その夢を初めて見たのは、小学二年生の頃だった。
不思議な夢だった。
本当に何度も見る。
忘れた頃にまた見るのだった。
そして目が覚めるたびに内容を思い出していた。
まるで夢の方が現実みたいに、鮮明にはっきりと覚えていた。
夢の中の私は、大人だった。
今の私ではない。
長い黒髪。
白い着物。
風に揺れる袖。
見たこともない景色。
雲の上の世界。
どこまでも続く青空。
足元には銀色の雲海。
まるで天国みたいな場所だった。
そして、いつも同じ人がいた。
白い髪の青年。
綺麗な人だった。
信じられないくらい綺麗で、優しくてなぜか懐かしい。
私はその人を知らない。
知らないはずなのに、夢の中では知っている気がした。
青年は私の周りを歩く。
ゆっくり。
一周。
二周。
三周。
まるで踊るみたいに。
私を見つめながら。
嬉しそうに。
幸せそうに。
そして。
必ず同じことを言う。
「僕と結婚してください」
私はぽかんとする。
夢の中の私も。
現実の私も。
意味が分からない。
すると青年はもう一度言う。
「僕と結婚してください」
嬉しそうに何の迷いもなく、当たり前みたいに。
私は困ってしまう。
だって知らない人だから。
名前も知らない。
どこに住んでいるかも知らない。
なのに、その人は何度も言う。
「僕と結婚してください」
そして、私の周りをぐるぐる回る。
まるで尻尾を振る犬みたいに。
嬉しそうに。
楽しそうに。
何度も。
何度も。
何度も。
だから私は毎回同じことを言った。
「嫌です」
すると青年は固まる。
ものすごく傷付いた顔をする。
今にも泣きそうな顔で。
「どうしてですか……」
その声があまりにも悲しそうで、私は少し罪悪感を覚える。
でも、知らない人だから仕方ない。
「だって知らないもん」
そう答えると青年は本気で落ち込む。
肩を落として、世界の終わりみたいな顔をする。
その姿が少し可哀想で少しだけ面白かった。
そして、そこでいつも夢が終わる。
目が覚める。
朝だった。
私は布団の中で天井を見上げる。
「また見た……」
同じ夢。
同じ人。
同じ言葉。
同じ結末。
何度見ても変わらない。
不思議だった。
友達に話したこともある。
「変な夢だね」
そう言われただけだった。
母にも話した。
「白馬の王子様じゃない?」
鼻で笑われた。
違う。
そうじゃない。
あの人は王子様じゃない。
もっと。
何というか。
必死だった。
毎回。
本当に毎回。
全力で結婚を申し込んでくる。
しかも断られる。
そして落ち込む。
それを繰り返している。
今思えば少し可哀想だった。
けれども、当時の私は知らなかった。
夢の中の青年が。
未来の夫になる人だということを。
そして百年もの間、たった一人を待ち続けている龍王だということを。
その頃の私はまだ知らなかったのである。
不思議な夢だった。
本当に何度も見る。
忘れた頃にまた見るのだった。
そして目が覚めるたびに内容を思い出していた。
まるで夢の方が現実みたいに、鮮明にはっきりと覚えていた。
夢の中の私は、大人だった。
今の私ではない。
長い黒髪。
白い着物。
風に揺れる袖。
見たこともない景色。
雲の上の世界。
どこまでも続く青空。
足元には銀色の雲海。
まるで天国みたいな場所だった。
そして、いつも同じ人がいた。
白い髪の青年。
綺麗な人だった。
信じられないくらい綺麗で、優しくてなぜか懐かしい。
私はその人を知らない。
知らないはずなのに、夢の中では知っている気がした。
青年は私の周りを歩く。
ゆっくり。
一周。
二周。
三周。
まるで踊るみたいに。
私を見つめながら。
嬉しそうに。
幸せそうに。
そして。
必ず同じことを言う。
「僕と結婚してください」
私はぽかんとする。
夢の中の私も。
現実の私も。
意味が分からない。
すると青年はもう一度言う。
「僕と結婚してください」
嬉しそうに何の迷いもなく、当たり前みたいに。
私は困ってしまう。
だって知らない人だから。
名前も知らない。
どこに住んでいるかも知らない。
なのに、その人は何度も言う。
「僕と結婚してください」
そして、私の周りをぐるぐる回る。
まるで尻尾を振る犬みたいに。
嬉しそうに。
楽しそうに。
何度も。
何度も。
何度も。
だから私は毎回同じことを言った。
「嫌です」
すると青年は固まる。
ものすごく傷付いた顔をする。
今にも泣きそうな顔で。
「どうしてですか……」
その声があまりにも悲しそうで、私は少し罪悪感を覚える。
でも、知らない人だから仕方ない。
「だって知らないもん」
そう答えると青年は本気で落ち込む。
肩を落として、世界の終わりみたいな顔をする。
その姿が少し可哀想で少しだけ面白かった。
そして、そこでいつも夢が終わる。
目が覚める。
朝だった。
私は布団の中で天井を見上げる。
「また見た……」
同じ夢。
同じ人。
同じ言葉。
同じ結末。
何度見ても変わらない。
不思議だった。
友達に話したこともある。
「変な夢だね」
そう言われただけだった。
母にも話した。
「白馬の王子様じゃない?」
鼻で笑われた。
違う。
そうじゃない。
あの人は王子様じゃない。
もっと。
何というか。
必死だった。
毎回。
本当に毎回。
全力で結婚を申し込んでくる。
しかも断られる。
そして落ち込む。
それを繰り返している。
今思えば少し可哀想だった。
けれども、当時の私は知らなかった。
夢の中の青年が。
未来の夫になる人だということを。
そして百年もの間、たった一人を待ち続けている龍王だということを。
その頃の私はまだ知らなかったのである。

