龍王宮へ来て一週間が過ぎた。
私も少しずつ龍界の生活に慣れ始めていた。
朝起きて、着物を着て、龍界を見て回る。
侍女たちとも少し話せるようになった。
白龍王とも以前より自然に会話できる。
毎日が穏やかだった。
だからこそ、その日の出来事は衝撃的だった。
「本日の評議会にご同席いただきます」
朝食後。
白龍王にそう告げられた。
「私がですか?」
「はい」
「でも私、何も分からないですよ?」
「見学だけで構いません」
白龍王は優しく微笑む。
「龍界を知る良い機会です」
私は不安だったが頷いた。
やがて二人は評議会の間へ向かう。
巨大な扉が開いた。
中には十数名の龍族がいた。
豪華な装束。
鋭い眼差し。
どの人も強そうだった。
私は思わず白龍王の後ろへ隠れた。
その瞬間だった。
「その娘ですか」
冷たい声が響く。
私は顔を上げた。
壮年の男がいた。
金色の装束。
鋭い目。
明らかに歓迎していない顔。
「九頭竜」
白龍王の声が少し低くなる。
男――九頭竜は私を見下ろした。
「人間とは聞いていましたが」
その視線は鋭かった。
「本当にただの人間ですな」
空気が張り詰める。
私は思わず身を縮めた。
九頭竜は続ける。
「龍力も感じない」
「覇気もない」
「王妃候補とは思えません」
周囲がざわつく。
白龍王が口を開こうとした。
「構いません」
私が先に言った。
自分でも驚いた。
こんな時はいつも黙ってしまうのに。
今日は違った。
九頭竜が眉を上げる。
「ほう?」
「確かに私は人間です」
声が震える。
怖い。
ものすごく怖い。
けれども。
逃げたくなかった。
「龍界のことも分かりません」
「王妃の仕事も分かりません」
「何もできません」
九頭竜は鼻で笑った。
「ならば話は終わりだ」
「ですが」
私は顔を上げる。
九頭竜を見る。
まっすぐ。
「学びたいと思っています」
部屋が静まり返った。
「……何?」
「私はまだ何も知りません」
私は拳を握る。
「だから勉強します」
「努力します」
「皆さんに認めてもらえるようになりたいです」
九頭竜は黙った。
周囲の龍たちも驚いている。
私自身も驚いていた。
こんなことを言うつもりではなかった。
でも、自然に出てきた。
白龍王の顔を見る。
金色の瞳が優しく細められていた。
その視線が少し勇気をくれる。
「認めてもらえなくても」
私は続ける。
「逃げません」
「私はここにいたいからです」
しばらく沈黙が続いた。
やがて。
九頭竜がふんと鼻を鳴らす。
「口だけなら誰でも言える」
厳しい声だった。
「なら証明してみせよ」
「証明?」
「女王になる覚悟があるのならな」
その言葉に。
評議会の空気が変わった。
白龍王が静かに口を開く。
「九頭竜」
「陛下」
九頭竜は視線を向ける。
「私は反対しております」
「だが公平でもあります」
そして、私を見た。
「試験を受けろ」
私は目を瞬いた。
「試験……?」
「龍族の民を知れ。龍族の暮らしを知れ。そして示せ」
九頭竜の目は真剣だった。
「お前が本当に王妃に相応しいかを」
私は息を飲む。
簡単ではない。
むしろ無理かもしれない。
だけど。
なぜだろう。
少しだけ嬉しかった。
最初から否定されたわけではない。
挑戦する機会をくれたのだ。
それなら。
頑張りたいと思った。
私は深く頭を下げる。
「受けます」
評議会の間に静かな緊張が走った。
こうして。
杉本志穂にとって初めての試練が始まった。
私も少しずつ龍界の生活に慣れ始めていた。
朝起きて、着物を着て、龍界を見て回る。
侍女たちとも少し話せるようになった。
白龍王とも以前より自然に会話できる。
毎日が穏やかだった。
だからこそ、その日の出来事は衝撃的だった。
「本日の評議会にご同席いただきます」
朝食後。
白龍王にそう告げられた。
「私がですか?」
「はい」
「でも私、何も分からないですよ?」
「見学だけで構いません」
白龍王は優しく微笑む。
「龍界を知る良い機会です」
私は不安だったが頷いた。
やがて二人は評議会の間へ向かう。
巨大な扉が開いた。
中には十数名の龍族がいた。
豪華な装束。
鋭い眼差し。
どの人も強そうだった。
私は思わず白龍王の後ろへ隠れた。
その瞬間だった。
「その娘ですか」
冷たい声が響く。
私は顔を上げた。
壮年の男がいた。
金色の装束。
鋭い目。
明らかに歓迎していない顔。
「九頭竜」
白龍王の声が少し低くなる。
男――九頭竜は私を見下ろした。
「人間とは聞いていましたが」
その視線は鋭かった。
「本当にただの人間ですな」
空気が張り詰める。
私は思わず身を縮めた。
九頭竜は続ける。
「龍力も感じない」
「覇気もない」
「王妃候補とは思えません」
周囲がざわつく。
白龍王が口を開こうとした。
「構いません」
私が先に言った。
自分でも驚いた。
こんな時はいつも黙ってしまうのに。
今日は違った。
九頭竜が眉を上げる。
「ほう?」
「確かに私は人間です」
声が震える。
怖い。
ものすごく怖い。
けれども。
逃げたくなかった。
「龍界のことも分かりません」
「王妃の仕事も分かりません」
「何もできません」
九頭竜は鼻で笑った。
「ならば話は終わりだ」
「ですが」
私は顔を上げる。
九頭竜を見る。
まっすぐ。
「学びたいと思っています」
部屋が静まり返った。
「……何?」
「私はまだ何も知りません」
私は拳を握る。
「だから勉強します」
「努力します」
「皆さんに認めてもらえるようになりたいです」
九頭竜は黙った。
周囲の龍たちも驚いている。
私自身も驚いていた。
こんなことを言うつもりではなかった。
でも、自然に出てきた。
白龍王の顔を見る。
金色の瞳が優しく細められていた。
その視線が少し勇気をくれる。
「認めてもらえなくても」
私は続ける。
「逃げません」
「私はここにいたいからです」
しばらく沈黙が続いた。
やがて。
九頭竜がふんと鼻を鳴らす。
「口だけなら誰でも言える」
厳しい声だった。
「なら証明してみせよ」
「証明?」
「女王になる覚悟があるのならな」
その言葉に。
評議会の空気が変わった。
白龍王が静かに口を開く。
「九頭竜」
「陛下」
九頭竜は視線を向ける。
「私は反対しております」
「だが公平でもあります」
そして、私を見た。
「試験を受けろ」
私は目を瞬いた。
「試験……?」
「龍族の民を知れ。龍族の暮らしを知れ。そして示せ」
九頭竜の目は真剣だった。
「お前が本当に王妃に相応しいかを」
私は息を飲む。
簡単ではない。
むしろ無理かもしれない。
だけど。
なぜだろう。
少しだけ嬉しかった。
最初から否定されたわけではない。
挑戦する機会をくれたのだ。
それなら。
頑張りたいと思った。
私は深く頭を下げる。
「受けます」
評議会の間に静かな緊張が走った。
こうして。
杉本志穂にとって初めての試練が始まった。

