萌月焼子は燃やし尽くす

「メッセージカード?」

きょとんとする萌月焼子に、晴斗は頷く。
依頼したのは、係長が新田に渡した、愛を綴ったメッセージカードの焼却処分だ。

「何それ。そんなの、あんたが捨てればいい話じゃない」
「僕がこっそり捨てたら、新田さんは『なくした』と思って必死に探しちゃうでしょう。
それじゃダメなんです。
新田さんの目の前で、完膚なきまでに、燃やし尽くしてやらないとダメなんです。
……燃やせますか?」

それを挑発と受け取って、焼子はフンと鼻を鳴らす。

「簡単、簡単。
で、どこにあるの?」

「普段は、新田さんのデスクの引き出しの中に。
……新田さんは、昼休みに1人になると、こっそりカードを出して眺めてるんです。
そのタイミングで」

「え、キモっ。
なんであんたが、それを知ってんの?
陰から見てたわけ?」

「違います、聞こえただけで」

「は?」

晴斗はため息をつく。
心の声は、思いが強ければ強いほど、大声となって晴斗に届く。
あれはなかなかの声量だった。

「……もうすぐ昼休みです。
ほとんどの職員は、外へ食べに行きます。
残った職員は、僕が理由をつけて引き離しますので、その間にお願いします」

はぐらかした晴斗を、焼子は疑り深くにらみつける。

『何よ、ごまかそうなんて。
言いたいことがあるなら、言えばいいのに。
ムカつくわー。
ま、別に興味ないからいいけど』

無言の焼子から、内心が漏れ聞こえる。
晴斗は目をそらす。
……やはり、話すとボロが出る。
……黙っていないと。
心の声が聞こえると知られたら、
気味悪がられて距離を置かれるか、
周囲に聞かれないのをいいことに、内心で罵詈雑言や脅しをかけてくるか、
どちらかだ。

晴斗は、焼子に会釈して、無言で立ち去る。
後は野となれ山となれだ。