悪友創造

「ティフィって増(ふ)やせられるの?」


「増(ふ)やす?」


ギャビーの突(とっ)飛(ぴ)な疑(ぎ)問(もん)にアルマが訊(たず)ね返(かえ)す。


『ぼくの量(りょう)産(さん)化(か)?』


ティフィが要(よう)約(やく)すると、ギャビーが頷(うなず)いた。


「倫(りん)理(り)は別(べつ)にしても、
 理(り)論(ろん)的(てき)には不(ふ)可(か)能(のう)ではありませんよね。」


ティフィの要(よう)望(ぼう)で、
クロエは筐(きょう)体(たい)の改(かい)良(りょう)に勤(いそ)しんでいた。


犬(いぬ)の前(まえ)足(あし)を手(て)の代(か)わりにした現(げん)状(じょう)では、
人(にん)間(げん)の道(どう)具(ぐ)を扱(あつか)えない。


いまのティフィはスプーンすらも握(にぎ)れない。


ティフィを犬(いぬ)のイメージのまま
修(しゅう)正(せい)を依(い)頼(らい)したアルマも、
その問(もん)題(だい)点(てん)は把(は)握(あく)している。


「いまのティフィを
 増(ふ)やすことは出(で)来(き)ないよ。」


『アルマでも?』


「ティフィを創(そう)造(ぞう)したのはあたしでも、
 いまのティフィを構(こう)築(ちく)しているのは
 ティフィ自(じ)身(しん)だからだよ。」


「どういうこと?」と首(くび)を傾(かし)げるギャビー。


「この説(せつ)明(めい)が正(ただ)しいか、
 理(り)解(かい)に繋(つな)がるかは知(し)らないけど…。

 ギャビー、カメラ出(だ)して。」


「スマホでいい?」


ギャビーはアルマに言(い)われ、
スマホを手(て)にして裏(うら)面(めん)を見(み)せた。


「それでティフィを撮(と)ってみて。」


「撮(と)るよー。」


ギャビーが合(あい)図(ず)すると、
クロエが慌(あわ)ててティフィの背(はい)後(ご)に回(まわ)り、
写(しゃ)真(しん)に収(おさ)まろうとした。


クロエの姿(すがた)は見(み)事(ごと)にブレている。


『なにしてるの、クロエ。』


「ギャビーに私(わたし)の写(しゃ)真(しん)を、
 持(も)っていて貰(もら)いたくて…。」


「それなら一(いっ)緒(しょ)に撮(と)ろっか。」


「はい。」


誘(さそ)われて興(こう)奮(ふん)しているクロエと、
冷(ひ)ややかにその様(よう)子(す)を見(み)ている
アルマとティフィ。


「なにをしてるんだ。」


「で、なんの話(はなし)だっけ?
 さっきの写(しゃ)真(しん)? 見(み)る?」


『ぼくだ。』


自(じ)分(ぶん)の姿(すがた)が写(うつ)った写(しゃ)真(しん)を認(にん)識(しき)するティフィ。


「ティフィ。
 これと同(おな)じ写(しゃ)真(しん)を撮(と)ってみて。

 できる?」


『わかった。』


と、ギャビーからスマホを手(て)にしたが、
上手(うま)くアプリを切(き)り替(か)えることができない。


「こちらの手(て)を使(つか)ってみますか?」


『新(あたら)しいやつだっ。』


ティフィは手(て)首(くび)を交(こう)換(かん)し、
指(ゆび)を動(うご)かして習(しゅう)熟(じゅく)させる。


新(あたら)しい手(て)は薄(うす)いスマホでも握(にぎ)れ、
肉(にく)球(きゅう)で画(が)面(めん)を操(そう)作(さ)することもできた。


クロエは交(こう)換(かん)した手(て)を持(も)って
ティフィの後(うし)ろに立(た)つ。


ティフィは写(しゃ)真(しん)の記(き)憶(おく)が鮮(あざ)やかなうちに
撮(さつ)影(えい)を試(こころ)みるも、自(じ)分(ぶん)では同(おな)じ写(しゃ)真(しん)が
撮(と)れないことに遅(おく)れて気(き)づいた。


『距(きょ)離(り)が足(た)りない。』


「腕(うで)を飛(と)ばす仕(し)様(よう)を追(つい)加(か)しますか?
 ロケット化(か)もできますよ。」


「飛(と)ばすな。」と、苦(く)言(げん)を呈(てい)するアルマ。


クロエはティフィに改(かい)造(ぞう)を施(ほどこ)す度(たび)に、
限(げん)度(ど)を越(こ)えた提(てい)案(あん)を始(はじ)める。


「同(おな)じものはできないってこと?」


ギャビーはティフィを撮(さつ)影(えい)させた
アルマの意(い)図(と)を理(り)解(かい)して汲(く)み取(と)る。


「わかります。

 アルマの中(なか)にある、
 イマジナリーフレンドのティフィは
 過(か)去(こ)のもので、ティフィは個(こ)は
 既(すで)に確(かく)立(りつ)されています。

 そして現(げん)在(ざい)のティフィは
 異(こと)なった手(て)でスマホを使(つか)い、
 時(じ)間(かん)と共(とも)に変(へん)化(か)を続(つづ)けます。

 エントロピーの複(ふく)製(せい)は、
 不(ふ)可(か)能(のう)ということですね。」


クロエが説(せつ)明(めい)してひとりで頷(うなず)く。


アルマから見(み)たクロエの熱(ねっ)心(しん)な解(かい)説(せつ)は、
ギャビーどころかティフィさえも
理(り)解(かい)しているとは思(おも)えなかった。


「ティフィを複(ふく)製(せい)できないのは、
 あたしが制(せい)限(げん)を掛(か)けたからだよ。」


「なんで?」


「この技(ぎ)術(じゅつ)は使(つか)い方(かた)によっては、
 犯(はん)罪(ざい)に利(り)用(よう)されてしまうからですね。」


クロエの見(けん)解(かい)にアルマも一(いっ)旦(たん)は頷(うなず)いた。


「ティフィが二人(ふたり)に増(ふ)えると
 役(やく)割(わり)を押(お)し付(つ)け合(あ)うし、
 お互(たがい)いの縄(なわ)張(ば)りを巡(めぐ)って
 喧(けん)嘩(か)するからだぞ。」


「なるほどね。」


『ぼくはそんなケダモノじゃないよ!』


「自(じ)分(ぶん)に正(しょう)直(じき)で居(い)ても良(い)いんですよ。」


『クロエまで唆(そそのか)さないでよ!』



▶ つづく