龍王宮の地下深く。
私は白龍たちと共に長い階段を下りていた。
空気が重い。
まるで嵐の前のようだった。
先頭を歩く金龍が振り返る。
「離れないでください」
その声はいつもより緊張していた。
私は頷く。
地下へ進むほど胸がざわつく。
何かがおかしい。
初めて来る場所のはずなのに、なぜか知っている気がする。
「ここ……」
思わず呟く。
白龍がこちらを見た。
「何か思い出しましたか?」
私は首を振る。
「違います」
「でも……」
言葉が続かない。
嫌な予感ではない。
懐かしいのだ。
とても。
とても懐かしい。
やがて巨大な扉が見えてきた。
黒曜石でできた門。
龍の彫刻。
無数の封印文字。
けれども、その中心に亀裂が入っていた。
紫色の光が漏れている。
闇龗神の顔が険しくなる。
「まずいな」
金龍も頷く。
「封印が崩れ始めています」
私は思わず尋ねた。
「何が封印されているんですか?」
その瞬間、全員が黙った。
嫌な予感がする。
やがて白龍が静かに答えた。
「あなたの力です」
私は固まった。
「私の……?」
「黒姫の龍力です」
心臓が大きく跳ねる。
理解が追いつかない。
すると突然、轟音が響いた。
扉が震える。
龍脈が暴走したのだ。
紫色の光が溢れ出す。
「下がれ!」
闇龗神が叫ぶ。
護衛たちが前へ出る。
けれども次の瞬間、暴走した龍力が周囲へ広がった。
壁が砕ける。
柱が揺れる。
龍族たちが吹き飛ばされる。
「危ない!」
誰かが叫ぶ。
私は思わず目を閉じた。
その時だった。
身体が勝手に動いた。
右腕が熱い。
龍の痣が光る。
眩しいほどに。
気付けば。
私は前へ歩いていた。
「志穂!」
白龍の声が聞こえる。
でも足は止まらない。
扉の前に立つ。
そして、自然に手を伸ばした。
触れた瞬間だった。
暴走していた龍力が静まる。
音が消える。
光が消える。
嵐のようだった力が。
嘘のように。
静かになった。
沈黙。
誰も動けない。
私自身が一番驚いていた。
「え……?」
何をしたのか分からない。
ただ。
扉が少し温かかった。
それだけだ。
振り返る。
全員が固まっている。
金龍でさえ言葉を失っていた。
闇龗神は目を見開いている。
そして、白龍だけが。
泣きそうな顔をしていた。
「やはり……」
小さく呟く。
その声は震えていた。
「黒姫だ」
私は首を傾げる。
けれども次の瞬間。
頭の奥に激しい痛みが走った。
「っ!」
視界が揺れる。
誰かの声が聞こえる。
懐かしい声。
知らないはずの声。
『黒姫様』
『龍界をお願いします』
『我らの女王』
知らない。
知らないはずなのに。
涙が溢れる。
そして、一瞬だけ見えた。
白銀の桜。
その下で笑う少女。
隣に立つ白龍。
そして、二人の前で涙を流している黒髭の男。
景色はすぐに消えた。
私はその場に崩れ落ちる。
白龍が駆け寄った。
「志穂!」
抱きしめられる。
温かい腕だった。
意識が遠のく。
最後に見えたのは。
白龍の金色の瞳だった。
その瞳は百年分の祈りを込めたように、優しく私を見つめていた。
私は白龍たちと共に長い階段を下りていた。
空気が重い。
まるで嵐の前のようだった。
先頭を歩く金龍が振り返る。
「離れないでください」
その声はいつもより緊張していた。
私は頷く。
地下へ進むほど胸がざわつく。
何かがおかしい。
初めて来る場所のはずなのに、なぜか知っている気がする。
「ここ……」
思わず呟く。
白龍がこちらを見た。
「何か思い出しましたか?」
私は首を振る。
「違います」
「でも……」
言葉が続かない。
嫌な予感ではない。
懐かしいのだ。
とても。
とても懐かしい。
やがて巨大な扉が見えてきた。
黒曜石でできた門。
龍の彫刻。
無数の封印文字。
けれども、その中心に亀裂が入っていた。
紫色の光が漏れている。
闇龗神の顔が険しくなる。
「まずいな」
金龍も頷く。
「封印が崩れ始めています」
私は思わず尋ねた。
「何が封印されているんですか?」
その瞬間、全員が黙った。
嫌な予感がする。
やがて白龍が静かに答えた。
「あなたの力です」
私は固まった。
「私の……?」
「黒姫の龍力です」
心臓が大きく跳ねる。
理解が追いつかない。
すると突然、轟音が響いた。
扉が震える。
龍脈が暴走したのだ。
紫色の光が溢れ出す。
「下がれ!」
闇龗神が叫ぶ。
護衛たちが前へ出る。
けれども次の瞬間、暴走した龍力が周囲へ広がった。
壁が砕ける。
柱が揺れる。
龍族たちが吹き飛ばされる。
「危ない!」
誰かが叫ぶ。
私は思わず目を閉じた。
その時だった。
身体が勝手に動いた。
右腕が熱い。
龍の痣が光る。
眩しいほどに。
気付けば。
私は前へ歩いていた。
「志穂!」
白龍の声が聞こえる。
でも足は止まらない。
扉の前に立つ。
そして、自然に手を伸ばした。
触れた瞬間だった。
暴走していた龍力が静まる。
音が消える。
光が消える。
嵐のようだった力が。
嘘のように。
静かになった。
沈黙。
誰も動けない。
私自身が一番驚いていた。
「え……?」
何をしたのか分からない。
ただ。
扉が少し温かかった。
それだけだ。
振り返る。
全員が固まっている。
金龍でさえ言葉を失っていた。
闇龗神は目を見開いている。
そして、白龍だけが。
泣きそうな顔をしていた。
「やはり……」
小さく呟く。
その声は震えていた。
「黒姫だ」
私は首を傾げる。
けれども次の瞬間。
頭の奥に激しい痛みが走った。
「っ!」
視界が揺れる。
誰かの声が聞こえる。
懐かしい声。
知らないはずの声。
『黒姫様』
『龍界をお願いします』
『我らの女王』
知らない。
知らないはずなのに。
涙が溢れる。
そして、一瞬だけ見えた。
白銀の桜。
その下で笑う少女。
隣に立つ白龍。
そして、二人の前で涙を流している黒髭の男。
景色はすぐに消えた。
私はその場に崩れ落ちる。
白龍が駆け寄った。
「志穂!」
抱きしめられる。
温かい腕だった。
意識が遠のく。
最後に見えたのは。
白龍の金色の瞳だった。
その瞳は百年分の祈りを込めたように、優しく私を見つめていた。

