バラードはうまく歌えない

 喪失感、なんて小説や漫画で散々見てきた言葉だけど。

 きっと今がその状態なんだと、思った。

 頭が上手く回らなくて、見えているけど焦点が合わなくて。自分の正体があやふやになって、どうしたらいいかわからなくて。

 藤堂さんの前に立つのが怖くて。何を言ったらいいのかわからなくて。顔が見れなくて、上手く笑えなくて。

 胸の奥にあったのは、藤堂さん。
 なくしたものは、藤堂さん。

 俺は、藤堂さんのことが好きだった、らしい。今、わかった。まのんさんの存在が、恋と絶望を知らしめた。

 ……間抜けな話だ。叶わないと知って初めて気付くなんて。

 でも。
 でも、黒くて重い小さな鉛のような塊が腹の中に残ってもいて。それは簡単には消えなくて。叶わないからといって、消えるものじゃ、なくて。気付いてしまったら。

 駄目だとわかってる。いつまでも胸に置いていても何の意味もない。だけど。
 そんな黒い塊、捨てなければならない。捨てたい。でも、捨て方がわからない。

 ……捨てたくない。

 藤堂さんの一言が嬉しかった。褒めてくれて励ましてくれて。ずっと俺の味方でいてくれて。ずっと守ると言ってくれて。

 今まで藤堂さんのために頑張った。頑張れた。これからも、そう……でありたい。

 駄目だとわかってる。でも、もう少しこのままで、いたい。想うだけなら、許される、きっと。

 待っていれば叶うかもしれないなんて思ってないけど、もう少しだけ。

 無理に引きはがすのは俺の何かも千切れてしまいそうで。たとえ干からびていようと、ひびだらけだろうと、初めての恋にもう少し寄り添っていたい。

 誰かに言うことも、どこかに書き留めることもできない、密かな想い。
 藤堂さん、俺、好きでいさせてください。