一瞬で頭が真っ白になった。
「あ、いや……普通に、教室に最初行ったら、いなくて。それで、たまたま音楽室の前通ったら……」
自分で言いながら、声が少し上ずっているのが分かって死にたくなる。
本当は教室なんて1ミリも見に行ってないし、いつも音楽室でピアノを弾いていることを知っているから…なんて言える訳が無かった。
「そっか。わざわざ探してくれたんだね」
園田先輩はパチパチと瞬きをして、俺の顔をじっと見つめてきた。
初めて至近距離で見る顔は、心臓に悪い。からかってやろうなんて思っていたのが嘘みたいに、今は視線が合うだけで息が詰まりそうになる。
やがて、先輩の脳内の電球がピカッと灯ったように、ぱぁっと顔が明るくなった。
「分かった! 今朝、飯田くんの横にいたサッカー部の子だよね」
「……っそうです!」
柄にもなく、一瞬にして浮かれてしまう自分がいる。けれど、今はそんなことどうでもいいくらい、俺の口元は緩んでいた。
そんな園田先輩は、ふふっと少し自慢げに胸を張ってこう言った。
「ましばくんでしょ?」
「……は?」
一瞬、自分の耳を疑った。
「え、違う? 確か、真柴くん……」
……クソっ!! どこから出てきたんだよ真柴って!!
ま、文字の雰囲気は! 確かにちょっと似てるけど!!
「……馬橋です。馬に、橋で、ま・ば・し」
一文字ずつ怒りを込めて訂正すると、園田先輩は「あ、ごめんね。馬橋くんだね」と、これっぽっちも悪びれずに、ふわふわとした笑顔を浮かべた。
キザなセリフはあっさり流されるわ、名前は絶妙な間違い方でドヤ顔されるわ。俺の自尊心は、この短時間でこれでもかってくらいズタズタに引き裂かれていた。
「……部活、遅れるんで行きます」
「うん、頑張ってね」
不貞腐れた声を絞り出し、背を向ける。
ドカドカと乱暴な足取りで音楽室を後にしながら、俺は熱くなった耳を片手で乱暴にガシガシと掻いた。
「……くっそ…」
「あ、いや……普通に、教室に最初行ったら、いなくて。それで、たまたま音楽室の前通ったら……」
自分で言いながら、声が少し上ずっているのが分かって死にたくなる。
本当は教室なんて1ミリも見に行ってないし、いつも音楽室でピアノを弾いていることを知っているから…なんて言える訳が無かった。
「そっか。わざわざ探してくれたんだね」
園田先輩はパチパチと瞬きをして、俺の顔をじっと見つめてきた。
初めて至近距離で見る顔は、心臓に悪い。からかってやろうなんて思っていたのが嘘みたいに、今は視線が合うだけで息が詰まりそうになる。
やがて、先輩の脳内の電球がピカッと灯ったように、ぱぁっと顔が明るくなった。
「分かった! 今朝、飯田くんの横にいたサッカー部の子だよね」
「……っそうです!」
柄にもなく、一瞬にして浮かれてしまう自分がいる。けれど、今はそんなことどうでもいいくらい、俺の口元は緩んでいた。
そんな園田先輩は、ふふっと少し自慢げに胸を張ってこう言った。
「ましばくんでしょ?」
「……は?」
一瞬、自分の耳を疑った。
「え、違う? 確か、真柴くん……」
……クソっ!! どこから出てきたんだよ真柴って!!
ま、文字の雰囲気は! 確かにちょっと似てるけど!!
「……馬橋です。馬に、橋で、ま・ば・し」
一文字ずつ怒りを込めて訂正すると、園田先輩は「あ、ごめんね。馬橋くんだね」と、これっぽっちも悪びれずに、ふわふわとした笑顔を浮かべた。
キザなセリフはあっさり流されるわ、名前は絶妙な間違い方でドヤ顔されるわ。俺の自尊心は、この短時間でこれでもかってくらいズタズタに引き裂かれていた。
「……部活、遅れるんで行きます」
「うん、頑張ってね」
不貞腐れた声を絞り出し、背を向ける。
ドカドカと乱暴な足取りで音楽室を後にしながら、俺は熱くなった耳を片手で乱暴にガシガシと掻いた。
「……くっそ…」


