「美桜さんが晴れて桜ノ命になったということで行きますよ!」
「……どこに?」
「カラクリ討伐です」
「いつ?」
「今日の夜です」
深月がにっこりと告げる。
もう少し前もって言ってくれても良いのではないだろうか。
「今日は私と白緋と美桜さんで行きますよ」
「五人一緒じゃないの?」
「小規模な討伐は少人数なんですよ」
「そうなんだ」
「その代わり半径五十メートル以内に護衛が配置されているので、戦力不足になることはないかと」
護衛。
協議の時後ろにいた人たちか。
「では丑の刻、玄関口集合でお願いいたします」
**
カラクリーーー。
それは人々の悲しみ、苦しみ、憎しいが具現化したもの。
元々はそれを逆手にとって都を守る番人としての役割を持っていたらしい。
代々カラクリを取りまとめる一族がいたらしく、桜ノ命とは手を取り合う間柄だったらしいが、その関係性が破綻したのは“終祈の災い”があってからだという。
「終祈の災いって何?」
丑の刻。
道中私は気になっていた事を深月に聞く。
「五年前に起きた大規模な争いのことです」
「大規模な……」
「そこで前任の桜ノ命は命を落とし、隠世に住む人々の生活圏内は狭まったのです」
私は目を覚ました時の事を思い出す。
確かに灯りが見えたのは一箇所だけ。
あそこ以外の土地がカラクリに占拠されているというのか……。
「敵が近い。気を抜くな」
深月の話に身震いしていると、白緋が私たちに釘を刺す。
「いいですか?敵が出てきたら”消滅しろ“と心の中で願えば良いのです。段取りは以前教えた通りに」
「やってみるわ」
「無茶はするな」
そう話していた瞬間ーーー
一体のカラクリがもの凄い速さ、そして奇妙な動きで近付いて来るのが見えた。
「東だ!!」
そう言い終えるのが早いか先か、東の空から黒い物体が降ってきたのが見えた。
ガキン!!!!!!
呆然と立ち尽くす事しか出来ない中、白緋がそれに向かって勢い良く向かう。
それがカラクリだと目視出来たのは、刃で動きを止めた時だった。
「美桜さん、出来ますね」
何度も練習した。
眠りに付く前、庭の桜の木に向かって何度も祈った。
うまく出来ます様にと。
なのに何故、目の前で起きている光景に足がすくむ。
手を組むだけなのに腕すら動かすことが出来ない。
役立たず、何の為にここへ来たんだ。
動け。
動け!!!!
「美桜さん」
深月が優しく私の手をとる。
「無理しなくても良いんですよ」
思いもよらぬ言葉に私は驚く。
役立たずの私にこの人は寄り添ってくれるのか。
「ただ、貴方が運命と向き合い私たちと戦ってくれるのであれば」
私へと跪く。
「命に変えてでもお守りします」
彼らは優しい。
こんな姿を晒しては桜ノ命として失格だ。
「ありがとう深月。もう大丈夫」
「やっと表情が戻りましたね」
深月に笑いかけると、私はカラクリの方へと向き直る。
この間にも白緋はずっと戦っていた。
「ーー汝、祈りを捧ぐ」
手を固く結び合わせる。
「闇夜をもたらす者達よ、在るべき場所にーーー散りなさい」
刹那。
強烈な光が周囲を包む。
巨大な光の柱が空まで届き、まるで昼の様に辺りを照らす。
薄目を開けると、目の前のカラクリは砂となり跡形もなくなっているのが分かった。
「やった……?」
「ええ、そのようです」
やった……!
嬉しさのあまり私が彼らに駆け寄ろうとした。
その時だった。
『ーーーおり』
「え……」
遠くから、耳鳴りの様に聞こえてきた誰かの言葉。
気のせい……?
「どうした」
私が浮かない顔をしているのを見て、白緋がこちらに向かうのが見えた。
私も二人に駆け寄ろうとした時だった。
視界がぐにゃりと曲がる。
「はあ……はあ……っ」
息をするのもやっとの位の凄まじい疲労が私を襲う。
「大丈夫ですか」
「だ、だい……じょう、ぶ……」
深月がこちらに来たのを感じる。
疲れて顔を上げる事も出来ない。
「大丈夫な訳が無いだろう」
先程とは別の意味で視界が曲がる。
強い力で持ち上げられた様だった。
「はっ、はなして……!」
白緋に片手で軽々と持ち上げられ、抱き上げられる形になる。
先日の事を思い出してしまい離れようと私はもがく。
「うるさい」
いつもより近くに感じるその低い声は、私の身体にも伝わってくる。
これでは、別の意味で疲れてしまう。
「護衛へ伝達だ。目標殲滅、これより撤収を始める」
護衛の人たちにも伝令を飛ばす。
辺りから一斉に足音と草音が聞こえたのは移動を始めた証拠だろう。
「帰るぞ」
私達に向かってそう伝えると、来た道を引き返し始める。
身体から伝わる温もりで心臓がおかしくなってしまいそうだったのは、宮に着くまで続いたのだった。
**
「待ってたよ、お姫さま」
遠い場所から見つめる人影。
次の瞬間には姿を消していた。
黒い羽だけを残してーーー。
**
「……どこに?」
「カラクリ討伐です」
「いつ?」
「今日の夜です」
深月がにっこりと告げる。
もう少し前もって言ってくれても良いのではないだろうか。
「今日は私と白緋と美桜さんで行きますよ」
「五人一緒じゃないの?」
「小規模な討伐は少人数なんですよ」
「そうなんだ」
「その代わり半径五十メートル以内に護衛が配置されているので、戦力不足になることはないかと」
護衛。
協議の時後ろにいた人たちか。
「では丑の刻、玄関口集合でお願いいたします」
**
カラクリーーー。
それは人々の悲しみ、苦しみ、憎しいが具現化したもの。
元々はそれを逆手にとって都を守る番人としての役割を持っていたらしい。
代々カラクリを取りまとめる一族がいたらしく、桜ノ命とは手を取り合う間柄だったらしいが、その関係性が破綻したのは“終祈の災い”があってからだという。
「終祈の災いって何?」
丑の刻。
道中私は気になっていた事を深月に聞く。
「五年前に起きた大規模な争いのことです」
「大規模な……」
「そこで前任の桜ノ命は命を落とし、隠世に住む人々の生活圏内は狭まったのです」
私は目を覚ました時の事を思い出す。
確かに灯りが見えたのは一箇所だけ。
あそこ以外の土地がカラクリに占拠されているというのか……。
「敵が近い。気を抜くな」
深月の話に身震いしていると、白緋が私たちに釘を刺す。
「いいですか?敵が出てきたら”消滅しろ“と心の中で願えば良いのです。段取りは以前教えた通りに」
「やってみるわ」
「無茶はするな」
そう話していた瞬間ーーー
一体のカラクリがもの凄い速さ、そして奇妙な動きで近付いて来るのが見えた。
「東だ!!」
そう言い終えるのが早いか先か、東の空から黒い物体が降ってきたのが見えた。
ガキン!!!!!!
呆然と立ち尽くす事しか出来ない中、白緋がそれに向かって勢い良く向かう。
それがカラクリだと目視出来たのは、刃で動きを止めた時だった。
「美桜さん、出来ますね」
何度も練習した。
眠りに付く前、庭の桜の木に向かって何度も祈った。
うまく出来ます様にと。
なのに何故、目の前で起きている光景に足がすくむ。
手を組むだけなのに腕すら動かすことが出来ない。
役立たず、何の為にここへ来たんだ。
動け。
動け!!!!
「美桜さん」
深月が優しく私の手をとる。
「無理しなくても良いんですよ」
思いもよらぬ言葉に私は驚く。
役立たずの私にこの人は寄り添ってくれるのか。
「ただ、貴方が運命と向き合い私たちと戦ってくれるのであれば」
私へと跪く。
「命に変えてでもお守りします」
彼らは優しい。
こんな姿を晒しては桜ノ命として失格だ。
「ありがとう深月。もう大丈夫」
「やっと表情が戻りましたね」
深月に笑いかけると、私はカラクリの方へと向き直る。
この間にも白緋はずっと戦っていた。
「ーー汝、祈りを捧ぐ」
手を固く結び合わせる。
「闇夜をもたらす者達よ、在るべき場所にーーー散りなさい」
刹那。
強烈な光が周囲を包む。
巨大な光の柱が空まで届き、まるで昼の様に辺りを照らす。
薄目を開けると、目の前のカラクリは砂となり跡形もなくなっているのが分かった。
「やった……?」
「ええ、そのようです」
やった……!
嬉しさのあまり私が彼らに駆け寄ろうとした。
その時だった。
『ーーーおり』
「え……」
遠くから、耳鳴りの様に聞こえてきた誰かの言葉。
気のせい……?
「どうした」
私が浮かない顔をしているのを見て、白緋がこちらに向かうのが見えた。
私も二人に駆け寄ろうとした時だった。
視界がぐにゃりと曲がる。
「はあ……はあ……っ」
息をするのもやっとの位の凄まじい疲労が私を襲う。
「大丈夫ですか」
「だ、だい……じょう、ぶ……」
深月がこちらに来たのを感じる。
疲れて顔を上げる事も出来ない。
「大丈夫な訳が無いだろう」
先程とは別の意味で視界が曲がる。
強い力で持ち上げられた様だった。
「はっ、はなして……!」
白緋に片手で軽々と持ち上げられ、抱き上げられる形になる。
先日の事を思い出してしまい離れようと私はもがく。
「うるさい」
いつもより近くに感じるその低い声は、私の身体にも伝わってくる。
これでは、別の意味で疲れてしまう。
「護衛へ伝達だ。目標殲滅、これより撤収を始める」
護衛の人たちにも伝令を飛ばす。
辺りから一斉に足音と草音が聞こえたのは移動を始めた証拠だろう。
「帰るぞ」
私達に向かってそう伝えると、来た道を引き返し始める。
身体から伝わる温もりで心臓がおかしくなってしまいそうだったのは、宮に着くまで続いたのだった。
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「待ってたよ、お姫さま」
遠い場所から見つめる人影。
次の瞬間には姿を消していた。
黒い羽だけを残してーーー。
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