_____________
“ 第1位 如月 律 ”
「きゃぁぁぁ! 如月くん、また学年一位だって!」
「さすが如月くん! 完璧すぎる!」
廊下に貼り出された学期末考査の結果発表。その最上段に君臨する名前を見て、俺は悔しさのあまり顎を小刻みに震わせた。一方の俺はといえば、人混みの遥か下方に埋もれた“ 102位 皐月 宏斗 ”。
「おかしいだろ!!」
これに至っては、全くおかしくない。宏斗がバカなだけである。
教室に戻るなり、ぐしゃぐしゃに丸めた答案用紙を床に投げつける。さすが少女漫画の世界。いくらなんでも、ヒーローキャラをえこひいきしすぎだろ……。だが、俺にはまだ、逆転の希望が残されていた。
「おい、如月」
放課後、下校しようとする律の前に立ち塞がる。ジャージのポケットに手を突っ込み、研究し尽くした「お得意の斜め45度」に首を傾げてみせた。
如月は、心底無関心そうな瞳を俺に向けると、面倒くさそうに片眉を引きつらせた。
「次の体育、バスケだろ。……俺と勝負しろよ」
そう、これだ。運動神経にだけは、現実世界にいた頃からそれなりに自信がある。
「いいけど」
如月は、鬱陶しそうに前髪をかき上げながら、真っ直ぐに俺を見据えた。その瞬間、あいつの背後に飛び交う、少女漫画特有の鬱陶しいキラキラオーラを、俺はイライラしながら手で振り払う。っていうか、そのポーズでそのセリフ、お前じゃなきゃ許されないからな
「その鼻、へし折ってやるから」
決まった……! 俺は心の中で完璧なガッツポーズを決め、ニヤリと笑ってその場を後にした。
_____________
“ ピピーーーーッッ !”
体育館に無情なホイッスルが鳴り響き、試合終了が告げられた。
「きゃあああああ! 如月くーーーーン!!」
「最高にかっこいいよーーー!!」
地鳴りのような黄色い声援が、体育館の天井を揺らす。女子生徒たちが自分の体育の授業を抜け出してまで男子の試合を見に来るなんて、元の世界じゃ絶対にあり得ない。
そして、電光掲示板に刻まれた非情な数字。
【 32 対 7 】
「……俺の鼻、へし折るんじゃなかったの?」
如月が、汗ひとつかいていない涼しい顔で、ボールを指先で回しながらこちらを見下ろしている。完璧な、ボロ負けだった。
それからというもの、俺は何度も如月律に勝負を持ちかけた。けれど、勝てないどころか、勝てる希望の光さえ1ミリも見えなかった。
この世界に、神様に愛されたヒーロー“如月律”は、正真正銘の本物。
夕日に赤く染まる屋上。フェンスに背中を預け、冷たい風に吹かれながら、俺はただ一人、ぽつりと乾いた笑いを漏らした。
「ばっかみてぇ……」
オレンジ色の世界の中で、自分の頼りない影だけが、地面に長く、惨めに伸びていた。
“ 第1位 如月 律 ”
「きゃぁぁぁ! 如月くん、また学年一位だって!」
「さすが如月くん! 完璧すぎる!」
廊下に貼り出された学期末考査の結果発表。その最上段に君臨する名前を見て、俺は悔しさのあまり顎を小刻みに震わせた。一方の俺はといえば、人混みの遥か下方に埋もれた“ 102位 皐月 宏斗 ”。
「おかしいだろ!!」
これに至っては、全くおかしくない。宏斗がバカなだけである。
教室に戻るなり、ぐしゃぐしゃに丸めた答案用紙を床に投げつける。さすが少女漫画の世界。いくらなんでも、ヒーローキャラをえこひいきしすぎだろ……。だが、俺にはまだ、逆転の希望が残されていた。
「おい、如月」
放課後、下校しようとする律の前に立ち塞がる。ジャージのポケットに手を突っ込み、研究し尽くした「お得意の斜め45度」に首を傾げてみせた。
如月は、心底無関心そうな瞳を俺に向けると、面倒くさそうに片眉を引きつらせた。
「次の体育、バスケだろ。……俺と勝負しろよ」
そう、これだ。運動神経にだけは、現実世界にいた頃からそれなりに自信がある。
「いいけど」
如月は、鬱陶しそうに前髪をかき上げながら、真っ直ぐに俺を見据えた。その瞬間、あいつの背後に飛び交う、少女漫画特有の鬱陶しいキラキラオーラを、俺はイライラしながら手で振り払う。っていうか、そのポーズでそのセリフ、お前じゃなきゃ許されないからな
「その鼻、へし折ってやるから」
決まった……! 俺は心の中で完璧なガッツポーズを決め、ニヤリと笑ってその場を後にした。
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“ ピピーーーーッッ !”
体育館に無情なホイッスルが鳴り響き、試合終了が告げられた。
「きゃあああああ! 如月くーーーーン!!」
「最高にかっこいいよーーー!!」
地鳴りのような黄色い声援が、体育館の天井を揺らす。女子生徒たちが自分の体育の授業を抜け出してまで男子の試合を見に来るなんて、元の世界じゃ絶対にあり得ない。
そして、電光掲示板に刻まれた非情な数字。
【 32 対 7 】
「……俺の鼻、へし折るんじゃなかったの?」
如月が、汗ひとつかいていない涼しい顔で、ボールを指先で回しながらこちらを見下ろしている。完璧な、ボロ負けだった。
それからというもの、俺は何度も如月律に勝負を持ちかけた。けれど、勝てないどころか、勝てる希望の光さえ1ミリも見えなかった。
この世界に、神様に愛されたヒーロー“如月律”は、正真正銘の本物。
夕日に赤く染まる屋上。フェンスに背中を預け、冷たい風に吹かれながら、俺はただ一人、ぽつりと乾いた笑いを漏らした。
「ばっかみてぇ……」
オレンジ色の世界の中で、自分の頼りない影だけが、地面に長く、惨めに伸びていた。


