4月1日。
今日は前々から、凛さんと東雲さんがエスブレ動画の解説やフリートークで告知していた、S-Bulletの公式サイト開設日で、それに合わせて全メンバーのプロフィール公開の日。
そう、いよいよ俺のプロフィールと顔も出る。
3月は入試の合格発表や、入学準備、エスブレのサイト用のスチール撮影、事務所のサイト用のプロフィール用撮影など慌ただしく過ぎていった。
俺の顔を気にしてくれるエスブレファンの人もいて、イケメンでも何でもないのが申し訳なく。
「そろそろ10時になるね」
瑞希さんがブラウザをリロードせんと、藤堂さんに借りてきたらしいノートパソコンのキーボードに指を置いている。
公式サイトのアドレスは告知済み。だけど、午前10時オープンで今画面に映っているのは、白い文字で「S-Bullet」と中央に書いてあるだけの、真っ黒な画面。
みんなでサイト開設の瞬間を見ようと事務所の会議室に集まっていた。
写真は撮ったものの、サイトを作ってくれたのは当然俺たちではなく、事務所のスタッフさん(か、業者?さん)だから、どんなサイトになっているのかわからない。藤堂さんなら知ってるかもしれないけど、今ここにはいない。デスクで仕事中だと思う。
「よし、ぼちぼち押すよ……ぽちっ」
瑞希さんが自分の腕時計とにらめっこして、リロードする。みんなが画面をのぞき込むと。
「おお!」
小さなどよめきが起こり。カジュアル黒スーツ姿のエスブレ7人の横一列の立ち姿、がトップページにでかでかとでてきた。
うわ……これちょっと恥ずかしい、な……。みんな大人だ、写真で見るととてもよくわかる。俺の上が二学年違いの飛鳥さんだけど、飛鳥さんも酒を飲める大人で、ほんの少し挑発的な目でこっちを見ていて、とにかくカッコいい。
スーツにネクタイ姿ではあるものの、ネクタイしてない人、緩めてる人、上着のボタンを留めてる人留めてない人、少しずつ着こなしが違って。
東雲さんと俺はネクタイきっちり締め組だけど、俺は高校の制服みたいで……。東雲さんと一体何が違うのかわからないがとにかく俺はガキっぽい。本当にそうだからそう写ってるんだろうけど……。
「おっ、スマートで良い感じだな」
満足そうに凛さんが笑う。
「不満そうだけど、樹もカッコよく写ってるよ」
隣で見ていた東雲さんが肩で俺の肩をつついてくる。
「……ありがとうございます」
不満じゃなくて、がっかりしてます。
「桐谷は目線外せって言われてんのに、いつまでもカメラ見てるんだもんよ。そりゃダセぇって」
飛鳥さんがニヤニヤしている。ええ、そうでしたよ。ちょっと斜め下見てみて、って言われたのに全然できなかった。つい正面を見てしまって、何度も「こっち見てー」って小さな子供の写真撮影みたいに、撮影スタッフさんに手を叩いて合図されて。
……思い出すと顔から火が出るほど恥ずかしい。時間も少し押してしまったし。これまでは後ろ姿とか横向きとか、フードを深く被ってたとか、目線なんて指示されたことなかったし、好きにしてていいよって言われてたし……。
「飛鳥も意地悪言うなよー。こういうのは慣れしかない。回数こなせば、っぽくなっていくから大丈夫、気にしなくていいよ、樹」
まさにそいうのはど真ん中プロだろう瑞希さんが言ってくれた。
「樹みたいな右も左もわからない鈍臭い奴がだんだんプロ仕様になっていく過程もファンの楽しみの一つだろ」
……海斗さん、それ、フォローしてくれてるんですよね、多分。
「ありがとうございます、頑張ります……」
でもこの中じゃそういうのはあまり許されない気がする。スマートでセクシーで品がある、そんなグループなのに。いや、そもそも俺がそんな中にいることが。
「樹、瑞希も言ったろ、妙な顔をするな。末っ子としてちゃんと上手く写ってるから大丈夫だ」
凛さんががしがしと頭を撫でてくれる。まあ、そういうのも加味されてOKが出たのだろう。
「背伸びして写るよりずっといい」
真剣な目でトップページの写真を見ながら京さんが言ってくれた。
「はい」
身の丈に合わないのも確かにどうかと思う。ダサくてもガキ臭くても鈍臭くても、仕方ない、今の自分なのだ。そういう大人の振る舞いみたいなものは探すまでもなく今目の前にお手本があるのだから勉強すればいい。
「じゃ、次行くよ。プロフィールページね」
開いた途端。
「ぶっ」
吹いたのは飛鳥さん。
ええ、ええ、そうでしょうね。俺も思いました!
ボーカルとパフォーマンスという構成上のことなのか、一番にリーダーの凛さん、その次に俺の写真(バストショット)があって、 KIRIっていう活動名?のあとに本名やら生年月日やら書いてある。俺の次が東雲さんで、その下に京さん、瑞希さん海斗さん飛鳥さん、という順番。
で、飛鳥さんが笑ったのは俺の写真。にこりともしていなくて、車の免許証や生徒手帳の証明写真みたいになってるからだろう。個別に撮ったので、お互いどんな風に写ってるのか知らなかったから。
「いくらなんでも真正面はないだろ! なんか他にポーズなかったのかよ」
……だって、それでいいって言われたし。多分諦められたんだと思うけど。
「可愛くてこれはこれでいいんじゃない? 俺はそう思うよ。樹が変に気取ってるのは痛いだろ、自然体が一番」
東雲さんのフォローは多分大正解だろう。さっきの集合写真もそうだけど、京さんの言葉を借りるなら背伸びしても余計格好悪い。
「よし、練習。部屋とってあるから行くぞ」
凛さんが号令をかける。今日はこれが目的で集まったわけじゃない。ちゃんと仕事もあって、だ。
「あ、凛さん待って。SNS、反応来てる、早いね」
瑞希さんが、ぱぱぱっとSNSを開いて検索をかける。
「あはは……、これ本物ですか、だって。確かに今日、エイプリルフールだもんね。樹も可愛いって、書き込みあるよ」
「どんな可愛い、なんだか」
飛鳥さんがまだ食いつく。もういいよ、何とでも言ってくれ。俺はアイドルみたいな愛らしい顔だとかイケメンだとかじゃないし。
どうせ他のみんなはカッコいいって書かれてるんだろう。俺もそう思うから。
でも、ほっとした。
ようやく、ちゃんとみんなに知ってもらえる。
やっとエスブレの一員になれた気がする。
今日は前々から、凛さんと東雲さんがエスブレ動画の解説やフリートークで告知していた、S-Bulletの公式サイト開設日で、それに合わせて全メンバーのプロフィール公開の日。
そう、いよいよ俺のプロフィールと顔も出る。
3月は入試の合格発表や、入学準備、エスブレのサイト用のスチール撮影、事務所のサイト用のプロフィール用撮影など慌ただしく過ぎていった。
俺の顔を気にしてくれるエスブレファンの人もいて、イケメンでも何でもないのが申し訳なく。
「そろそろ10時になるね」
瑞希さんがブラウザをリロードせんと、藤堂さんに借りてきたらしいノートパソコンのキーボードに指を置いている。
公式サイトのアドレスは告知済み。だけど、午前10時オープンで今画面に映っているのは、白い文字で「S-Bullet」と中央に書いてあるだけの、真っ黒な画面。
みんなでサイト開設の瞬間を見ようと事務所の会議室に集まっていた。
写真は撮ったものの、サイトを作ってくれたのは当然俺たちではなく、事務所のスタッフさん(か、業者?さん)だから、どんなサイトになっているのかわからない。藤堂さんなら知ってるかもしれないけど、今ここにはいない。デスクで仕事中だと思う。
「よし、ぼちぼち押すよ……ぽちっ」
瑞希さんが自分の腕時計とにらめっこして、リロードする。みんなが画面をのぞき込むと。
「おお!」
小さなどよめきが起こり。カジュアル黒スーツ姿のエスブレ7人の横一列の立ち姿、がトップページにでかでかとでてきた。
うわ……これちょっと恥ずかしい、な……。みんな大人だ、写真で見るととてもよくわかる。俺の上が二学年違いの飛鳥さんだけど、飛鳥さんも酒を飲める大人で、ほんの少し挑発的な目でこっちを見ていて、とにかくカッコいい。
スーツにネクタイ姿ではあるものの、ネクタイしてない人、緩めてる人、上着のボタンを留めてる人留めてない人、少しずつ着こなしが違って。
東雲さんと俺はネクタイきっちり締め組だけど、俺は高校の制服みたいで……。東雲さんと一体何が違うのかわからないがとにかく俺はガキっぽい。本当にそうだからそう写ってるんだろうけど……。
「おっ、スマートで良い感じだな」
満足そうに凛さんが笑う。
「不満そうだけど、樹もカッコよく写ってるよ」
隣で見ていた東雲さんが肩で俺の肩をつついてくる。
「……ありがとうございます」
不満じゃなくて、がっかりしてます。
「桐谷は目線外せって言われてんのに、いつまでもカメラ見てるんだもんよ。そりゃダセぇって」
飛鳥さんがニヤニヤしている。ええ、そうでしたよ。ちょっと斜め下見てみて、って言われたのに全然できなかった。つい正面を見てしまって、何度も「こっち見てー」って小さな子供の写真撮影みたいに、撮影スタッフさんに手を叩いて合図されて。
……思い出すと顔から火が出るほど恥ずかしい。時間も少し押してしまったし。これまでは後ろ姿とか横向きとか、フードを深く被ってたとか、目線なんて指示されたことなかったし、好きにしてていいよって言われてたし……。
「飛鳥も意地悪言うなよー。こういうのは慣れしかない。回数こなせば、っぽくなっていくから大丈夫、気にしなくていいよ、樹」
まさにそいうのはど真ん中プロだろう瑞希さんが言ってくれた。
「樹みたいな右も左もわからない鈍臭い奴がだんだんプロ仕様になっていく過程もファンの楽しみの一つだろ」
……海斗さん、それ、フォローしてくれてるんですよね、多分。
「ありがとうございます、頑張ります……」
でもこの中じゃそういうのはあまり許されない気がする。スマートでセクシーで品がある、そんなグループなのに。いや、そもそも俺がそんな中にいることが。
「樹、瑞希も言ったろ、妙な顔をするな。末っ子としてちゃんと上手く写ってるから大丈夫だ」
凛さんががしがしと頭を撫でてくれる。まあ、そういうのも加味されてOKが出たのだろう。
「背伸びして写るよりずっといい」
真剣な目でトップページの写真を見ながら京さんが言ってくれた。
「はい」
身の丈に合わないのも確かにどうかと思う。ダサくてもガキ臭くても鈍臭くても、仕方ない、今の自分なのだ。そういう大人の振る舞いみたいなものは探すまでもなく今目の前にお手本があるのだから勉強すればいい。
「じゃ、次行くよ。プロフィールページね」
開いた途端。
「ぶっ」
吹いたのは飛鳥さん。
ええ、ええ、そうでしょうね。俺も思いました!
ボーカルとパフォーマンスという構成上のことなのか、一番にリーダーの凛さん、その次に俺の写真(バストショット)があって、 KIRIっていう活動名?のあとに本名やら生年月日やら書いてある。俺の次が東雲さんで、その下に京さん、瑞希さん海斗さん飛鳥さん、という順番。
で、飛鳥さんが笑ったのは俺の写真。にこりともしていなくて、車の免許証や生徒手帳の証明写真みたいになってるからだろう。個別に撮ったので、お互いどんな風に写ってるのか知らなかったから。
「いくらなんでも真正面はないだろ! なんか他にポーズなかったのかよ」
……だって、それでいいって言われたし。多分諦められたんだと思うけど。
「可愛くてこれはこれでいいんじゃない? 俺はそう思うよ。樹が変に気取ってるのは痛いだろ、自然体が一番」
東雲さんのフォローは多分大正解だろう。さっきの集合写真もそうだけど、京さんの言葉を借りるなら背伸びしても余計格好悪い。
「よし、練習。部屋とってあるから行くぞ」
凛さんが号令をかける。今日はこれが目的で集まったわけじゃない。ちゃんと仕事もあって、だ。
「あ、凛さん待って。SNS、反応来てる、早いね」
瑞希さんが、ぱぱぱっとSNSを開いて検索をかける。
「あはは……、これ本物ですか、だって。確かに今日、エイプリルフールだもんね。樹も可愛いって、書き込みあるよ」
「どんな可愛い、なんだか」
飛鳥さんがまだ食いつく。もういいよ、何とでも言ってくれ。俺はアイドルみたいな愛らしい顔だとかイケメンだとかじゃないし。
どうせ他のみんなはカッコいいって書かれてるんだろう。俺もそう思うから。
でも、ほっとした。
ようやく、ちゃんとみんなに知ってもらえる。
やっとエスブレの一員になれた気がする。



