桜ノ命は五人の神使に祈りを捧ぐ

「お前は……」

驚くような苦しそうな表情で彼は私を見る。
貴方は?
それを問う私の声は、別の声に()き消された。

「待って下さいよ!!!」

奥から聞こえたその声は、この緊張感と打って変わってなんとも気の抜けた声だった。

「はぁはぁ……すごい勢いで行ってしまうから……追いつくの大変だったんですよ……」

息も絶え絶えの男性が近づく。
少しウェーブがかった(だいだい)色の髪の毛が光に透けて輝いている。
少し()れた瞳は茶色く、「お兄さん」という言葉がピッタリだった。

「えっ……」

そんな彼が私を見るなり丸い目をさらにまん丸くする。
二人してそんな顔をするなんて失礼じゃない。
私がそんな考えをしていると、優しそうな彼が慌てて口を開く。

「すみませんね、変な反応をしてしまって。驚かせてしまいましたか?」
「いえ……」

私も恐る恐る口を開く。

「それで、貴方は一体……」

ほんの少し警戒を感じる声色。
けれど恐らく拒絶ではない語りかけに、私は正直に話す。

「分からない…」
「分からない?」

私の言葉を彼は繰り返す。

「分からないんです。気がついたらここにいて……ここがどこなのかも、自分が誰なのかも」
「……」

困ったような表情で彼らは互いに目を合わせる。
それもそうだ。
自分だっておかしなことを言っている自覚はある。

「そうですか……分かりました。では私たちと一緒に来て下さい。話はそこで」
「えっでも」
「安心してください。私たちは貴方を歓迎しますよ」

穏やかに話を進めていく。

「……」

黙りこくる白髪の彼。本当に歓迎されているのだろうか。
そんな疑念が顔に出ていたのだろう。
優しげな彼が再び口を開く。

「そんなに警戒しないでください」
「でも……」
「あっ、そうだ。まだ名乗っていませんでしたね。私の名はーー深月(みづき)

深月。
穏やかに告げる。

「そしてこっちが白緋(はくび)

そう深月に告げられる彼。
表情は変わらず冷たいままだ。

「さぁ、行きましょうか」
「行くって何処に……?」

柔らかい笑顔を私に見せる。

「私たちの家ですよ」