「なあ美桜、これ意味あんのかよ」
「うるさいなあ……っ」
カラクリ討伐から数日。
私は虎徹に見守られながら宮の周りを走っていた。
何故こんな事になったかというとーーー
**
カラクリ討伐から数日。
神使全員と協議が行われていた。
あれから数回行われた討伐の詳細を、深月を中心に皆へと共有する作業。
今後の討伐の為だ。
「で、美桜は力が強すぎるあまり一回一回に力を使い過ぎてるって事か」
虎徹が今回の協議の核心をつく。
そう、私は祈りを使う度に物凄い体力を消耗しているのだ。
「前の姫さんの時はここまでじゃなかったよねぇ」
巳影が少し呆れた様子で話に入る。
「ど、どうやったら直せるの?」
至極当然の疑問を投げかけたはずなのだが、皆が一斉に目を逸らす。
「分からないんですよね……」
ため息と共に深月が再び口を開く。
「祈りは桜ノ命しか使えないので私達は分からないんですよ」
「まあ確かな事は、前の姫さんはしっかりと力をコントロール出来てたって事だよな」
「うっ……」
私が未熟と言われているようで心を抉られる。
「虎徹、そんな言い方は無いんじゃないですか?」
「本当のことだろ?」
「でも……」
「いいんです」
私は拳を握り締め立ち上がる。
「私が力をコントロールできる様になれば良いのでしょう…!?」
**
「はあっ……はあっ……」
そんなこんなで、まずは体力を付けようと思い至りこうして宮の外を走っているというわけだ。
こんな事からでもまずは一歩一歩、力をつけなければ。
「大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ……」
私が走る様子を何故か虎徹も見ている。
また何か嫌味を言われるのだろうか。
「ほらこれ」
「……へ」
「やる」
彼が手にしていたのは凍りついた布だった。
「あ、ありがとう」
「これで倒れられても困るしな」
「あはは……」
これも神使の務めなのだろうか。
彼の優しさが沁みる。
「美桜ってさ、真面目だよな」
「そう?」
庭の椅子に腰掛け休憩をする。
「体力ないからって馬鹿正直に走り込みする奴があるかよ」
「うう……」
桜ノ命は神の存在。
過去にそんなことする人はいなかったのかもしれない。
「記憶をなくす前のお前も、きっと真面目だったんだろうな」
「そうなのかな」
何故私は何も思い出せないのだろうか。
思い出せる日は来るのだろうか。
そんな不安が顔に出たのだろうか、彼が混じり気のない笑顔をこちらに向けてくる。
「そうなったらさ、ここでの楽しい記憶でいっぱいにすりゃいいんじゃね?」
「虎徹……」
「だから、暗い顔は無しだ」
覗きこんできた彼の笑顔に安心する。
神使の皆がいてくれて良かった。
「じゃあ俺先に戻ってるから」
「うん。ありがとう」
そう言って足早に宮へと戻っていく。
疲れはとうに取れていたが、今はこの心地良さに身を委ねようと思う。
「ふう……」
近くにある桜の木からひらひらと花びらが舞う。
満開の星空と桜の共演が私を癒やす。
「綺麗……ん?」
足音が聞こえの方向を見ると、宮のすぐ側の角から白緋が出てくるのが見えた。
「………」
目が合う。
静寂。
どうしよう、何か話したほうが良いかな。
その時、私は討伐の日に連れて帰ってきた事を思い出した。
私、あの時のお礼まだしてない。
白緋を呼び止めお礼をしようとした時。
「……!」
白緋がこちらに向かってきてそのまま私の隣に座った。
「もう大丈夫か」
あの日の身体の事を言っているのだろうか。
「大丈夫よ。あの時、宮まで送ってくれてありがとう」
あの時の自分の不甲斐なさを思い出し目を伏せる。
「あの時、祈るのが遅くなってしまってごめんなさい」
私は悔いていた。
私の決断が遅くなってしまったが故に、白緋に要らぬ戦闘をさせてしまった。
きっと、先代の桜ノ命はその器用さですぐに倒していた。
「気にするな」
白緋がこちらに顔を向ける。
「俺は強い」
言葉とは裏腹に優しげな顔を見せる白緋。
彼に似合わない言葉、きっと私を安心させる為に言ったのだろう。
「ふふっ」
「何が可笑しい」
白緋の口の端がムッと下がる。
まるで拗ねた子供の様で可愛いなと感じてしまった。
「何でもないわ」
頑張ろう。
勇気づけてくれる人がいる、私は幸せだ。
「ありがとう、白緋」
「……」
改めて彼に礼を告げると、彼は私をジッと見つめて来た。
彼に見つめられると、まるで囚われた様に身体が動かなくなる。
「……っ」
彼の伸ばした手が頬に触れる。
少し傾いた彼の涼しげな顔が近づく。
私はぎゅっと目を瞑った。
「……桜」
「え……?」
目を開けると白緋が桜の花弁を手に持っていた。
「髪に、付いていた」
私は一気に顔が熱くなるのを感じた。
一体何を期待した?
「もう行くね」
私は慌てて席を立ち彼に別れを告げる。
宮に入ってすぐ、彼が見えなくなった所で力が抜けた様にズルズルと腰を下ろした。
「何なのよ……もう」
自分に対する恥ずかしさと居た堪れなさを、彼にぶつける様に呟く。
まるで遠くを見るような貴方の目。
近くで見てそれを確信した。
貴方の目は、いったい誰を映しているの?
**
「俺は何を…」
「心変わりが早いねぇ白緋」
「巳影」
「まだ八重が死んで五年しか経ってないじゃない」
「……」
「お前が殺してから五年かな」
巳影は笑いながら踵を返す。
最後にこう言い残して。
「幸せになんかなれると思うな」
**
「うるさいなあ……っ」
カラクリ討伐から数日。
私は虎徹に見守られながら宮の周りを走っていた。
何故こんな事になったかというとーーー
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カラクリ討伐から数日。
神使全員と協議が行われていた。
あれから数回行われた討伐の詳細を、深月を中心に皆へと共有する作業。
今後の討伐の為だ。
「で、美桜は力が強すぎるあまり一回一回に力を使い過ぎてるって事か」
虎徹が今回の協議の核心をつく。
そう、私は祈りを使う度に物凄い体力を消耗しているのだ。
「前の姫さんの時はここまでじゃなかったよねぇ」
巳影が少し呆れた様子で話に入る。
「ど、どうやったら直せるの?」
至極当然の疑問を投げかけたはずなのだが、皆が一斉に目を逸らす。
「分からないんですよね……」
ため息と共に深月が再び口を開く。
「祈りは桜ノ命しか使えないので私達は分からないんですよ」
「まあ確かな事は、前の姫さんはしっかりと力をコントロール出来てたって事だよな」
「うっ……」
私が未熟と言われているようで心を抉られる。
「虎徹、そんな言い方は無いんじゃないですか?」
「本当のことだろ?」
「でも……」
「いいんです」
私は拳を握り締め立ち上がる。
「私が力をコントロールできる様になれば良いのでしょう…!?」
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「はあっ……はあっ……」
そんなこんなで、まずは体力を付けようと思い至りこうして宮の外を走っているというわけだ。
こんな事からでもまずは一歩一歩、力をつけなければ。
「大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ……」
私が走る様子を何故か虎徹も見ている。
また何か嫌味を言われるのだろうか。
「ほらこれ」
「……へ」
「やる」
彼が手にしていたのは凍りついた布だった。
「あ、ありがとう」
「これで倒れられても困るしな」
「あはは……」
これも神使の務めなのだろうか。
彼の優しさが沁みる。
「美桜ってさ、真面目だよな」
「そう?」
庭の椅子に腰掛け休憩をする。
「体力ないからって馬鹿正直に走り込みする奴があるかよ」
「うう……」
桜ノ命は神の存在。
過去にそんなことする人はいなかったのかもしれない。
「記憶をなくす前のお前も、きっと真面目だったんだろうな」
「そうなのかな」
何故私は何も思い出せないのだろうか。
思い出せる日は来るのだろうか。
そんな不安が顔に出たのだろうか、彼が混じり気のない笑顔をこちらに向けてくる。
「そうなったらさ、ここでの楽しい記憶でいっぱいにすりゃいいんじゃね?」
「虎徹……」
「だから、暗い顔は無しだ」
覗きこんできた彼の笑顔に安心する。
神使の皆がいてくれて良かった。
「じゃあ俺先に戻ってるから」
「うん。ありがとう」
そう言って足早に宮へと戻っていく。
疲れはとうに取れていたが、今はこの心地良さに身を委ねようと思う。
「ふう……」
近くにある桜の木からひらひらと花びらが舞う。
満開の星空と桜の共演が私を癒やす。
「綺麗……ん?」
足音が聞こえの方向を見ると、宮のすぐ側の角から白緋が出てくるのが見えた。
「………」
目が合う。
静寂。
どうしよう、何か話したほうが良いかな。
その時、私は討伐の日に連れて帰ってきた事を思い出した。
私、あの時のお礼まだしてない。
白緋を呼び止めお礼をしようとした時。
「……!」
白緋がこちらに向かってきてそのまま私の隣に座った。
「もう大丈夫か」
あの日の身体の事を言っているのだろうか。
「大丈夫よ。あの時、宮まで送ってくれてありがとう」
あの時の自分の不甲斐なさを思い出し目を伏せる。
「あの時、祈るのが遅くなってしまってごめんなさい」
私は悔いていた。
私の決断が遅くなってしまったが故に、白緋に要らぬ戦闘をさせてしまった。
きっと、先代の桜ノ命はその器用さですぐに倒していた。
「気にするな」
白緋がこちらに顔を向ける。
「俺は強い」
言葉とは裏腹に優しげな顔を見せる白緋。
彼に似合わない言葉、きっと私を安心させる為に言ったのだろう。
「ふふっ」
「何が可笑しい」
白緋の口の端がムッと下がる。
まるで拗ねた子供の様で可愛いなと感じてしまった。
「何でもないわ」
頑張ろう。
勇気づけてくれる人がいる、私は幸せだ。
「ありがとう、白緋」
「……」
改めて彼に礼を告げると、彼は私をジッと見つめて来た。
彼に見つめられると、まるで囚われた様に身体が動かなくなる。
「……っ」
彼の伸ばした手が頬に触れる。
少し傾いた彼の涼しげな顔が近づく。
私はぎゅっと目を瞑った。
「……桜」
「え……?」
目を開けると白緋が桜の花弁を手に持っていた。
「髪に、付いていた」
私は一気に顔が熱くなるのを感じた。
一体何を期待した?
「もう行くね」
私は慌てて席を立ち彼に別れを告げる。
宮に入ってすぐ、彼が見えなくなった所で力が抜けた様にズルズルと腰を下ろした。
「何なのよ……もう」
自分に対する恥ずかしさと居た堪れなさを、彼にぶつける様に呟く。
まるで遠くを見るような貴方の目。
近くで見てそれを確信した。
貴方の目は、いったい誰を映しているの?
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「俺は何を…」
「心変わりが早いねぇ白緋」
「巳影」
「まだ八重が死んで五年しか経ってないじゃない」
「……」
「お前が殺してから五年かな」
巳影は笑いながら踵を返す。
最後にこう言い残して。
「幸せになんかなれると思うな」
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