜ノ命が稀に得る力のことです」

聞き慣れない言葉に戸惑う。
チラと横を見ると白緋と巳影は神妙な面持ちをしている。

「覚醒の力を得るとどうなるの?」
「簡単に言うと無敵になります」
「無敵……?」
「思ったことが現実となるーー文字通り神の力です」

あまりに強大すぎる。
そんな力を手に入れることが出来たというのか。
でも、上手い話には裏があるのがこの世の常だ。

代償(だいしょう)がある」

低い声で割って入ったのは巳影だ。

「代償って……?」
「徐々に“あるもの”を失い、最終的にはーー消滅する」
「前任の桜ノ命も覚醒の力を所持していました。命を落としたのは別の理由ですが……」

想像を絶する話に絶句する。
じゃあ、私はこのままだと……。

「なんで教えてくれなかったの?」
「すみません……覚醒の力にまで至る桜ノ命は稀なんです。前任が覚醒の力を持っていたので(しばら)くの出現はないものだと、しかもこんなに早く……」

深月が申し訳なさそうに告げる。
皆を助けたい気持ちは本物。
けれど消えたくなんてなかった。

「……っ!」
「美桜!!」

私は思わず飛び出してしまう。

「離して……っ」

白緋に手首を掴んで静止させられたのは、飛び出して少し経ってからだった。

「私消えちゃうの……?」
「美桜」
「消えたくない……」
「……」
「ずっと皆と一緒にいたいよ……!!」

そう声を上げると、強い力で引っ張られる。

「……っ」

ふわりと、優しく包まれ気がつけば彼の腕の中にいた。
トクントクンと一定の速さで刻まれる鼓動がすぐ近くで聞こえた。

「ずっと側にいる」
「……」
「消させなんてしない」

そう言うと、一層優しく身体を包み込まれる。
まるで、安心させてくれるみたいに。
優しく身体を離されると、後ろから足音が聞こえた。

「深月、巳影……ごめんね、酷いこと言って」
「私のほうこそ前もって教えていれば……っ」
「深月……」
「いいですか美桜さん。これからは出来るかぎり覚醒は勿論祈りも極力控えるように」
「分かった」

祈りの力を使わない桜ノ命なんて。
そう思ったが、今は深月の提案に甘えることにした。

「そうだ。徐々にあるものを失いって言っていたけど”あるもの“って何……?」

私が恐る恐る聞くと深月は顔を顰めながらやっとの思いで口を開く。

「失うものはーーー」
「え……」